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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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レッツゴー四匹

 さて、遭難者が四人もいるという事は、まぁ一般的にはあまりよろしくない事だが、当事者としては悪い事ではない。

 いや、遭難している事自体は最悪の一歩手前。

 崖の中腹の張り出した所に留まっているようなものではあるのだが、それでも一人で遭難しているよりは何倍もいい。

 何しろ寂しくない。

 ロビンソンでクルーソーな小説でも主人公は何より孤独を憂いていた。

 そして何より、一人で出来ない事でも二人なら出来る事る事があり、二人で出来なくても三人なら、三人でダメでも四人なら。

 ゲームだってソロプレイより複数人数でプレイした方が強敵に挑戦できる。

 もっとも問題がないわけではない。

「何見てるのよ。キモいんですけど、セクハラで訴えるわよ」

 奏が身を守る様に自分の腕で平均的な胸を隠し、下衆でも見下すようなで目で俺を見る。

 性格以外は美少女なのが実に勿体ない。

「お前にセクハラするくらいなら、正面から正々堂々アンに頭下げるわ」

 突然話を振られたアンがビクッとすると照れたように頬を掻いた。

 隣にいるのを忘れてたが、意外に嫌がっているようではないので安心した。

「そんなぁ。流石に人前じゃ恥ずかしいッスよ」

 え?

 これ、押せばワンチャンある?

「駄目よアン。いくらこの島に男が一人、こんなモヤシでも気を許しちゃ駄目よ。きっととんでもないHENTAI行為を要求されるわよ」

 奏がアンを庇う様に俺との間に割って入り腕を広げた。

 俺がどんなHENTAI行為をすると言うのかその口から聞かせてもらいたい。

 いやらしい意味ではなく後学の為に。

「ほれほれ、そんなふざけとらんでこれからどうするか、しっかり話し合わんと」

 睨む奏と見果てぬHENTAI行為を夢想する俺にエリちゃんがたしなめる様に言った。

「いやいやエリちゃん」

「私は悪くないわよ」

 俺と奏はどちらともなく「真似するな」とい睨み合い、どちらともなく視線を外した。

「とりあえず飲み水は大丈夫ッスから、次は食べ物ッスか?」

 ぐぬぬぬぬ。

 一番年下のアンが話を進めて、年上の俺達が下らない言い合いで時間を浪費させるなんて失態。

 おのれ奏。

 アンの俺の評価が下がったらどうするんだ。

「アンの意見も一理あるが、実は水の確保も十分とは言えんのじゃ」

「何故ッスか?」

 アンの質問にエリちゃんはゆっくり茶を啜ると、チラリと俺達の方を見た。

 おお、これは年上の威厳、名誉挽回のチャンス!

「それは──」

「──いくらろ過をしても生水を飲むのは危険だからですよね」

 発言を被せられた奏が睨むが無視だ無視。

「痛っ!」

 あの野郎、思い切り足の甲を踏みやがった。

 ベタな嫌がらせをしやがって。

「うむ、ほぼ正解85点じゃな。奏は何が足りないかわかるか?」

 奏は待ってましたと俺をチラリと見ると、少し考えて口を開いた。

「水を溜めておく容器!」

「……まぁ、それも必要じゃな」

 明らかなハズレに奏は俺を睨んだ。

 いや、俺関係なくね?

「ごほん。正解が水を一度沸かす燃料とそれを保管する小屋じゃ」

 ああ、なるほど、お湯を沸かすにも湿気た木じゃ火の付きも悪いし、雨の日やその後なんか苦労するのが目に見えている。

 梅雨や嵐の日に火が使えないのは辛いじゃすまない。

「それから食べ物も必要よね!」

 今度こそ汚名挽回と奏が声を上げる。

 少しズレていると思うが、エリちゃんは優しい目で頷いた。

「そうじゃのう。それも必須じゃ」

 点数を言わないのは慈悲だろうが、奏は満足そうに自慢げに俺を見る。

 が、そんな当たり前の事を言われてもなぁ。

「というわけでじゃ。皆で協力して、その日の糧を得つつ小屋作りをしたいと思うのじゃがどうじゃ?」

 エリちゃんの提案は妥当だ。

 しかし、問題がある。

「よくないわ!」

 予想通り奏が声を上げて俺を睨んだ。

「奏よ──」

 たんに俺が嫌いなのか、それとも男全般が嫌いなのか知らんが、無実の罪で俺を告訴するのは止めて欲しい。

「だってコイツ、私や杏ちゃんだけじゃなくて、エリちゃんまでいやらしい目で見る変態よ!」

 無実ではなかったが、見ているだけの健全な男子高校生の性は許してほしい。

 そして、わかっていても指摘しないで黙っていて欲しい。

 てか、しゃーないやん。

 全員個性的とはいえ、それを補って余りある美の粒ぞろいの美少女だぞ。

 これでいやらしい目で見なかったら、インポか同性愛者かの二択だ。

 ガンジーだって、全裸で添い寝させたいって言うぞこの野郎。

「絶対寝込みを襲ってくるわよ!」

「それはない」

 俺はまだ死にたくない。

 アンを襲ったところで力負けするし、エリちゃんのあの身のこなしアンと同等以上の実力者だろう。

 奏だったら何とかなりそうだが、それでもアンとエリちゃんの二人にバレた日には……

 俺の大切な黄金球が、アンが握った椰子の実と同じ運命を辿るはずだ。

「ワシもチョーヘイはそんな事をする男には見えんぞ」

 そうだそうだ、俺にそんな度胸はない。

「昨晩だってセンパイは僕に指一本触れてこなかったッス!めちゃ紳士ッス!」

 アン、ナイスアシスト!

 それでも奏は二人の言葉に不満そうに眉を顰めた。

「でも、コイツ私のマグを嘗め回してたし……」

 まだ言うか!

 てか、嘗め回してねぇし!

「マグの事はワシが悪かった。また、同じ缶を見つけたら作ってやるから気を直してくれんか?」

 うむ。どうやら奏は、あの缶の柄が気に入ってたのか?

 たしか、一部で人気なキャラクターとのコラボ商品だったか?

「わかったわよ。でも、私とそいつ二人きりにするのだけは止めてよね!」

 奏はそう言うと俺を一度睨んでから視線を外した。

 エリちゃんは安心したと少し微笑むを会話を再開した。

「ええっと、何処まで話したか──とりあえず、ある程度の生活の基盤を確保してから、これから先どうするか考えようという事じゃ」

 エリちゃんの言葉に俺達は顔を見合わせたそれぞれ考えた。

 自らの力で脱出するか、それとも救助を待つのか。

 まぁ、未来の方針どころか今日の衣食住すらままならぬ身としては、今日の寝床に当面の火の確保、食事の確保は今すぐにでも行動に移したい最優先事項ではある。

「建築組と食料調達組の二手に分かれて行動すべきと思うのじゃが」

 エリちゃんが不安げに周り、いや、俺と奏を見る。

 俺は悪くねぇ。

 そう思って奏を睨むと奴も睨み返してきやがる。

「はぁ~」

 エリちゃんが小さくため息をついた。

 やはり奏のせいだ。

「とりあえず、今から昼まで奏とアンで食料調達、ワシとチョーヘイで建築でどうじゃ?」

 妥当というか、この状況下ではそれ以外の選択肢はないか。

「OK」

「いいっスよ!」

「わかったわ」

 全員が納得し、エリちゃんは半分満足、半分安堵の表情で頷くと竹箒の穂先を短くしたような物をアン達に持たせ見送った。

「怪我には気を付けるんじゃよ~」

「わかったッス!」

「小まめに水分補給も忘れたらいかんぞ~」

「わかってるわよ!」

「センパ~イ大きいの捕ってきくるから期待してて下さいッス~!」

 ブンブンと手を振るアンに手を振り返すとその横で奏が「エリちゃんに手を出すんじゃないわよ!」と物騒なジェスチャーをしている。

 出すか!

 多分俺が負ける!

「それではチョーヘイ」

 二人を見送ったエリちゃんがクルリと俺の方を向いてニッコリと笑った」

「は、はい」

 何故か先生指名された小学生のような気分になり俺は背筋を正した。

「チョーヘイはまず何からしたらよいと思う?」

 テスト開始か?


読んでいただきありがとうございました。

ブクマ・評価してクレメンス。

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