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目黒メグとともに依頼人の牧口伊世と待ち合わせした喫茶店に向かう。その間に八木橋はコンビニのATMにより現金を引き下ろした。先ほどの食事代は何とか一万以内で収まったので、ほっとした。メグが再び、喫茶店で大食いを始めるかもしれないので、準備しておく。


牧口伊世は、緑のブラウスと黄土色のスラックスを着た30くらいの女性だった。その顔は苦悶の表情が浮かんでいて、明らかに埴谷との関係がうまくいってないことを表していた。伊世はメグの姿をみた瞬間、顔をぱあっと明るくして、うっとりした。美しい人間を見てくぎ付けになったような反応だった。メグは相変わらず八木橋のときと同じように無愛想に彼女に一瞥をくれるだけだった。


「どうも、牧口さん。こちらが俺の今回の相棒の目黒メグです。一緒に組んで、あなたの依頼をします。それで、詳しい話をお伺いしたいのですが…


「こんな女性がそういうお仕事をしてらっしゃるんですか?すごくお綺麗ですね」


メグはそう言われても、うんともすんとも言わず、ただ小首をかしげるだけだった。八木橋に小突かれて、はじめて、「ありがとう」と小声で言った。

伊世は彼女の反応があると、明らかに嬉しがっていた。メグは女受けがとてもいい。人形のような華奢な身体と、小さな頭、スタイルがとてもいいのだ。

八木橋はこの効果を狙って、女性の依頼者のときはメグを連れてくるようにしている。八木橋だけが行くと、だいたい相手はかなり警戒してくる。八木橋の軟派な雰囲気とセックス好きな性格が災いしているのだった。なんど同じ過ちをしてきたか…。彼は依頼者とよく体の関係になり、トラブルを起こしていた。彼はとっかえひっかえ、依頼者と乱交し、親身になるほどにトラブルが多くなった。それを改善したのが、メグの存在だった。メグがいるだけで、女性達は警戒心をほぐし、八木橋は仕事として彼女たちと一線を引いて仕事ができた。まあ、八木橋はそのことをすこし残念に思っていたが、仕事がスムーズに進むことはやはり大きな変化だった。


伊世が詳細を語り始めた。

埴谷薫は最近、牧口伊世に好きな女性ができたからと婚約が決まっていたにも関わらず、別れたいことを告げられた。彼女は驚いて理由を聞いたが、埴谷は関係を終わらせることだけに終始していて、何度も謝るばかりだったという。結婚式場も決まりつつあったが、すべてキャンセルになってしまった。その後、興信所に頼んで、牧口伊世が埴谷の周囲を監視させた結果、わかったのは埴谷はかなりの女性と関係を持っているということで、そこで妊娠トラブルに見舞われているということだった。相手の女性から、責任を追及されており、その女性から埴谷が脅されているらしいことも分かった。


「ろくな人間じゃないわね。こんな男といてもあなたは不幸になるだけよ」


メグが淡々とメロンソーダを口に含みながらポツリと言った。八木橋がメグを小突くと、彼女は振り返って 人睨みした。


「でも、私はあの人が好きなんです。あの人が他の女性と関係を持っていても、最後には私に戻ってきてくれる。それだけでいいんです」


「そうですよねえ。愛してるってそういう言葉ではうまく説明できないけれど、一緒にいたいという思いですもんね」


八木橋が分かったようなことを言うと、2人の女性は彼を訝しげに見て、敵意を見せた。八木橋は気まずくなって、体を小さくしながら、話を進めた。


「それで、牧口さんはそのトラブルになっている相手と再び婚約関係になって、結婚したいと?」


「はい…。もう私は結婚すると思ってきましたから、今さら他の人と付き合ってまた一からやり直すことなんてできないんです。彼と8年間も付き合ってきたのに、こんな目に合うなんて思ってもいませんでした。できるなら、その、彼を無理くりにでも私の結婚相手として再び戻ってくるようにしたいんです」


「拷問なら得意だわ」


メグが、目を細めながら言った。アイメイクが目立つように波打つ。埴谷を無理くり拷問にまで持っていき、彼女と結婚するように宣言させることしか解決方法がなさそうだっだ。


「とても、痛めつけることになるかもしれませんが、相手に同意を促す事はできると思います。もし、俺たちが埴谷さんを再び牧口さんの結婚相手として戻らせることができなければ、今回いただいた契約金は全額お返しいたします。また、埴谷さんとその後険悪関係になったり、関係が破綻した場合、俺たちはそこまでの責任を取れませんので、ご理解いただきますようよろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


伊世はその瞳を不安そうに揺らしながら頭を下げた。


牧口伊世と別れて、メグと再びファミレスに入る。

彼女はドリンクバーを頼むだけで、食べ物を注文することはなかった。八木橋もメグと一緒にドリンクバーを頼んだ。


「それで、埴谷の行動パターンを把握したいんだけど、メグはこの1週間暇?」


「暇ね。特に予定はないわ」


「それじゃあ、俺と一緒に埴谷を張り込みするよ。

ずっとだから、大変だろうけどちゃんと目立たない格好で来るんだ」


八木橋がその部分だけ声を大きくして言うと、メグは深い溜息をはいて、はいはいと返事した。

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