がんばれ♡がんばれ♡
海岸沿いには海流によって運ばれてきたであろう多くの流木が流れ着いていた。
勿論、大きすぎて加工や運搬が困難な物や逆に小さすぎて役立たない物も大量にあったが、それを差し引いても小屋作成に役立ちそうな木材、流木が結構な量転がっていた。
もっとも丁度いい大きさだからと運びやすいわけはない。
建築に丁度いいサイズの木材自体重いし、拠点まで微妙に離れているし、その道中は上り坂という三重苦だ。
だからといってあれ以上に良い立地の場所を探すなど今更あり得ないし、そもそも津波などのリスクを考えればある程度離れているのは仕方ない。
「ひぃひぃひぃ」
「ほれ、がんばれ男の子!」
人が自分を納得させつつ頑張っている時に応援されると逆にカチンと来る事がある。
が、それを言っている相手が自分と同等、いや自分以上の重さの物を運んでいる美少女となれば話は別。
と言うか、一見小学生程度にしか見えない幼女が、息一つ切らさず自身よりも大きな木材を運んで追い越していく様子はシュールホラーだ。
彼女が運んでいる木材よりも小さな木材を担ぎ、手に豆まで作ってひぃひぃ言っている身としては、自身の不甲斐なさより軽い恐怖を感じる。
ええい!最近(?)の幼女は化物かっ!?
やはり、エリちゃんは見た目通りの幼女出ない事は決定的に明らかだ。
「ほれ、少し休んだらどうじゃ?」
やっとの思いで集積場所まで木材を運んだ俺にエリちゃんが淹れたてのお茶を差し出す。
「あ、ありがとうございます」
口に運んだそれは、温めで少し酸っぱい味がした。
昔飲んだローズヒップティーに似ている気がする。
「大分集まったようじゃし、そろそろ組み立てるかの?」
エリちゃんが俺の横に腰かけ、お茶を啜りながら提案した。
多分小屋を建てられる程度には貯まっている。
欲を言えば、もう少し貯めておきたいが、体力的にも時間的にもギリギリだ。
「確かにそろそろ建て始めたいのはやまやまだけど……」
今更だが、致命的な問題が判明した。
どうやって建てたらいいんだ?
小屋が必要なのはわかるのだが、よく考えたら小屋の立て方なんて知らん。
イメージくらいなら湧かんでもないが、その程度の曖昧なイメージで小屋が建たんのはいくら俺でもわかる。
そもそも中途半端な知識、ただ知っているだけで実際にそれを実行できる人間がどれだけいるだろうか?
そんな事が出来るのは天才くらいだ。
少なくとも俺には出来ん。
柱一本建てるのも無理だし、今ある材料でどう木材の組めばいいのかもわからん。
「柱ってどう立てればいいんだ?」
こんな状況で経験者もなしに一から小屋を建てるなんて技術的にも不可能なんじゃないか?
「掘っ建て式が一番楽じゃが、こんな土地ではすぐに腐るじゃろうしのう。この際じゃ、簡単でもいいから適当な石を基礎にしてその上に組み立てた方がよいと思うぞ」
「……エリちゃん小屋建てた事ある?」
「大分昔じゃが、庵程度なら何度か建てた事があるぞ」
経験者と技術的な問題はクリアされたな。
よくわからんが、ヨシ!
「現状でどのくらいの基礎?が作れる?」
「 玄翁も鏨もないからのう。適当な石をそのまま使うしかなかろう」
そうなると木材だけじゃなくて今度は石を集める必要があるのか。
今日は間違いなく材料集めで終わるな。
……ん?
「エリちゃんアレって?」
俺は木材の影に適度な石が積まれているのを発見しエリちゃんに尋ねた。
「うむ。必要じゃと思って下の川から集めておいたぞ」
「いつの間に……」
「それは秘密のサクランボじゃ」
エリちゃんが胡散臭いウインクをしながらチロりと舌を出して誤魔化した。
小悪魔的なポーズだが、何故だか加齢臭を感じた。
「……今何かすごく失礼な事を考えなかったか?」
「そんな事ないですよー?そんな事より早く基礎の置き方教えて」
なんとも納得できない表情だが、エリちゃんは適当な木材を目印として地面に置いていく。
「とりあえずこれくらいでいいじゃろ」
「ここに基礎石を置けばいいの?」
俺は適当な石を持ち上げようと手を伸ばしたが、思ったより重くて持ち上がらない。
これはもっと腰をいれんと駄目か?
「待て待て、そんな持ち方をしたら腰をやるぞ。それにすぐ基礎をおいてもいかん。まずは地面を固めるところから始めるのじゃ」
そう言うとエリちゃんは目印を置いた所を木材で軽く掘るとそこを大きめの木材で踏み固めるように叩き、更に砂利を敷いてさらに叩いて踏み固めた。
「小屋じゃしこんなもんじゃろ」
そして、俺が持ち上げられなかった石より少し大きめの石をヒョイと担ぐと比較的平らな面を上にして置き、転がったり傾いたりしないよう調整した。
この島に来てもう何度目か、男としての自信が踏み砕かれた気がした。
「どうじゃ?簡単じゃろ?」
「手とり足取り教えてください」
砂となって浜に流れていったプライドと引き換えに基礎が出来、土台が出来、数本の柱が立って、それを支え合わせる筋交いや梁まで出来た頃には既に太陽は頂点へと至っていた。
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