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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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ヒモの様に生きる?

 適当に昼食を食べ再度海までやってきたのだが。

「さて、どうしたものか」

 チョッキ銛だろうとパラライザー銛だろうと魚に当てられなければ関係ない。

 いや、それなりに練習を積めばある程度マシになるだろうが、現状アンとエリちゃんが何とかしてしまうのでそこまで重要ではない。

 てか、あの二人が凄すぎて四人分の魚+保存食程度なら何の問題もなく手に入ってしまう状況で俺が出来る事ってあるのか?

 正直二人におんぶにだっこでヒモの様に生きていく事なら出来る。

 俺が必死になって何かをする必要なんてないのかもしれない。

 でもそうする必要はなくとも俺にしかできない。もしくは、俺だからこその何かが欲しい。

 必要とか可能不可能の話ではなく、俺の僅かばかりのプライドの為だ。

 古臭くて面倒なプライドかもしれないが、俺は何かをしたい。

 ……あと、エリちゃんとかアンにキャーキャー言われたい。

 美少女達からちょっとくらい尊敬されたいと思うのは当然だろ?

「どうしたんじゃ?そんな深刻そうな顔をして?」

 いつの間にか何匹もの魚をぶら下げた全裸のエリちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。

「え、まぁ、なんというか……どうしたものかなって」

 俺女の子にちやほやされたいが為にそんな深刻そうな顔してたのか……

 なんとも情けない感情に押し潰されそうになっていると、エリちゃんは唇の下に指を当て何かを考え口を開いた。

「何に悩んでいるかいまいちわからんが、わからない時は自身がやりたい事、必要だと思う事、今の自分を見直す事と自ずと見えてくる物じゃよ」

 やりたい事、必要な事、今の自分を見直すかぁ。

 ……正直、あまりシリアスなやりたい事は思い浮かばない。

 こんな所に漂流して、問題なく生きていけるだけで有難い。

 そんな状態でやりたい事なんてなぁ。

 甘いものが食べたいとか?

 ネットやりたい?

 そういや今週の週刊漫画雑誌まだ読んでなかったな。

 きんつばが食べたい、ゲームをしたい、やわらかいベッドで寝たい、風呂に入りたい、クラスメイトや家族、姉貴大丈夫かなぁ。

 母さんは心配してるだろうな。

 親父は……どうだろ?

 あ、親父の作ってくれた山ほどうま味調味料の入った適当飯食べたいな。

 ああそうだ。

「帰りたい」

 思いを言葉に出したらもっと思いがこぼれ出した。

 フラッシュバックするように母の顔が、父顔が、姉顔が、友人とふざけ合った思い出が一瞬のうちに何度も繰り返し湧き出しては消えていく。

 寝所は固いし、飯は味が薄い、気づけばすぐ隣に虫がいるし、クーラーも冷蔵庫もない、風呂すらまともに入れない、こんな草深い無人島一日いれば十分だ。

 ネットが恋しい、クーラーが欲しい、電気の明かりが欲しい、チョコが食べたい、文明に帰りたい。

「家に帰りたい」 

 こぼれ出した思いは止まらない。

 数日前まで現実だった思い出が脳を駆け巡り、脊髄を走り、体中を掻き乱す。

 どうしたら帰れる?

 何をすればいい?

 俺に何が出来る?

 俺に何もできないならどうすればいい?

「エリちゃん俺帰りたい」

 エリちゃんに縋りついた手は震えていた。

 助けを求めた。

 エリちゃんが俺の瞳を見つめる。

 目と目が合う。

 じんわりと視界が歪んだ。

「俺、帰りたい。協力して、どうしていいか、何が出来るか、どうしていいかもわからない。だからエリちゃん俺を助けて」

 目の前の景色が歪んでよく見えない。

 でも、細く小さい何かが俺の頭を掴むと下へ、暖かく優しい所へ俺の顔を導いた。

 エリちゃんが俺の頭を抱きかかえた。

「チョーヘイは強い子じゃ。よく頑張った」

 彼女はよしよしと俺の頭を撫ぜた。

 目から涙がこぼれた。

「今まで誰にも頼らずよく頑張った、アンや奏に弱い所を見せられないものなぁ。でも今はワシとチョーヘイだけじゃ、うんと頼っていいんじゃよ。そしてこれからも」

 何が何だか分らなかった。

 今まで緊張とおちゃらけで誤魔化してきたそれが耐え切れなくなった。

 不安や恐怖、ストレスが、抑えきれなくなった感情が、内からあふれ堰を切って流れ出した。

 声にならない声と涙となって彼女の胸を濡らした。

 ──────

 どれくらいの時間が経っただろうか、俺の目は腫れぼったくなっているかもしれない。

 しかし、溜めていた感情を出し切った今の気分はだいぶ晴れ晴れとしていた。

「ありがとう」

 立ち直った俺にエリちゃんはにっこりと笑った。

「困った時、悩んだ時、どうしようもない時は頼ってくれていいんじゃよ」

 俺はが頷くとエリちゃんは優しげな顔で続けた。

「でも、男の子が最初から全てを頼り切ってはいかんぞ。全部頼り切っては成長できん。男の子が率先して頑張るんじゃ。それで悩んだ時や危ない時、ワシがひらめきを与えてやる。それ以外はワシはただの手伝いじゃ」

 凄く優しくて、ちょっと厳しいエリちゃん。

 でも、それだと彼女の意思はどうなるのだろうか。

 俺はそう訊ねようとして、しかし、彼女の顔を見て止めた。

「わかった」

 彼女がどんな考えで、彼女が何を望んでいるのかはまだわからないけど、彼女が後悔しない道を選ぼう。

 よし、とりあえず貝と海藻を採りながら何が出来るか考えるか。


読んでいただきありがとうございました。

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