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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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32/45

窯焼き

「で、あんたはセンパイと慕ってくる年下の女の子に自分の荷物を全部持たせた挙句、その娘のケツにくっついて帰ってきたわけ?」

「返す言葉もございません」

 帰ったばかりの俺に奏はゴミを見る目で吐き捨てた。

「あんたには誇りってものがないの?」

「誇りは浜で死にました」

 人間どう足掻いてもどうにもならない差という物があるという事をアンに会ったその日に見せつけられたんだよ。

「あんた日本に帰ったらホストにでもなったら?」

 そこまで言うか!?

 そこまで言ったら昨日助けてもらった恩は使い切ったとみるそこの野郎。

「奏こそエリちゃんに任せて何やってたんだよ」

「……木をより分けてたわ」

 奏が視線を向けた方を見ると、そこには大きさと木の種類や湿気具合によって分けられた木材の山があった。

 ちゃんと仕事をしていた。

 だが、当の本人は自身の仕事ぶりに自身がないようだ。

 アンやエリちゃんの仕事と比べているのだろうが、超人と競っても意味がないだろうに。

「いやまぁ、ちゃんと仕事してるじゃん?」

「慰めは止めて、惨めになるから」

 わかる。

 すぐ側に超人がいる凡人の惨めさはよくわかるのでこれ以上は何も言えない。

 ところでその超人ロリおばあちゃんは何処にいるのかな?

 多分奏がより分けた木材の山から少し離れた所にある大きな窯だとは思うのだが姿が見えない。

「おお、ちょうどいいタイミングで帰ってきたのぅ。後は木を積み込むだけじゃ手伝ってもらえるかのぅ?」

 都合よく目的の人物の声の方が窯の中から聞こえた。

「わーお」

 パンツ一丁で泥んこ姿のエリちゃんがそこにいた。

 大事な場所含め全身が泥だらけで頬まで汚れてしまっているが、元々の幻想の如き美しさは損なわれておらず、むしろ外見相応の幼さが際立ち普段よりもいっそう危うい魅力が、目が潰されるほどに痛いっっ!!!」

「見ちゃ駄目っ!!」

 奏の指が俺の目に突き刺さる。

「目がガガガっ!!やめろ!目がつぶれるぅっ!!」

「幼女に興奮する変態の目は潰されるべきよっ!」

「流石の俺でも上裸の美幼女が天真爛漫に泥んこ遊びをしていたが如き、無邪気の楽園なエロスに目も心も奪われm倒錯的な趣味は持ちあわせていnさらに指が眼球に食い込むっっ!!?」

 ええい離せっ!!

 我がお目目可愛さに力づくで奏を振り払うが、視力が一向に回復せん。

 このまま一生目が見えなかったらどうしよう?

 最後に見れた光景がアレでいいのか?

 いや、いいに決まっている!!

 あれこそ人類が失ったエデン!

 たとえ目が見えなくなったとしても、俺はこれから一生あの光景をオカズに生きていけるっ!

「エリちゃんセンパイ水を汲んできたッス!」

「布と着替えも持ってきたわ」

 くそっ!誰も俺の心配をしやがらねぇっ!? 

 奇跡的に視力が回復してきた時、エリちゃんはすっかり着替えていつも通りの芋ジャージに戻ってしまっていた。

 チッ!

 舌打ちをしたら、奏がチョキにした手を上げて俺を脅してきやがった。

 少し離れておこう。

「エリちゃん何処まで出来たんです?」

 簡単な屋根付きの白っぽい粘土で出来た炭焼き炉には、前方にエリちゃんが出てきた入り口(?)が一つに後方には煙突が一つ、中を覗き込めば横幅は多少狭いがかなり奥行きがある。天井を支える為の工夫だろうか?

「後は木を積み込んで焼くだけじゃ」

 出来たばかりですぐ焼いて大丈夫かとも思ったが、中を見ると意外と乾燥してる。

 所々新たに粘土を塗り込んだような跡があるが、さきほどエリちゃんが出てきたのはそこの修復、最終チェックをしていたのだろう。

「積み込み方はどうやるんスか?」

「いい質問じゃ。木を逆さまに立てて入れるのじゃ。奥には細い木で手前に来るにしたがって段々と太くなってくるように入れるのじゃ。

 エリちゃんが実践してみせるのに従い、俺達もそれに倣って木を詰めていく。

「入り口近くと側面、天井付近は失敗しやすいから、そこには良い木材は置かず、出来るだけ中心に入れるんじゃよ。それから入れる木材は大きくても直径一〇センチまでじゃ」

 直径一〇センチ以上の木材けっこうあったけどどうしよう?

 悪にしても己も鉈もないし、勿体ないけど炭を焼く時の燃料にするか?

 バキッッ!

「ん?なんスかセンパイ?」

 かなり太めの木材、というか丸太をアンが素手で裂いていた。

 奏が呆然として木材を取り落とした後、我に返って、というか見なかった事にして作業を再開しだした。

 うん。とりあえず大きめの木材はアンに任せるか。

「その調子でデカい木材はドンドン頼むぞ!」

 サムズアップしてみせるとアンはわかりやすく喜んだ。

「任せて欲しいッス!」

 バキャっ!

 あの娘の握力いくらくらいあるんだろう?

 二〇〇キロ?

 喜んで働いてくれてるようだし細かい事はまいいか。

 アンが大きな木材を適度な大きさに砕き(?)、俺と奏でそれを詰めていき、エリちゃんが細かな点を修正する。

 日が暮れる前には、大量にあった木材の山は、一/三程の量が炭焼き窯の中に納まった。

 残った二/三の内半分以上は、炭に適さないとかで炭焼きの燃料にするらしい。

「それは?」

 すっかり詰め終えた炉の前で汗を拭っていると、エリちゃんが日干し煉瓦と粘土を手に窯の入口へと持って来た。

「こうするんじゃよ」

 口で説明するより見た方が早いという事か、エリちゃんは窯の入口ギリギリまで積まれた木材の目前に粘土を接着剤として煉瓦を積む。

 上部に隙間を残す程度まで煉瓦を積むと次にその少し外側へ煉瓦を積みだした。

 今度はしっかり上まで、しかし真ん中より少し下にある程度の大きさの穴とその下に煉瓦一個分くらいの穴を作って。

「真ん中の穴が焚口でその下の穴が空気を取り入れる用の穴じゃ」

 七輪の下についてる穴みたいなものか?

 俺があまり理解でもせず、したり顔でふむふむ頷いていると、焚きつけようの枯草と種火を持った奏がやってきた。

「後は着火すればいいのよね!」

 こいつ、記念すべき最初の火入れをちゃっかり自分のものにする気だな!

 何とずるい女だ。

「もう少し待つのじゃ」

 エリちゃんは「仕方ないのぅ」という顔で奏を抑えると、あまり錆びていない空き缶を手に長い管に繋がった煙突の付け根へ行くと管を外して缶で栓をした。

「最初ある程度乾燥するまで塞いだ状態で火を焚くんじゃ」

 という事は、途中で煙突を弄って調整する必要があるんだろうか?

 少し面倒だな。

「ねぇねぇ。エリちゃんもう火をつけていいかしら?」

 そんなに火をつけたいか?

 放火魔かコイツ?

 エリちゃんも苦笑している。

 奏での奴見た目こそ一番年上に見えるが、精神年齢は一番低いんじゃないだろうか?

「最初はゆっくり小さめの火にするんじゃよ?」

 奏はそれを許可ととらえ種火から枯草に火をつけるとそれを焚口に放り込み、更に枯草、小さめの枝、大きめの枝と順々に放り込んでいく。

「フーーッl!フーーーっ!」

 枝を放り込んでから奏は竹筒で空気を送り込む、焚口から黙々と煙が立ち上りあきらかに枝に火が映った事を確認して、今度は燃料となる木材を放り込む。

 ポイポイと入れている途中でエリちゃんの言葉を思い出したのか、手を止め再度息を吹き込んだ。

「ヨシッ!」

 そして、後から放り込んだ燃料の木材にも火が付いたのを確認すると奏はグッとガッツポーズをした。

 火付けの成功率が低いのを気にしてたようだ。

 因みに俺は奏の次に下手だ。

 奏が挑戦的な目で俺を見てきた。

「それで次はどうすればいいんです?」

 俺は奏をスルーしてエリちゃんに問いかけた。

「おい」

 スルーする。

「そうじゃのう。この大きさの窯じゃと短くとも四日は火を焚き続ける必要があるかのぅ」

 4日間残りの燃料で大丈夫か?

 炭焼きなんて当然やった事ないので消費する燃料の予想が出来ん。

 それに当然あるであろうその間の火の調整や煙突の開閉等の作業もある。

「それはどうやってわかるんです?」

 俺の曖昧な質問にエリちゃんは少し悩んだ。

「そうじゃのぅ。中の木材が乾燥した頃に煙突を開けて、酸っぱい匂いがしてきたら煙突を管に繋いで薪をくべるのをやめ、徐々に窯口を狭めるのじゃ」

「管に繋ぐ理由は何ッスか?」

 アンナイス質問!

 ちょうど俺も聞こうと思ってたんだ。

 本当だぞぅ?

「木酢を集めるんじゃ」

 木酢?

 なんだそりゃ?

 聞き慣れない名に皆が首を捻った。

「人体にあまり影響のない防虫剤みたいなものじゃよ。色々使えて便利じゃぞ~」

 “あまり”というのが気になるが、虫の多いこの島では便利そうだ。

「それから、煙が無色透明になったら煙突含め全部の穴を塞いで窯が冷えるまで待つんじゃ」

 最低四日と言っていたが、炭を焼くだけで意外と手順があるのだな。

「意外と時間と手間がかかるのね」

 奏に同意だ。

 炭なんて今どきコンビニや百均にだって売っているというのに、一から作ろうとするとこれほどまで手間がかかるとは……

 科学化された文明社会は偉大だ。

 炭一つとってもそうだが、振り返ってみれば、火、刃、布。

 どれも日本では簡単に手に入るが、この島ではどれか一つ作るだけで一仕事だ。

 今使ってる刃物なんて、エリちゃんが割れたコーラの瓶から作ったナイフだぞ。

 それが日本では、俺みたいな高校生でも適当なバイトを一時間でもすればさっき上げた程度の物は好きなだけ手に入る。

 いや本当に科学文明って偉大だったのだな。

 もし、流れ着いたこの島にアンもエリちゃんもいなかったら多分今頃死んでたぞ。

 


読んでいただきありがとうございました。

ブクマ・評価してクレメンス。

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