ブラックスミス
メラメラと火が焚かれた炉を見つめエリちゃんが口を開いた。
「もうそろそろじゃ。準備は良いか?」
その声に皆が緊張の面持ちで頷く。
皆の顔を一人一人確認するとエリちゃんは水で満たされたバケツの中から何本かある木製のやっとこの内一本を引き抜いた。
「では引き上げるぞ」
そう言うとエリちゃんはやっとこを火の中に差し入れる。
エリちゃん曰く、1000℃を超える炎の中、すぐに燃えるかと思われたやっとこは、十分に水に浸されていた為か、燃える事なく目的の物を掴み上げた。
それは、鉄屑を山と積み込んで炉の中に突っ込んでいた粘土製の四角い大きな枠だった。
「よし。十分に溶けておる」
エリちゃんは満足そうに笑うとそれを水でしっかり濡らされた丸太で作った台の上に乗せた。
「アン!」
「了解ッス!」
エリちゃんの合図でアンが手に持った長さ80㎝はある木槌でそれを叩き割った。
丸太の台の上、粘土の破片に塗れた鉄板が姿を現す。
俺と奏は木の棒で鉄板の上の粘土片を退かす。
「「OK!」」
俺と奏が同時に声を上げるとエリちゃんは左手で別のやっとこで鉄板を押さえ、右手に少し小さめの木槌を掴んだ。
「アン!」
カンッ
エリちゃんは木槌で鉄板を叩くと同時に合図を出す。
「了解ッス!」
カンッ!
それに合わせてアンがエリちゃんが叩いた場所を的確に叩く。
カンッカンッ!
カンッカンッ!
文字通り相槌を打つ度に分厚い鉄の板が丸太の台に覆いかぶさるように徐々に曲がっていく。
カンッカンッ!
カンッカンッ!
カンッカンッ!
鉄板は時間が経つにつれて熱が失われ、変形しずらくなるはずであったが、熱が失われる速度以上にアンとエリちゃんの息はピッタリと合っていき、それを叩くスピードは加速する。
カンッカンッ!カンッカンッ!
カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!
カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!カンッカンッ!
一体何度叩いたのであろうか?
しかし、それはあっという間の出来事だった。
「まぁ、これで十分じゃろ」
エリちゃんがそう言った時、それは完成していた。
四人の真ん中に鎮座する角付きの鉄で覆われた台。
金床である。
当然正式な物とは違うかもしれないが、現状では十分……と作る前にエリちゃんが言っていた。
これがなくては鍛冶は出来ない。
「ヨシ!次は金づちじゃ!」
「「「了解っ(ス)」」」
結果、集まった金属の大部分を使い、金床一つ、金づち大小一つづつ、山刀二本、ナイフ三本が作られた。
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