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寒がり聖女と巻き込まれ系辺境伯の婚姻~溺愛の方は努力するんで、ざまぁフラグは回収しなくてもいいですか?~  作者: 砂臥 環


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㊱第三王子の回収──もとい、保護

 

「……王国の輝く星、第三王子殿下にご挨拶」

「いや……そういうのは。 身分を明かしたのは最低限の礼儀としてのこと。 お手数をお掛けする」


 傲慢なボンクラかと思いきや、若輩な上に顔立ちからも舐められがちな自分にも丁寧。その意外さに、少なからず驚く。

 逆に目的に不安を感じるが、この場で問い詰めるワケにもいかない。


「お寒いかと存じますが、尚更移動をお勧め致します。 この時期は賊も来ない程、危険なのは寒さ。 馬車でお待ち頂くよりも馬の背の方がまだマシかと」

「わかった、そうしよう」

「なるべく早く戻り、こちらへ迎えを。 くれぐれも轍から逸れぬよう……もし雪で見えなくなるようでしたら、そこで待機なさってください」

「承知した」

「では」


 深く頭を下げ一礼すると、ユリウスはまたソリに乗る。色々な可能性が頭を過ぎるが、まず気になったのは──


(全然似てないじゃないか! 金髪イケメンって共通点くらいしか!!)


 街で見た男である。


 今振り返ると、なんであの男が第三王子だと思ったのか自分でもわからないくらい、似ていない。美形度が全然違う。

 まあ、そりゃそう。他人なので。


(結局アレは誰だったんだ……!)


 ずっと煩わされているが、アレは真っ赤な他人であり、通りすがりのイケメン平民……つまりメタ的に言うところの『何故か顔のいいモブ』。なので誰も知らない。


 そこの誤解は依然として解決しないが、誤解の根源である本物がやってきたからには、まずはそちらからだ。

 なんせ王族の癖して、無謀にもお忍びでやって来た事実が重い。


(しかもアレ、無断だろうなァ)


 一人しか伴も付けず、しかもあの体たらくである。まさしく『忍んで出てきた(※王宮の者にも)』としか考えられない。


 彼の態度、それにマジョレーヌの痣や騎士の『殿下も大事にしてくれていた』と匂わせる言葉から、『マジョレーヌを探しに』か『マジョレーヌの痣を治しに』、或いはその両方でエディトを頼って来たのだろうな……とは思うけれど。

 それでもまだ『廃嫡から逃れる為にエディトを取り返しに』など、悪い可能性が消えたワケではないのだ。


 エディトの機嫌は気になるが、流石に嫁を優先している場合ではない。





 ようやく邸宅に着くと、門兵に警備隊長を呼びに行かせた。


「お帰りなさい、ませ……」

「トマス」


 アーデルハイド側の思惑に乗っかるつもりで出てきた、嫁との距離感をさっさと縮めてほしいムキムキ有能家令トマスは、ユリウスの様子から『なにかあった』と察し、語感を弱める代わりに威厳のある片眉をピクリと上げた。


「旦那様」

「来たか」


 そこに警備隊長のフォルクマーが合流すると、ユリウスは声を潜め指示を飛ばす。


「第三王子殿下がこちらへ向かっている。 お忍びで来て雪にやられたようだ、すぐ保護に向かう。 トマスは邸内への指示、フォルクマーは保護の準備を」

「「!」」

「殿下の他、護衛と馭者、馬車は二頭立て。 凍傷の様子はないが軽度の想定で動け。 各所に箝口令を」

「「御意」」


 フォルクマーはソリの準備と毛布、それに温かい飲み物と行火(あんか)。そして厩舎に二頭分の場所を用意。

 トマスは客人の部屋と湯あみの準備、次いでもてなしの食事と医師の確保。


 それぞれ箝口令を敷きながら動き、指示を出す。こういう時、細かい指示を出さなくていいだけの人員の厚さは有難い。

 ユリウスは迎えの準備が整うまでの間に、母と嫁がいるというエディトの部屋へ向かった。


「母上、エディト」


 中で待ち構えていたのはアーデルハイド。


「フン、ようやく来たか」

「エディトは?」


 エディトはアーデルハイドの指示で、今しがた『私傷付きましたわ~』演出としてベッドに潜り込んだばかり。


「可哀想に、憔悴してしまってな……」

「……」


 この母は残念ながら演技が下手である。『可哀想』などと吐かしながら、ワクワク感が滲み出ている。


 絶対嘘だ──そう思ってユリウスはイラッとしたが、苛ついている場合ではない。


 アーデルハイドを押し退けるように続き間の寝室へ行くと、乱暴に布団(キルトケット)を剥いだ。


「ひゃっ?!」


 片手でエディトを担ぎ上げると、空いた方の手でクロゼットからコートをハンガーから毟るように取り出す。


「だだっ旦那様っ?!」


 想定外の行動に目を白黒させつつも、どうしていいかわからず、ほぼ無抵抗に担がれるばかりのエディト。


「ユリウス?!」


 そして紳士的へタレの息子の紳士的でない行動が意外すぎて、度肝を抜かれた母アーデルハイド。


 咎めるように名を呼んだ母を無視し、その前を通り過ぎると扉を足で蹴り開け、ユリウスは冷たい視線を向けて言う。


「転移に使用した魔石は経費として計上不可、母上の私財から賄って貰いますので」

「え……」

「では」

「ええぇぇぇぇ?!」


 ユリウスは、アーデルハイドも迂闊に逆らえない最古参の厳しい侍女長に『母を客室に閉じ込めて出さないように』と言い付け、足を早める。これは怒っているからではない。まあ、怒ってはいるけれど。


 まずやるべきことは王子の回収──もとい、保護。

 ただ、別邸にはマジョレーヌもいる。


(役者が揃い過ぎ(・・・・)だ)


 これ以上、勝手なことをして貰っては困るので、エディトは連れて行く。


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