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寒がり聖女と巻き込まれ系辺境伯の婚姻~溺愛の方は努力するんで、ざまぁフラグは回収しなくてもいいですか?~  作者: 砂臥 環


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㊵微妙だが確実な変化

 

 マジョレーヌの事情は本人を通さず、別邸との非常用交信機(モニター通話)で父から聞くことにした。


 本当はエディトとマジョレーヌを会わせてやりたいところだが、転移陣は魔石をふんだんに使うのだ。母に『経費で落とさん、私費で賄え』と言ったのは、怒りからだけではない。まあ怒ってはいる、今も。

 アーデルハイドの処遇(軟禁)に父は反対をしたが、元々こちらに来る予定だったこともあり、そう強いものではなく。苦笑いを浮かべて『ゲルトルートの家へやれ』と代案を持ち出した。確かに、もう首も据わった三人目の孫に対面すれば、こちらにはちょっかいを出さないだろう。


 尚、交信機もそれなりに魔石を使う為、『非常用』なのだ。通常は余程のことでなければ手紙でのやり取りになるが、王族(カールハインツ)を拾った時点で『余程のこと』は起きている。


「だから公私混同ではありませんよ」

「なんで言い訳してるんだ? 全く、お前はいちいち細かいよな……」

「父上に似たのです」


 実際ユリウスは完全に父似。

 今は体躯も立派で滅法強いルートヴィヒだが、それは彼の努力の賜物。アーデルハイドがああなので、能力を補填する意味もあって選ばれた当時の彼は、文官肌の今よりもっと線の細い男だった。それでもユリウスくらいに筋肉はあったけれど、辺境騎士団では細い部類だったのは間違いない。


 話が逸れたようだが、実は逸れてもいない。

 ユリウス程器用で温和な性格ではないが、ルートヴィヒは威厳があるだけでなく、慎重でもあり、普段は寡黙ながらも交渉や尋問にも長けている。

 意外にも頑なで、話をしている風で肝心な部分をぼかそうとするマジョレーヌだったが、この父に任せたからには全てを白状させられているだろう──そう思っていたのだが。


「あの娘はなかなかだよ。 まだ正確なことを言っていない。 押せば聞けただろうが想像はついたし、怖がらせるのも不憫でな。 まあ第三王子殿下がそちらにいるなら丁度いい、おそらく──」


 父が話した想像は、『王子妃としての覚悟』というよりも、カールハインツへの愛情を感じさせた。


 彼女が実際に話したことも、終始『あくまでも自責である』という姿勢で、カールハインツについては『令嬢達の悪意から守ろうとしてくれた』など、自分に良くしてくれたことしか語らなかったそう。

 それでも王家の呪いについては話してくれたようだった。

 曰く、『その部分で彼女が頑なだったのは、王家のことだから』であり、王家への恭順を示して『いいように図らう』と促せばそう難しくはなかったと言う。


「まあお前に女性の心の機微を察しつつ、原因を取り除くような気の利いた会話をしろ、というのは無理かもしれんがな……」

「ぐっ……! 父上だって全部聞けてないじゃないですか!」

「馬鹿な。 聞けてないのではなく、聞かないでおいてやっただけ。 それこそ女心への配慮だとわからんあたり、どうしようもない」


 呆れてそう言われては、反論の余地もない。

 しかし威厳がある、というのは頼れるだけの包容力がある、ということでもある。ユリウスは逆の要素で強面への尋問は得意な方なので、仮に父と同じことを話しても同じ結果になったかは不明。


 父はヘルミーネにも、軽いお叱りついでに事情を聞いてくれていたが、ユリウスには内容を伝えず『家に帰した』とだけ。『そのうちエディトへの謝罪の手紙がくるだろう』とのこと。


 それはさておき。

 なんとなくマジョレーヌのこれまでの経緯(いきさつ)は把握したユリウスは、エディトに全て伝えることにした。

 第三王子が誠実であれば少し内容が変わるであろうことやマジョレーヌの存在をまだ隠すことから、現時点で『話さない方がいいのでは』とも思ったものの、エディトのこれまでやヘルミーネと会話などから、彼女は思うところがあっても感情的に振る舞って相手に隙を与えるようなタイプではない、と充分わかっている。逆になにを考えてるのかよくわからないところが危険、とも言う。

 ならば、話して注意点を挙げた方がいいだろう。


(そういえば、感情的になったのは今日くらいだな……まあ母上が煽ったのもあるだろうけど)


 基本、エディトは大人しく、いつもニコニコしている。(表では)

 普段の生活では特に無口でもないが、お喋りというワケでもなく、どちらかというと聞き役に回る方。

 大概のことはなんでも喜ぶし、不満をあらわにもしない。質素倹約(清貧)の神殿生活で育ったからか、与える物は煌びやかな服飾雑貨などより、生活に直結する消耗品の方がなんとなく嬉しそうにするくらい。(単純にお洒落に興味がない)


 ユリウスが勘違いし続けられただけあって、余計なことをしなければエディトはむしろ、彼の理想としていた『嫋やかな妻』である。


 だが実はそれこそが『何考えてるかよくわからん』という、ヘタレなユリウスが関係を先に進めるにあたり躊躇する原因のひとつだったりする。理想と現実は違うのだ。


 怒ったし焦りもしたが、今改めてユリウスはハッキリ悋気を示されたことが嬉しく、面映ゆい気持ちになっていた。


(なんだかんだ、別邸でのエディトはいつもより楽しそうだったし……意外にもアクティビティが好きなのかも。 まあ神殿生活じゃ本人も気付いていなかったことなのかもしれないけど)


 落ち着いたら、また一緒に出掛けてみよう。


 彼には珍しく、煩わしい問題を目の前にユリウスはそんなことを考えていた。



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