ワカメ王国
「こんなんで獲れるかばっきゃろーーーっっ!!」
俺は海面に銛を叩きつけた。
開始して大分時間が経っているが、一匹も獲れないどころかほとんど掠りもしない。
銛を向けて近づいただで逃げられる事がほとんどなのでそもそも銛を放つ事さえ難しい。
一回だけ奇跡的に刺さった事もあったのだが、それも刺さりが浅かったのかすぐに逃げられてしまった。
まぁ、狙った魚に逃げられて、突き刺さった砂の下にたまたまいただけだったので、あれで獲れたとしてもそれを誇る事は出来なかったが、それでも〇よりはマシだったはずだ。
てか、こんなんであれだけ魚を獲れたアンはやはりおかしい。
「そんな急かんでもゆっくりやればよいぞ?」
投げ捨てた銛が目の前に差し出された。
目線を下げれば海に入る為に全てを脱ぎ捨て全裸になったエリちゃんが銛を拾ってくれたのだとわかった。
もう片方の手にはチョッキ銛と一緒に何匹もの大きな魚を繋いだ笹が見える。
「ありがとう」
そう言って俺は差し出された銛を受け取る。
エリちゃんの使っている銛も一度貸してもらったが、結局俺は掠りもせず、その間エリちゃんはパラライザーで30センチいかない程度のタカノハダイとかいうのを三枚もついていた。
これでは銛のせいにもできない。
ええいっ!いっそこうなったら奏みたいに貝を採って誤魔化すか?
いや、流石にそれはなけなしのプライドが……
「んぁ?これって……エリちゃ~んちょっとこっち来てぇ~~!!」
「どうしたんじゃチョーヘイ?」
イルカの如きスピードで泳いできたエリちゃんに俺は見つけた物を銛で示した。
それは、ちょうど目を向けた海中、潮が最も引いたタイミングでも外に出ないところにあった。
「これはワカメじゃな」
エリちゃんは全裸のまま「でかした!」と笑った。
俺も昨夜の事を思い出し笑顔で答えた。
刺身を塩で食べるのも悪くない。
しかし、単調な味はいずれ飽きる。
そして、寄生虫やならんやらの危険を冒してまで生で食べなければいけない理由はビタミン接種が目的だからだ!
つまり、ビタミン豊富な海藻を十分な量獲れるのであれば、必要に駆られて生で食べる必要もなくなるという事だ!!
まぁ、美味しかったから刺身で食べるのだけど、選択肢があるのとないのとではだいぶ違うはずだ。
「この一帯群生してますよね」
俺達の目の前にはワカメの森が出来ていた。
「ああ、これならそう簡単に採りつくす事もないじゃろう」
俺とエリちゃんは目と目で通じ合った。
「よし!今夜分と干す分を確保するのじゃ!!」
「了解っ!!」
俺は敬礼するとワカメに手を伸ばした。
今夜はワカメスープだぜ。
読んでいただきありがとうございました。
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