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魔女のドウヨウ  作者: Nui
2/10

ゲーム同好会

 講義が終わり、ぞろぞろと教室から人が出るのを横目にゆっくりと荷物を片付けていく。人も少なくなってきた頃、鞄を持って立ち上がる。そしてゆったりと歩いて行く。皆が正門へと行く波から密かに外れ、建物の奥へと進んでいく。話し声も小さくなってきた頃、大きな笑い声が聞こえてきた。


「ここからでも聞こえるとか、どんだけ騒いでんだよ」


 文句を言いつつ、口角が上がるのを感じる。少し駆け足気味に目的地へと歩く。「ゲーム同好会」という看板が小さく掛けられている扉に手を伸ばす。そして思いっきり扉を開けた。部屋の中には俺以外全員が揃っていた。大きく表示さたれた画面の前には机があり、コントローラを持った3人。ゆーさんこと悠也さん、このゲーム同好会の最年長で、頼れる適当お父さん。その隣にはれーさんこと蓮さん、人見知りのくせに関西弁毒舌のツンデレ。そして智哉、オカンの1言に尽きる。


「あっ!(はる)〜!助けて!皆がいじめてくるよぉ」


 ……今俺に助けを求めたのが優真、芸術肌でドMの気配り屋。実は一緒にいる歴はこいつが一番長い。だからこそ容赦がなく言えるのだ。優真もそれで嬉しそうだからいいのだろう。


「うるせぇ!クネクネしながら言うな!」


「ああん、悠が冷たいっ!」


 頬に手を当ててクネクネと動く優真。オネェも入ってるから救いようがねぇ……。それを微笑ましく見ているのが2人。りょーさんこと(りょう)、女子からもてはやされるイケメンで動物が好き、でもビビリ……もったいねぇな。そして隼、ニコニコでふわふわとしたやつだがこいつはサイコパス。本当に個性の塊しかいないな。


「優真くんが調子に乗らずちゃんとすれば勝てたのにねぇ〜」


「優真の自業自得なのにね〜」


 ゆーさんと隼が笑って話す。おもむろにゆーさんが立ち上がり、バインダーを取り出した。


「はーい、悠さ〜ん。元気ですか〜?」


「ちょー元気!」


「元気でなにより〜」


「悠くんはいつも元気やねぇ」


 手を挙げて返事をすれば、れーさんは嫌味っぽく言いながらも優しそうに笑っている。そして頷いてバインダーに何かを書くゆーさん。初めはこんな事なかったのだが、俺がポロッと学生感がないと言ったことが始まりだった。次の日にはゆーさんがバインダーを持ってきて、一人一人名前を呼んでいった。毎度思うが俺を甘やかし過ぎではないか?大学の空気感に慣れず疲れていただけなのに、まさか全員巻き込んでするとは思わないだろう。これ以上ニヤニヤしていれば、れーさんあたりに気味悪がられるので止めておく。何のゲームなのかとゲーム画面を見る。しかし勝利が決まっている画面では分からない。なので机の上にあったパッケージを見れば「連鎖できるかな?」と1言。中々に怪しげなゲームだ。疑問に思っていることを理解したのだろうりょーさんがニヤニヤして話しかけてくる。


「面白そうだろ?1回やってみろよ」


「このゲームの面白さに悠は気付けるかな〜?」


 隼もニヤニヤとした笑いのまま話す。サイコパス感が増してやばい。まぁ確かに説明されるより、実際にしたほうが理解はしやすい。ならばするかと思えばコントローラが差し出された。差し出したのは優真。


「俺の敵をとってくれ〜悠♡」


「ハートを飛ばしてくんな!しかーし!憐れな優真のためにいっちょやってやるか!」


「流石悠♡カッコいい〜」


 だからハートを飛ばすな!と叫べば優真は大人しく後ろに座った。ゲーム画面を見ようとすれば、微笑ましくそうに見られていることに気が付く。途端に恥ずかしくなり、さっさとするぞと言えば元からコントローラを持っていたゆーさんとれーさんと智哉はしっかりと座って始める準備をした。そして操作方法だけを聞いていざ始めた。……だが、数分も経たずに俺は叫ぶ。


「いや、ぷよぷよじゃねーかよ!著作権どうした!?」


 こうなる事が分かっていたかのように周りが笑い出す。れーさんは手が震えていて、ゆーさんに至っては笑いすぎて咳き込んでいた。そんな状態の中優真が俺を宥める。


「まぁまぁ、ぷやぷやだからセーフセーフ」


「思いっきりアウトだわ!なんだぷやぷやって!」


 そのツッコミにまた笑いが起こる。隼なんてアヒャヒャと笑い、りょーさんは人間じゃない笑い方をした。


「本当、酷い買い物したわ〜」


「これ買ってきたのれーさんかよ!」


「ちゃうねん!安かったし、店員さんが勧めるから買ってみただけや!俺のせいやない!」


 誰も責めていないだろと笑う。すると笑いから復活した隼が不思議そうに話し始める。


「いや〜でもこのゲーム不思議だよ?なんか起動した瞬間ストーリーがあったんだけど、ゲームとなんも関わりがなかったんだよね」


 どんなストーリーかと聞けば、覚えてる限り教えてもらえた。

 とある女の子はある子に好意を寄せた。しかしその恋は許されないものであった。だからこそ女の子は隠して普段通りに接した。だが隠してきた感情は大きくなり、やがて姿を得た。それは女の子と全く同じ姿であった。感情は女の子という存在を奪い自由を得た。動けるようになった感情は好意を寄せたあの子に近付く人全員を殺した。やがて女の子は好意を寄せていたはずの子ですらも手をかけた。女の子はその子の亡骸を抱いて自分の屋敷に帰り、自分のものにした。

 ――というストーリーだった。なんだか不思議で悲しいストーリーだ。


「んで?その後どうなったんだよ」


「それが……いきなり画面が変わってぷやぷやって出たんだよね」


 隼は首を傾げながら画面を見つめる。ふと視線を感じて後ろを振り返る。しかし後ろには優真しかいない。気のせいかと前を見ようとした瞬間、優真の顔がはっきりと見えた。優真は何故かとても悲しそうに俺を見ている気がした。俺はどうしてかそれがとても恐ろしく感じ、紛らわせるために話しかけた。


「優真、お前なんでそんな悲しそうにしてるんだよ」


 話しかけられたことを知った優真はハッとした後、いつものヘラリとした顔になるが、また悲しそうにして胸に手を当てた。


「だって、凄く可哀想だなって思ってさ。好きっていう感情を隠したあげく、その感情によって好きな人を殺されるなんて……俺だったらそんな現実受け止められないなって……」


 優真は芸術肌だから、こういうストーリーには感情移入してしまうのだろう。よくあることだ。少し不気味だが、ゲーム自体に何かあるわけでもなさそうだ。ならば気にしないでおこう。切り替えてゲームを楽しむ。しかし、したことあるゲームのパクリなのですぐに新鮮感はなくなった。


「ほんま、変なもん買ってもうたわ」


「蓮はそういうの多いな」


 りょーさんがニヤニヤとしながられーさんをいじる。でも確かにれーさんが買ってきたものは意外と変なものが多い。そういうものを引き寄せる何かがあるのかもしれない。普段通り遊んでいればもう外も暗くなってきた。するとゆーさんが声をかける。


「もう暗いから帰った方がいいぞ~。近いとはいえ危ないからね~」


「そういう悠也さんも帰った方がいいんじゃないですか?危ないのは悠也さんも一緒ですよ」


 智也が心配そうに言う。流石オカン。年上であろうが発動するとは……。っていうか、そういえば。


 「ゆーさんっていつここに来てるんだ?前忘れ物を取るために朝ここ来たら、いたんだけど。講義とか行ってんの?」


 ゆーさんは一番年上と言うこともあるのか、帰りは俺たちが帰るのを見送っているのを見ているし、朝に来たとしてもいる。一体朝から何をしているのだろうか。


「あれぇ、言ってなかったっけ?俺ここに泊まってんだよ」


「はぁ~!!?」


 ゆーさん、りょーさん、れーさんの年上組以外が驚いて声を出す。泊まるって宿泊のことだよな。なんで!?許されるの!?ゆーさんだけずるい!とそれぞれが文句を言えばゆーさんは苦笑いをしながらも落ち着けとなだめる。


「というか知らなかったんだな。俺てっきり知ってると思ってたわ」


「偶にここで寝るって言っとったやん」


 いやいやいや!それはその場のノリ的な感じで行っている物かと思ってたわ!だからいつ行ってもいたのかよ。本当に謎な人だ。そんなほんわかした雰囲気で言っていいものなのだろうか。というより……。俺たちは目を合わせる。


「俺らも泊まりたい!」


 そんな面白いことがあるのにのうのうと帰っていられるか。楽しまなければ損だろう。するとゆーさんはへらりと笑って了承した。


「別にいいよ~」


「いや、あかんやろ!そもそも何も持ってきてへんやろ」


 しかしれーさんが制す。ブーイングを四人ですれば頭を抱えるれーさん。なんやかんや常識人のれーさんには頭が痛くなることらしい。だがやりたいものはやりたい。いるものも取ってくればいい。実際20分もあれば取りに帰ることは可能なのだ。もう子どもでもないのだからいいじゃないか。などと叫んでいればれーさんが折れた。


「もー!しゃあないな!今回だけやで!」


「よっしゃ!さすがれーさん!」


 そうなればと四人で目を合わせ、いそいそと家へ帰る準備をする。わくわくする気持ちのまま準備をしていれば、後ろで呆れたようなため息が聞こえる。それを笑いながら聞き流す。


「じゃあ、また後でー!」


「はいはい、怪我すんなや~」


 第三のオカンみたいだな。でもれーさんはどちらかと言えばお母さん感が強いよな。なんて話しつつ歩いて行く。ふと夜空を見上げる。まだ街は明るいが、意外にも星はよく見えて美しい。俺はその美しさに当てられて言葉を発する。


「このまま楽しい時間だけが続けばいいのにな」


「なんだ?またしんみり悠か?」


「毎度思うけどしんみり悠ってなんだよ。……いや深い意味はないんだけど、今が幸せだなって感じるから終わって欲しくないって思うんだよ」


 ずっとこのままこの七人で遊べたらいいのに。なんて思ってしまう。三人とも笑ってそうだなと一緒に空を見上げる。ただ優真だけが少しだけ悲しそうに空を見上げている気がした。またあいつは感受性が働いてしまったのだろう。芸術肌というのも少し考え物なのかも知れない。実は俺たちの家は本当にすぐ近くだ。用事があれば窓を開けて叫べば事足りる。それぞれの家に着いて準備をし始める。両親には適当にサークルの人と遊ぶと行って部屋に行く。どうせ七人も揃えば静かに寝るなんてできないだろう。そういえば……。窓を開けて叫ぶ。


「優真ー!!」


 少ししてカーテンが開き、優真が窓を開けた。


「どうしたの?」


「優真さ、最近ゲーム買ったって言ってなかったか?それ皆で遊べないのか?」


「あー……、ちょっと待ってね」


 そうして優真は部屋に戻った。俺は準備がもうほぼ終わっているので窓で優真が出てくるのを待つ。すると案外にも早く顔を出した。


「あったよ。四人用だけど大丈夫だよね」


「おー、いいじゃねぇか!遊ぼうぜ」


 優真の選んでくるゲームは大体とても面白い。流石芸術肌だな、とさっきの言葉を忘れて心の中で褒める。実際に褒めるとくねくねしてハートを飛ばしてくるからしてやらん。わくわくが増えて笑顔になれば、優真も幸せそうに笑った。準備が終わったというので部屋から出て優真を待つ。ほぼ同時ぐらいに家から出てきた。荷物を確認していれば隼と智哉も出てきたのでまた大学へ戻る。なんだかこんな時間に大学へ向かうことがなかったので楽しい。ぞろぞろと引き連れてゲーム同好会の部屋に帰ってくる。すると一人居ない。


「ただいま~。あれ?りょーさんは?」


「おかえり~。怜なら晩ご飯買いに行ってるよ~。よかったね。今日は俺たちのおごりだよ」


「えっ!まじ?よっしゃー!」


 ゆーさんが手をひらひらしながら話す。嬉しい事実に四人揃ってごちになりまーすと感謝する。そうして準備したものを端っこに片付けていれば通知音が鳴った。誰のだと思えば、れーさんだった。れーさんは携帯を見て不思議そうにしながらも扉の外に出た。するとれーさんの驚いた声が聞こえたかと思えば、不思議そうな顔をしたままコンビニの袋らしきものを持って帰ってきた。そして俺たちの方を見てなるほどと呟いてニヤニヤとした。


「悠くん達、怜に感謝しなね」


 何のことだ?他の三人を見ても心当たりはないようだ。一体何があるというのか。すると開けられたままの扉から大荷物のりょーさんが入ってきた。なんだと思いつつも持とうとすると大丈夫といいそのまま床へ置いた。


「あー、疲れた。すれ違う人全員に変な目で見られたわ」


「りょーさん、なにこれ?」


 持ってきた物を見れば大きな薄手の毛布とマットレスが二枚ずつある。


「お前ら、ここに泊まるのは構わないが寝ること考えてなかっただろ。どうせなんも持ってきてないだろうから家から取ってきたんだぞ」


 呆れ顔のまま俺らを見るりょーさん。確かに俺ら泊まれることが楽しみすぎて何も考えてなかった。本当にそういうところはイケメンなのだから困るのだ。そして智哉が申し訳なさそうに誤る。


「え……申し訳ないです。すみません、もう少し考えて行動するべきでした」


「おー、寝床の確保はゲームの基本だぞ」


 りょーさんの冗談でまたほんわかとした雰囲気に戻る。これだから先輩というものは凄いのだ。ありがとうございますと改めて感謝を伝える。すると優しく笑っていいからと言った。先輩に恵まれて良かったと実感した瞬間だった。そして元の雰囲気に戻って優真のゲームを見る。パーティゲームのようで、鬼から隠れつつ任務をこなすというゲームだった。これは楽しそうだ。やはり優真の持ってくるゲームに外れはない。早速してみることにした。始めは俺とゆーさん、りょーさん、れーさんでしてみることにした。持ってきた本人が初めにしなくていいのかと聞いたが、優真はどちらかと言えばゲームをするより見ていたい派らしい。そのため譲ってもらえた。ならば遠慮なくするほうが向こうも助かるだろう。電源を付けて始めていく。ゲームタイトルが流れ、説明が始まる。


「って俺達猫かよ!」


「あれぇ〜これは、なかなか難しいことになりそうだなぁ〜」


 まさかのゲームをするにあたって操作する対象は猫だった。好きな色を選んだお陰でカラフルな猫たちの誕生だ。しかし猫ということで物を引っ張るということができなかった。ゆーさんの言う通りこれは中々難しい。


「あ、でも猫やから高いところに行くんは楽やね」


「おぉ、確かに」


 人間なら到底届かないところも猫だから届く。しかも着地するダメージがない。これは中々よい。というか鬼って子どもかよ。難易度も難しくなく、のめり込むにはたやすかった。この四人はゲームが上手い組なので一面もすぐに終わった。そしてやっていない三人に交代する。俺たちは誰がもう一度するかと話し合う。するとれーさんとりょーさんがニヤニヤと笑う。


「悠くん、行きな。同級生組の絆見せてみーな」


「それは見物だなぁ」


「仕方ねぇな!見せてやるよ!」


 ということで俺がもう一度遊ぶことに。ちなみにこの間ゆーさんは後ろで微笑んでいた。いやお父さんかよ。そしてもう一度ゲーム画面を見る。操作を教えつつ任務をこなす。一度見ていたからスムーズに任務は完了し、二面が終わった。


「見たか、りょーさん、れーさん!これが10年以上一緒にいたことによる絆だ!」


「1回見てるからアドバンテージがあるだろ~」


「ほんまや、ほんまや」


「そこは素直に褒めろよ!!」


 大人になると人を褒められなくなるなんて悲しいものだ。などと茶番を入れつつゲームを進めていく。途中難しすぎる任務があったが、ゆーさんが一人で全てこなした。かと思えば落とし穴に引っかかって落ちていった。そんなことをしつつ段々深夜と呼ばれる時間になっていた。ゆーさんと隼はあくびをして眠たそうだ。


「俺もう眠たい~」


「俺も~」


 まぁ、もう1時半だもんな。外は真っ暗で、星が見える時間帯だ。そろそろ寝るかと寝床の準備をする。年上組は寝袋で寝るみたいだ。そして俺たちはよく一緒に寝ているからか順番も決まっていて、右端から俺、隼、優真、智哉となっている。おやすみと誰かが言って部屋が暗くなる。真夜中の大学は不気味だと勝手に思っていたが、今は凄く楽しい。誰かの寝息が聞こえてくる。俺は楽しい気持ちが収まらずまだ眠れない。そのため何度か寝返りを繰り返す。すると寝袋から声がする。


「眠れないのか?」


「りょーさんも?」


「……そんなもん」


「そうなんだ」


 静かな中声を小さくして話す。でもりょーさんが嘘をついていることは知っている。前にりょーさんはいつでもどこでも一分で寝るって言われていた。本人もそう言っていたのを聞いた。それに眠れないという割には小さくあくびをするりょーさん。俺が眠れてないことを知って起きたのだろう。つくづく優しい人だ。だから俺はその優しさに乗っかる。


「りょーさん」


「ん」


「今日、楽しかった?」


「あぁ、楽しかったぞ。なんだ?悠は楽しくなかったか?」


 即答したことがなんだか面白くてクスクス笑う。夜だからか優しい声で話すりょーさん。なんだか新鮮でまた楽しい。


「俺も楽しかった。だから寝られないの」


「遠足前の園児かよ……でも分かるな~。楽しいって思ったらアドレナリンとか出て全く眠れないよな」


 りょーさんもふっと笑っている。そしておもむろに立ち上がったかと思えばこちらに来て横に座った。暗いから表情は分からないけれど、行動からきっと優しい顔をしているのだろうなと思う。後ろで微笑むゆーさんみたいに、包み込んでくれる表情。今度は手を伸ばしたかと思えば、俺の頭に手を乗せた。


「ほら、明日も講義なんだからさっさと寝ろ」


「りょーさんってばお母さんみたい」


「あんた、またこんな時間まで起きて……お母さん知りませんからね」


 渾身のボケを披露して貰って笑う。ちょっと昔ながらのお母さんって感じだな。凄く面白い。もし夜じゃなかったら大爆笑をしていたことだろう。未だに笑っていれば、りょーさんも笑った。


「ったく、笑ってないで早く寝ろ」


「りょーさんのせいじゃん」


 はいはいと流されて頭を撫でられる。声や表情、行動は優しいのに言葉だけりょーさんだ。そういえば頭を撫でて貰うなんていつぶりだろう。なつかしい。心は穏やかになって自然に目を瞑る。なんだかいい夢が見られそうだ。撫でている手が動くのを横目に意識が落ちていく。そして微睡みの中、とても優しい声でりょーさんは言った。


「いい夢見ろよ、悠」


 うん、きっと楽しい夢が……見られるよ。

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