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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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見ない!向かないっ!!振り返らないっっ!!!

 暗くなってきたので続きの話は夕食をしながらという事になり、海鮮中心の食事をとりながら奏と島一番の馬鹿決定戦をしていると、アンが何かを思い出して声を上げた。

「そう言えば、この島の位置を知るって言ってたっスけど、緯度とか経度も調べられるんスか?」

 因みにアンは俺に尋ねてくれたのだが、当然答えられる脳は俺にはなく質問は右から左へとエリちゃんに流された。

「わかると言わばわかるんじゃが……」

 エリちゃんは少し悩んだ後、数本のヒモと小石を俺達に配った。

「論より証拠じゃ。これをこうしてじゃな?」

 エリちゃんは小石にヒモを結び、ヒモのもう一端を片手に絡めると小石を吊るしながら親指以外の指をそろえて掲げ夜空を見上げた。

「あそこにある二等星が北極星じゃ。それを基準に手を分度器に見立てて覗き、ヒモが示す角度から九〇度引くと緯度になるんじゃよ」

 全員でエリちゃんを真似る。

 しっかし、北極星ってどれだ?

 二等星とか言われてもわからんぞ。

「因みに北斗七星の柄杓の先の二つの星の間の五倍先にあるのが北極星じゃ」

 助かる。

 って、言われても北斗七星がよくわからん。

 柄杓?

 あれか!?

 たぶんあれだよな?

 そこから柄杓の先の二つの星の間の五倍先は……アレかな?

 北極星イメージよりだいぶ暗いな。

 あれであってるよな?

 まぁいいや、えーと手が分度器でマイナス九〇度だっけ?

「わかったら手を上げるじゃよ~」

「「わかった(わ)」」

 エリちゃんの声に俺と奏がどうじに手を上げた。

 おのれっ!

「僅かに奏の方が早かったのぅ」

 奏が俺の方を向いてニヤリと嫌味な笑顔を浮かべた。

「北緯二八度二四分、西経八〇度三六分!!」

「そこは米国のケープ・カナベラルじゃ!というか、今ので経度まではわかるわけないじゃろうが」

 珍しくツッコミを入れたエリちゃんが浮かれたような呆れたような表情になる。

 奏はアレ?っと、頭を掻いて誤魔化している。

 馬鹿め、俺に対抗しようとするあまり正確性を欠きやがったな。

「はいはーい。それじゃあ俺の番いい?」

「おお、それじゃあチョーヘイの答えはなんじゃ?」

 気持ちを切り替えたエリちゃんが俺に期待の笑みを向ける。

 うむ。エリちゃんの笑顔は俺にこそふさわしいという事を奏に教えてくれる!

「南緯四七度九分、西経一二六度四三分っ!」

「そんなところにいてたまるかっっ!!!というかワシ、さっき緯度まではわからんっていったよね!?というか、北極星が見えてるんだから南緯のわけないじゃろうっ!?」

 おや?間違ったかな?

 ポリポリと頭を掻いて横を見ると奏と目が合った。

 ここまではほぼ互角、やはり奴は俺のライバル。

「はぁ」

 顔を戻すとこの程度のツッコミで疲れたのかエリちゃんが肩を落としている。

 誰だ、俺のエリちゃんを疲れさせたのは?

「あの~」

 今まで黙ってたアンが恐る恐る手を上げる。

「なんじゃ?」

 少々疲れた顔でエリちゃんが訪ねるとアンは俺に申し訳なさそうに口を開いた。

「三三度くらいっスか?」

 その数字にエリちゃんは地獄に仏でも見たのか、優し気な報われたような笑みをこぼした。

「うむ。ワシの見立てでもそうなった。多分それで正解じゃ」

「「ちっ、おしいっ!」」

 何故かハモッた。

 なんなら指を慣らす動作まで重なった。

 そして、エリちゃんとアンが複雑な表情で俺と奏を見た。

 やめろ!

 俺達を可哀想な子を見る目で見ないで!!

「多分正解ではあるはずなんじゃがなぁ……」

 俺達の反応をなかった事にして気持ちを切り替えたエリちゃんは首を捻った。

「何かおかしなところがあるんスか?」

 エリちゃんは頷くと自身の荷物を漁ると少々ゴツめの携帯端末を取り出し電源を入れた。

 因みに俺のは水没して動かなくなったので置物となってるのだが、エリちゃんのは動くのか?

「私のは漂着した時点で壊れてたけどエリちゃんのは大丈夫だったの?」

 奏も俺と同じ置物状態のようだ。

「ワシのは防水、防塵、耐海水、耐衝撃、対氷結性能で無事だったんじゃ」

「それは本当に個人用の携帯端末か?」

「普通に販売されてるッスよ!ボクも同じヤツッス!」

 アンが自信満々に見せてくるが、え?何それで素なの?デフォで強化ケースに入ってるような見た目なんですけど?

 そんな素でゴツイのがなうなヤングにバカうけなのか?

「今はバッテリー切れで動かないッス」

 置物三つ目。

「ワシは電波が入らんと分かった時点でバッテリー消費を抑える為に電源を切ったでなっと、ほれこれを見よ」

「なるほど、基本的に一時間に一本ペースでバスが来るんですね」

 見せられた画面の壁紙が時刻表の写メになっていた。

 最寄りのバス停か?

「壁紙の方ではないっ!時間を見るのじゃ!」

 言われて時間を見ると一九時五四分を表示している。

 これが一体どうしたのいうのだ?

 今の暗さと大体一致しているしなにもおかしい所はない。

「日本と大体同じ時間って事っスね!?」

 ん?

 いやだからどういう意味だ?

「そうじゃ、正午丁度に太陽と比べてみたのじゃが、ほぼ一致しておるし。ワシの体感じゃが、恐らく東京と同じくらいじゃないかのう」

「それがどういう意味なのよ?」

 俺が訪ねる前に奏が疑問の声を上げた。

 チッ、負けた。

「時間が同じって事は同じ緯度にあるという事じゃ」

 ………………?

「グリニッジ標準って聞いた事ないっスか?」

 ………………ああっ!

「緯度で標準時間が決まる、そのくらい学校で習っただろ?」

「アンタだって今まで全然理解してなかったじゃないっ!!」

 へへーん。ヘマを声に出してないからセーフだし!

 悔しそうに臍を噛む奏をよそにエリちゃんに話を続けてもらう。

 エリちゃんの視線が俺も理解していなかった事を見抜いているようで心に突き刺さる。

「ゴホンっ!少し脱線したが話を戻すぞ。つまり、計測した緯度と経度ならここは小笠原諸島のはずなんじゃよ」

 へ~、小笠原諸島かぁ……

 東京の下のちっちゃいゴマ塩みたいな所だよな?

「……だったらなんで一機の飛行機も一隻の船も見えないんだ?」

「そうよね!大体私達みんな遭難したんだから、捜索隊だって出てるはずなんだからそんな所ならすぐに見つかるはずでしょ!?」

「というか、漂着してそうな島なんてまず最初に調べれるもんじゃないんスか?」

 遭難から(多分)もう三日が過ぎようとしている。

 行方不明になった処から離れていたとしても、予想漂流経路にある島ならもう既にヘリや飛行機が飛び回っているもんじゃないのか?

 緯度経度の計測が間違っているとは思えないし、一体どういう事態なのだろうか?

 全員頭を捻るが、それらしい答えにたどり着く者はおらず、沈黙が一帯を支配する。

「あっ」

 以外にも奏が何かに気づいたように声を上げた。

「何か思い当たったのか?」

 何か考え付いたのかと思ったが、奏は違うと首を振った。

「腹でも減ったのか?夕飯はもう食べただろ?」

「そうじゃないわよ。他にも変な事があったのに気づいたのよ!」

 なんだエリちゃんについての事なら諦めろよ。

「兎に角アレを見てよ。あの北斗七星っ!」

 なんだ?北斗七星がどうかしたのか?

 北斗七星、名前はカッコいいけど見た目はただの柄杓なんだよなぁ。

「で、あの柄杓がどうした?」

「柄杓の横にもう一個星が見えない?私あれ見おぼえない星なんだけど?」

 不吉な物を幻視するなっ!! 

 なんちゅう縁起でもないジョークを言いやがるのかこのアホポン女は?

 俺はやれやれと首を振って横を向いた。

「ちょっと!なんで誰もあの星を見てくれないのよっ!!」

 向いた先では、エリちゃんやアンも同じように横を向いていた。

「本当に誰でもいいからあの星確認してよっっ!!」

 見んっ!

 見ない!向かないっ!!振り返らないっっ!!!


読んでいただきありがとうございました。

ブクマ・評価してクレメンス。

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