出来るかな?
「これが私達の成果よ!!」
『ドン!!』というオノマトペが似合いそうなポーズで奏が見せてたのは二つの道具。
一つは木製の大きなペンチのような物、もう一つは木製のシャベルの先に金属製のカバーをつけた物だ。
よく見ると金属カバーはスチール缶を上手く加工して作ったようだが、もしかして石か棒でコツコツ曲げたのか?
家の事をやるにしても何をするかと思ったが、ここまでの物を作るとはたまげたなぁ。
「なるほど、木製のやっとこと鋤とはなかなか考えたのぅ」
やっとこ?鋤?ペンチとシャベルの事か?
「私が案を出したのよ!」
「それを僕が実現可能なラインまで落とし込んだッス」
「実現可能なラインって?」
俺の質問に奏が顔を逸らした。
「……最初漂流物に刺さった釘とか溶かして鍋や包丁を作ろうと言われたッス」
「最初の案が原型留めてねーじゃねーか」
視線を逸らした奏をジト目で見つめた。
「で、でもペンチを加工したり、シャベルの先っぽを加工したのは私よ!」
嘘乙。
奏なんかにこんな加工できるわけがない。
どうせアンが加工して……
「本当かアン?」
「……僕がやったらナイフ代わりのガラス片は砕けて、叩いたスチール缶は一発でペシャンコになったッス」
そうだった。
この娘は容姿も性格もパワーも完璧だけど器用さには時たまポンコツになるんだった。
「で、でも適度な大きさ何るまで木を砕いたり、スチール缶を裂いたり手伝いは出来たッス」
普通木は砕かないし、スチールは裂く物じゃない。
てか、現状から考えるに両方とも素手でやったのか?
俺はもう一度ペンチとシャベルの金属部分をよく見る。
ガタガタしている部分も多いし、上手な出来とは言えないが、ちゃんと形になっている。恐らく実用にも耐えるはずだ。
彼女の手を見れば昨日以上に傷が増えている。
奏はどうよ!っと胸を張った。
「お前にも取り柄があったんだな」
正直、偶然ワカメを見つけただけの俺よりよっぽどちゃんとした成果だ。
「素直に褒めなさいよ!!」
何故かキレた奏の拳が俺に迫るが流石に二度目はないとギリギリで躱す。
空ぶった奏はチッと舌打ちをした。
「まぁ、凄いのはわかった誉めてつかわす」
「何様よ!」
「で、このペンチとシャベルで何をする気なんだ?」
俺の質問に奏は「わかってないわね~」と指を振った。
「この大型ペンチで鍛冶をするのよ!」
「まずは、第一歩って事っス」
包丁や鍋がペンチになった理由が分かった。
着実な一歩だがかなり遠そうだ。
それでも俺より先を見据えている。
「で、シャベルの方は?」
「フッ」
奏が今度は鼻で笑った。
「そんなシャベル程度で何が出来るってんだ?」
「アンタ全然シャベルのスゴさを分かってない」
だからシャベルで何が出来るんだよ。
穴掘るぐらいだろ?
墓穴でも掘る気か?
「そう!シャベルがあればトイレが作れる!!」
忘れてたがそうかトイレか。
スゴいというか有難い。
ここ二日、小さい方は木陰ですればいいが、デカい方はする度に木の板で穴を掘らなきゃいかんかった。
食い物が食い物だけに──食物繊維が足りてないのかもしれん──ちょっと、いや、かなり緩めのアレが出ているので穴掘る回数も多いし、浅い穴で足に引っかかるわけにもいかん。
スゴいとは言わんが、有難いのは確かだ。
デカいトイレ穴掘って、そこに板橋を渡して出した後は上から土をかけるだけにすれば毎回掘らんでもよくなるな。
「僕としてはトイレより害獣除けの水堀とか水路を掘りたいッス!」
どんだけデカい工事をする気だ?
いや、アンならユンボ顔負けのスピードで掘りそうだが。
「ワシは粘土を掘りたいのぅ。粘土があれば炉や窯が作れる」
流石エリちゃん。次につながる物を作りたがってる。
まぁ、何処に粘土があるかなんてわからんし、トイレなりなんなりを掘るついでに見つかれば音の字だろう。
皆やりたい事は様々だが、評価されてるのは確かだ。
認めたくないが、俺は奏と同じでトイレ派だ。
「ヨシ、トイレは俺が掘ってやる」
俺がそう言うと、奏は何故だかぼっとん便所を見るような目で俺を見た。
「げぇ、アンタそこまでして女子の排便後に興味あるの……」
濡れ衣だ。
読んでいただきありがとうございました。
ブクマ・評価してクレメンス。




