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―6― 夢

更新状況が大変なことに!

どうしてこうなったorz

 

――『目』

 

 

――『足音』

 

 

「あぁぁああぁぁぁあぁあああぁぁあああぁあぁあぁ!!」

 

 俺は耐え切れなくて叫んだ。

 叫んだところで状況は好転しない。むしろ精神的に悪化する気がするのだが、仕方ない。これは仕方がない。

 走り続けて何分経ったのか、体感的には何時間も走り続けている気もする。

 周りは黒。地面と天井の境目が分からない。あるかすらも分からない。ただの黒。

 振り向くと紅い目玉二つ。その瞳はこちらを捉えて離さない。その眼光は直視するだけで足が震え、心臓が早鐘を打つ。

 真っ暗な前を見ていると嫌でも耳に響く足音。全速力で走り続けているはずなのに、その足音は近づくこともなく、遠ざかることもない。『相手』は歩いているのに。

 

「落ち着け、落ち着け、落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け!!……ふぅーっ」

 

 俺は全速力で長時間走り続けている。ずっと俺の出せる最高速で。何故かは分からないが、ここではいくら叫ぼうが走ろうが恐怖しようが歓喜しようが、全く疲れないのだ。

 だから恐怖で足が止まること、それが一番怖い。足が震え、心臓が爆発しそうでも、走ることだけは止めない。絶対に。

 

「………っ?」

 

 気付いてみれば、真っ黒だった空間に白の成分が混じっている。

 黒の絵の具に白の絵の具を混ぜるように、明暗や濃淡じゃなく、白が少しだけ。

 

――マズイ

 

「………ははっ」

 

 持ち前の先入観と偏見に基づいて、このまま行けば助かるかもしれないという希望が湧く。

 黒が闇で白が光。そうであるなら光は俺を救ってくれる。白は俺を救ってくれる。

 

 『相手』を『白』が、『敵』を『光』が倒す。

 

――マズイ。これは、マズイ

 

 希望は恐怖を緩和する。希望に目を向けることで恐怖から目を逸らす。それが良いのか悪いのかは分からないが、希望に目を向けずに恐怖を見ても何も変わらない気がする。

 走っていると、行く手を遮るように突然黒い壁が現れた。考えるまでもなく俺の邪魔をしようとしているな。けど、ここまで来てゲームオーバーになんてなってたまるか!

 黒い壁に向かって走る。気持ち分速度を上げて。壊せなかったらそのときだ。今は全力で拳を振るうのみ!

 

「っっっだぁぁぁぁあぁああらぁぁああああぁぁぁあぁぁあああ!!!」 

 

 渾身の力を込めた一撃はいとも容易く黒い壁を突き破った。……その壁に既視感。

 

――マズイ、マズイ、マズイ!

 

 その後も黒い壁は何枚も現れ、その度に破壊して突き進む。そうしていると、空間の色は既に白の割合のほうが大きくなっていた。

 もう少しで助かる。きっと助かる。

 

「あぁ!?もう出て来ないのか!?それともラスボスでもいんのかぁ!?」

 

 

 

 声を張り上げるのは何かを誤魔化すため。恐怖、不安、喜び、幸せ、認めたくない何か、それら以外。

 ならきっと不安だろう。『白』が『相手』に勝てるかどうか、不安要素はそれだけだ。……それだけのはずだ!

 

―― 何 か マ ズ イ !

 

「………な…!?」

 

 おそらくこれが最後。

 最後に立ちはだかるのは、あの人形。

 武器の一切を持たず、両手を広げて通せん坊のポーズ。

 ……これはなんだ。物理的でなく精神的に俺の足を止めようとしているのか?

 

「……」

 

 人形は小さい。だから横を通り抜けようとした。

 けれど人形は腕を捕んで強制的に俺の前に立ちはだかる。必然的に俺の足が止まる。

 多分、壊せる。この人形は黒い壁より脆い。

 

「―――っ!!」

 

 足音が近づき、恐怖。

 振り返ることはできない。今あの目を直視したら二度と走り出せない。

 走り出せと恐怖が訴える。急かす。殴れと。壊して走れと。『相手』が急かす。

 拳を振り上げる。

 人形は俺の目を凝視し続ける。

 恐怖が急かす。

 

「うぁぁああぁああああ!!」

 

 人形を殴り飛ばす。

 人形は半壊し。

 人形は殴られ飛んだ。

 人形は立ち上がる。

 人形は立ち上がれる。

 人形は壊れていない。

 人形を壊せなかった。

 

――………………………分からない

 

 人形の破損、治った左腕、震える両足、早鐘打つ心臓、近づく足音、紅い両の目玉、恐怖の対象、空間の白み、空間の黒み、白、黒、光、闇、『相手』、『俺』、恐怖、混乱する思考、人形の眼光。願望。

 

「う…うぁ……」

 

 急に浮き彫りになる何か。

 虚空をまさぐる思考の手。

 何かを掴み、それに縋る。

 そう決めたなら、もう迷えない。

 これ以上は迷いすぎ。

 迷いすぎたら手遅れになる。

 迷うな!もうどうにでもなりやがれ!

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

~~~

 

 

 

 目を開けると、天井が見えた。左右に首を回すと、無機質な壁が。ここはどこだ?

 地面には三角形を二つ組み合わせた、所謂六望星が描かれている。なんかおぞましいな。

 

「……お?」

 

 起き上がろうとすると、腹部に重さがある。見てみると、あの人形だった。うつぶせでビターっとしている。寝てる?

 ……ああ、そうだった。あの夢は夢だったけど、無視できる夢じゃなかった。ような気がする。だとすればあの人形はこいつで、こいつが俺を助けようとしてくれたのか。

 結局あの選択が、俺にとって正しかったのかは分からない。違う選択の先にある未来を知ることはできないからな。

 

「……ん?」

 

 さらに辺りを見渡すと金髪が見えた。どうやらこっちも同じ態勢でビターっとしている。こんな石の床で寝たら風邪ひくぞ。

 どうしようもないので起こすことにする。まず人形をゆっくり掴んで脇に寝かせる。意味はないがうつぶせでビターっと。

 そのあとで金髪の彼女の肩に手をかける「うわっ」汗まみれだった。

 

「…………まぁいいか」

 

 疲れてるようだったので起こすのはやめにする。そして何もすることが無いので俺も寝ることにした。

 


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