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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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巣作り少年

「貝が食べたいのぅ」

 エリちゃんが削った木の棒で蟹の身を器用に掘り出しながら呟いた。

「何貝ッスか?」

 アンはエリちゃんが昨日捕ってきて一夜干しにしていた魚に齧り付きながら訪ねた。

 俺の目の前にも蟹と魚──エリちゃんはベラと呼んでいたカラフルな魚──、それからココナッツが並んでいる。

 遭難二日目にしてはかなり豪勢だが、少々栄養バランスが気になる。

「うむ。蟹も旨いが昨日奏が採ってきた貝をまた食べたくなってのぅ。はて、何て名前じゃったか?」

 エリちゃんの食事中まで少し気落ちしている奏へのあからさま過ぎる誘い。

 彼女が貝の名前を忘れるなんてボケでもしない限りない……ボケてないよな?

「ふふっ、いいわ!私が採ってきてあげる!今日の夕食は期待しててよね!」

 しかし、単純な奏はそれに飛びついた。

「おぉっ、頼んだぞ奏!期待しておるからな」

 エリちゃんのヨイショに奏は形のいい胸を張る。

「アン銛はあんたに任せるわ!」

「任されたッス!」

 敬礼に合わせてアンの大きな胸が弾む。

 バランスは奏の方が若干上だが、デカさはアンの方が圧倒的にデカい。

 二人が張り切るのは──視覚的──大変素晴らしい。

 俺も負けてはいれんな。

「エリちゃん。今日中に形にしよう」

「うむ。その意気じゃ」

 ニッコリと笑うエリちゃん。

 もしかして、ここまで計算づく?

 彼女の笑みが少々怖くなり視線を外すと偶然奏と目が合った。

「何よ」

「まぁ、奏でも貝くらい採れるだろ(何でもないよ)」

「エリちゃんがいればアンタの細腕でも小屋くらい何とかなるでしょ」

「「(コイツには絶対負けられない!!!)」」



「地味だ」

 俺はエリちゃんに教えられた通り、ただひたすらに椰子の葉を折り曲げ編み込み続けている。

 作業開始時は奏への対抗心でスイスイ進めていたが、単純作業の繰り返しは肉体労働以上に疲れた。

 肉体的にではなく精神的に。

 エリちゃんが言うには、この折った葉を欲しい木の枝とツタのロープでまとめ壁や屋根にするらしい。

「こんなんで大丈夫なのか?」

 そう思いながら骨組みだけの小屋を見る。

 疑問には思うが、壁になる板どころか柱すら──まっすぐで状態の良いものを選んではいるが──打ち上げられた流木を使っており、まともな金属製の刃物もない現状ではこれよりマシな選択肢はないのかもしれない。

 因みに、俺に椰子の葉を折るよう指示を出したエリちゃんは、小屋の中で床を作っている。

 材質はなんと竹!

 どこからか伐採してきた竹の枝を落とし、同じ長さに切り揃えて半分に割って床にするらしい。

 床というには凸凹しているが、地べたに座るよりは何倍もいい。

 そうそう、まともな金属製の刃物もなしにどうやって伐採したり加工したかと思うが、まともな金属製の刃物はないが、まともでない金属製の刃物はあるのだ。

「ん?これか?これはスチール缶を加工して作った鋸じゃ、まぁ材料の関係上畦挽みたいになってしまったがのぅ」

 そう言って見せてくれたのは両面が半月状になった小さな諸刃の鋸。

 缶ジュースの底を石で叩いたり研いだりして作ったようで、柄にもなっている木材で挟むように固定している。

「どぅ・いっと・ゆあせるふじゃ」

 道具から自作するのは日曜大工のレベルではないと思う。

 なお、俺も少し借りて切ってみようとしたが、どうにもコツがいるらしく一センチもまともに切れなかった。

「ふぅ、こんなもんか?」

 何とか言われた大きさと枚数、椰子の葉で作った壁の材料が完成した。

「えりちゃ~ん!」

 俺は最後に出来たそれを手にエリちゃんを呼んだ。

「おおぅ、チョイ待ってくれよ。この枝の処理だけしたら行く……」

 そう言いながらもエリちゃんはすぐに俺の所まで来てくれた。

 そして、俺の作った壁と屋根の材料を確認するとニッコリと笑った。

「上出来じゃ!」

「おっしっ!」

 エリちゃんに撫でてもらいながらガッツポーズをする。

「それじゃあそっちを持ってこっちにくれ」

「ここでいい?」

「もうちょい上……そうそうそこそこ、そのまま持っていてくれ」

 エリちゃんに指示されるまま小屋の柱に椰子の葉の壁を添えると、彼女はそれを下段から順番に上手く柱に結び付ける。

 二枚目三枚目は下段の壁の上の少し重ねながらそれぞれを結び付ける。

「よし、次はそっちじゃ」

「あいよっ!」

 エリちゃんの指示に従いドンドンと結び付けていく。

 壁の材料が出来るのはかなり時間がかかったが、そこから壁になるのはすぐだった。

 しかしなぁ。問題は屋根だよなぁ。

 小屋とはいえ、あの上に乗るのは……

「やぁねぇ~」

 何処かの黄色い着物を着た老人が頭を過った。

「どうしたんじゃ?」

「いや、屋根はどうするかなって思って」

「やーねー」

 エリちゃんお前もか。

「冗談じゃ、そんな顔するでない。ちゃんと考えておる」

 エリちゃんはケラケラと笑うと一歩の長いツタとそれより短い二本のツタを持って見せた。

 それでどうするのかと見ていると、彼女は屋根用に編んだ椰子の葉の一辺の両側に短い方のツタをそれぞれ結んだ。

 そして短い二本のツタの一端を長いツタに結んだ。

「もしかして?」

 俺の疑問に答える様にエリちゃんはスルスルと小屋に登った。

「危な……エリちゃんなら大丈夫か」

 俺の予想通り彼女は危なげなく小屋の一番上まで登ると真ん中に移動しツタを引っ張った。 

 いくら椰子の木の葉と細い枝、それからツタで出来ているからと言ってそれなりの大きさ、それなりの重量のはずだが、エリちゃんは縁日の水風船でも釣り上げるかのようにスルスルと引き上げていく。

「お~い。反対側に行くぞ~」

 ほぼ屋根の一番上付近まで引き上げると、エリちゃんはツタを緩めないようにしっかり張ったまま反対側へと降りていく。

「ちょ、ちょっと待って!」

 俺もあわてて後ろに回ると、ついた時には屋根の軒先辺りまで降りてきていた。

「よっ」

 そして、二m近くある高さからツタを張ったまま軽くジャンプして着地すると俺の方を振り向きツタを差し出した。

「チョーヘイも手伝ってくれんか?」

 差し出されたツタを握る。

 それはずっしりと重たく豆の潰れた手に食い込んだが、俺は笑って答えた。

「OK!」

 それを見てにっこりと笑うエリちゃんのそれは、完全に孫に手伝いをさせるおばあちゃんであった。



読んでいただきありがとうございました。

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