焼き肉食べたい
結果から言うと炭焼きは想像以上に上手くいった。
取り出した炭は原形をしっかり留めており、エリちゃんからみても満足する出来だったようで「上出来じゃ」と笑っていた。
しかし、軽くなる事はわかってはいたが、実際に持ってみて重さが1/5程度まで軽くなっていたのにはなかなか衝撃的だった。
なんでも知っているのと自身で実際にやってみるのではかなり違うと改めて実感した。
そして、予想以上にスムーズに終わった炭出し作業は、そのまま炭を川辺の水車小屋付近まで運び、鍛造炉の作成へと移った……
「ふむ、こんなもんじゃろ」
パンツ一丁で泥ん娘なエリちゃんが、満足げにない胸を張り指で鼻を擦った。
鼻の頭や頬に付いた泥が愛らしい。
「地味に疲れた」
上裸で全身泥まみれな俺は、後ろ手をつきながら地面へと座り込んだ。
視線の先では泥ん娘妖精がコリをほぐす様に腕や腰をグルグル回している。
動きこそババ臭いが、あの細くしなやかな体はまさに芸術品。
白磁の如き肌に塗られた泥は、芸術品を汚すどころかそのきめ細かき肌の麗しさをより一層際立たせ──
「センパイ何見てるんスかーーー!?」
背後からイノシシに突進されたが如き衝撃が襲い、それと同時に視界が真っ暗になり、後頭部に極上の柔らかさが押し当てられた。
「アン。いきなり突っ込んでくるのは止めろと何度言えば覚えるんだ」
気づいたら顔から地面に突っ込んでいるじゃないか。
至福の光景の代わりに至福の感触がもたらされたのは嬉しいが、こんなタックル何度もくらっていたらその内重大な怪我をしかねん。
「あんた達何やってるのよ」
声の方を振り返ると窯に残った炭を運んできた奏が呆れ顔で立っていた。
「何やってるもくそも、アンが飛び出したらこうなるのはわかってるだろ。止めろよ」
「私が止める理由もないし、私にアンが止めれるわけもないでしょ」
そりゃそうだ。
この娘は超人的な身体能力を持っている上に衝動的に行動を起こす。
気づいた時にはたいてい手遅れだ。
「あら、もう完成したのね。よくわからないけどいい出来じゃない?」
珍しく奏が褒めた。
コイツにもついにデレ期が来たか。
「流石エリちゃんだわ」
まぁ、そう言うだろうってのはわかってたさ。
実際、設計したのはエリちゃんだし?組むのだって九割エリちゃんだったしね。
でも俺だってそれなりに貢献したんだから少しは褒めてくれてもいいんじゃない?
「センパイ凄いッス!」
「……アンは本当に良い子だなぁ」
頭を撫でてやるとアンは犬の様に喜んだ。
ゴロゴロ
いや、喉鳴らしてるしネコか?
「しっかしあれよね」
奏が俺達が作った鍛造炉をジロジロ見ながら余計な口を開いた。
おのれ奏め。褒めておきながらエリちゃんが作った鍛造炉にケチでもつけようというのか?
上げて落とす気かこの野郎。
「これ見てるとむしょうにお肉が食べたくならない?」
「なに馬鹿な事言ってるんだ?」
全体的に長方形をした鍛造炉は、その大部分が白っぽいレンガと煉瓦の材料である白っぽい粘土で出来ている。
高さは腰の辺りまで、上部は炭や鉄を乗せる為に煉瓦一個分の淵を残し、僅かに深くなっており、中心には風を通す穴が開いていた。
そして、その穴は下部に空いた空気穴と繋がっており、そこには水車から風を送り込むようになっている。
「言われてみれば、肉とか焼けそうだな」
口の中に涎が出てきた。
そういや、こっち来て肉食ってねぇなぁ。
「キャンプ場にあるバーベキューコーナーみたいっス」
バーベキューもいいな。
モツとかソーセージとかカルビとか肉とか焼いて、適当に塩コショウ、焼き肉のタレもいい。
「僕マトン食べたいッス」
ラムじゃなくてマトンを選のか。
「俺は断然タンだな。塩タン」
「私はホルモンがいいわ」
「ワシはこうキューっと一緒にビールが欲しいのぅ」
バーベキューというより焼き肉だな。
ん?あれ?何の話をしてたんだっけ?
「ハツ、豚トロ、軟骨……」
「ミノもいいぞ!」
「ウィスキーも捨てがたいのぅ」
ゴクリ
誰かが唾を飲み込む音がした。
「早く日本に帰らないとね……」
読んでいただきありがとうございました。
ブクマ・評価してクレメンス。




