緑の侵略者
まずは現状の確認。
今拠点としているこの場所は、小さな丘となっておりある程度見通しがいい。
それでありながら少し離れ西側にはここより少し高い丘があり風を防いでくれている。
一方北側は林というには寂しい程度に木々と草が生え、東は潮風をモロに受けない程度距離に海、南は先ほど水を汲んだ小川が流れている。
「立地はほぼ完璧ですよねここ」
「じゃろう?すぐにこんな好立地を見つけられたのは幸運じゃったが、特にラッキーだったのはこれじゃよ」
二カッと笑いながらエリちゃんは足元の草を指さし……
「っ!!バイオテロじゃねぇかっ!!」
一見ただの草。
その実食べられる草。
その正体は悍ましきグリーンモンスター、最悪の植物兵器、最悪の庭園侵略者、ミントが青々と茂っている。
よく見ればそれは足元のみならず、エリちゃんが寝床としているであろうシェルターを中心にそれなりの範囲に広がっている。
「こいは色々と重宝するからのぅ」
色々とって、食事の彩り以外に何か使えるのか?
「ハーブティーにでもするんです?」
俺が首を捻ってそう聞くと、エリちゃんは俺の頬を指さした。
「チョーヘイは昨日虫に刺されたじゃろ?」
それは、寝ている間に蚊に刺され、まだ少し赤くなっている箇所だった。
「もう全身刺されましたよ。横にアンもいたのに俺ばっかり!」
絶対アンの方が美味いだろうに俺ばかり刺しやがって。
そう思いながらエリちゃんを見て気づいた。
彼女はほとんど虫に刺されていない。
そう言えば、奏も虫刺されの跡が見当たらなかった。
「そうか、ミントの防虫効果!」
「じゃ」
どうやら正解らしく、エリちゃんは満足そうに頷いだ。
ミントはその繁殖力から一部界隈で悪魔と恐れられてはいるが、使い方さえ間違わなければ、食べてヨシ、飲んでヨシ、乾燥させてヨシの万能ハーブ。
特に今のような文明の神通力が及ばぬ世界の果てでは、ミントのような自然を利用した知恵が最大の力を発揮する。
「本当に完璧な土地ですねここは」
「じゃろぅ?」
もうここを本格的な本拠地にするのが一番な気がしてきた。
となると出来るだけ後を見据えた施設建築が必要だな。
「まぁ、そんなに真剣にならんでも良いぞ。素人仕事で出来る事は限られるし、駄目だったら建て直せばよい」
俺を気遣ってか、エリちゃんはそう言ってくれたが、そうなるとまず必要なのは俺とアンの寝床だ。
今あるのは人が一人入れるくらいのシェルターが二つ。
エリちゃんと奏のだが、それと同じような物を俺とアン用に作るのがベターか?
若しくは、さっき言ってたように薪用の小屋を作って、当面そこを俺とアンの居住スペースにしつつちゃんとした住居を作るか?
「とりあえず、建築材料を集めてそれで何が作れるか考える事にしませんか?」
出来れば雨が降っても濡れない多少スペースに余裕のある住居が欲しいが、それが作れそうかどうかもわからないからな。
「うむ。チョーヘイがそれでよいならそうしよう」
エリちゃんは俺の意思を尊重するように頷いた。
「もし今日中に寝床が間に合わんかったら、チョーヘイはワシと一緒に寝ればよい。気軽にいこう」
「いくらエリちゃんが小柄でも二人はキツイでしょ」
魅力的な提案だが、そんな事したらまた奏が面倒になるので嫌だ。
読んでいただきありがとうございました。
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