聖 女 無 双?③
すいません。
次の次ぐらい(+α)で終わらせます。
無駄に長くてすいません。
女性蔑視(?)や、女性が不快に感じる表現があります。
ご了承下さい。
「私的には三つ目の理由……原因の方が重要なので、お伝えしますね!」
そう言って一区切りし、本日何度目かの『パフェを取りに行って戻ってくる』って動作をした後、俺の横で再び頬張り始める聖女ちゃん。
頬張り始める前に一瞬見せた切ない表情はどこか儚げで、とても美しく見えた…。
───どうやらこれが本当に最後のパフェだったらしい。(いや、まだ食べ足りないのっ!?)
俺の心の声など気にもせず、噛み締めるように咀嚼を繰り返し、聖女ちゃんは話を続ける。
「三つ目の理由…。それは貴女たち女性陣が『“貢物”』としての自覚が余りにもなさすぎるからです!」
聖女ちゃんのその言葉に、俺も含めた全員が暫くのあいだ固まる。けれど、段々と言葉の意味を理解していって……。
「はぁああッ!? 何それっ!? 貢物って…。 一体誰の──」
「勿論。勇者さんの! に決まっているじゃないですか」
「「「「なッッッ!?!?!?」」」」
目を見開き口も大きく開けたまま、顔を林檎みたいに真っ赤にしながら驚く四人。
斯く言う俺自身がめちゃくちゃ一番驚いている。
えっ、聖女ちゃんや剣聖達が貢物? それってつまり……アレだよね? よく物語とかで偉い人や権力者。支配者とかに『これで何卒…!!』みたいなアレだよねっ!?
困惑と動揺のあまり狼狽えて、咄嗟に近くにあったフルーツ盛りの中からバナナを一本手に取り「そんなバナナ…」と呟いてしまう。それを聞いた剣聖達はしらけ顔で俺を見ていが、聖女ちゃんだけは愛おしい我が子を見守る、聖母の様な温かい目で微笑んでいた。
やめてっ! その優しさが今は逆に堪えるからッ!!
今度は俺が剣聖達と同じ様に、耳まで真っ赤にして両手で顔を隠すと、聖女ちゃんが俺の頭をとても優しくポンポンとして、話を続ける。
「では改めて。貢物……と言うより【人身御供】に近いですね。と言っても、別にそこまで悪い意味ではありません。そうですね、この際だから真実をお伝えしましょう!」
そう言って俺の頭を愛情深く丁寧に愛撫をしながら、空いているもう片方の手で人差し指を立てる聖女ちゃん。(恥ずかしいのに…。情けないのに…。でも気持ち良い…)
「実は元々この勇者パーティーは、勇者さんの為だけに用意された『“勇者専用ハーレムパーティー”』だったんですよ」
「「「「「「……うえぇええええッッ!?!?」」」」」」
聖女ちゃんが唐突に告げた驚愕の真実に、俺達全員で声を大にして驚く。
俺は馬鹿みたいに口を開けて呆けた顔で、隣でずっと頭を撫でてくれている聖女ちゃんを凝視する。
聖女ちゃんはニコッと、聖母を超えた…女神の様な微笑みで、俺を見詰め返してくれていた。
今度は違う意味で顔を紅潮させてしまう…。
時間にしてほんの数秒だけど、俺と聖女ちゃんの間になんとも言い表せない、甘ったるい雰囲気が漂っていた…。
そんな俺達を見て剣聖が「面白くないッ!!」とでも言いたげな感じで、声を荒げて割って入ってくる。
「何よそれっ!! 意味分かんないッ!! 結局は私達は全員、勇者の慰み者だったって事!?」
「はい。だからそう言っているじゃあないですか」
「んなっっ!?!?」
しれっとそれが当たり前の様に返答する聖女ちゃん。そしてそれを聞いた剣聖がまた驚く。本日何度目だろう? このやりとり…。
「順を追ってお話ししますね。この世界には千差万別、幾つものスキルがあります。そして同一のスキルが複数同時に存在する事も確認されてもいます。ここまでは一般常識ですが……宜しいですよね?」
改めて常識的な事を確認してくる聖女ちゃん。
これは田舎育ちの俺でも知っている、周知の事実だ。
この世界で生きている人にとって、当然の知識である。
───なのに…。
「そっ、それぐらいは知っているはよッ!!」
(あれ? そうだったっけ…?)
「あまり私達を愚弄するなよ…ッ!!」
(いま知ったとは言えないな…)
「バカにし過ぎだしっ!!」
(へぇ〜。そうなんだぁ〜。)
「うん。舐めるのも大概にしてほしい…!!」
(良かった。この前、復習しておいた範囲だった…)
「おう! 阿呆でも分かる常識だよなあッ!!」
(なんで俺様以外の全員、こんなに頭良いんだ…!?)
と俺でも見透かせる程の心の声をダダ漏れさせて、強気で返す面々。チラッと聖女ちゃんを横目で見てみれば、
『コイツら…嘘やろ…? 本当に人間か…? 人の皮を被った猿とかじゃないよな…? それとも別のナニカか…?』
って如何しようも無いぐらい、心底呆れ果てた顔で…それと同時に得体の知れない恐ろしい生き物を見るかの様な眼差しで、剣聖達を見ていた。(気持ちは分かるよ…)
聖女ちゃんは軽く咳払いをした後、話を戻す。
「んんっ! …続けます。他と比べて確かに希少ではありますが、【剣聖】や【弓聖】のスキル…。残念ながら、私の【聖女】のスキルでさえも複数同時に存在する事が確認されています。実際に私も、私以外の【聖女】のスキルを持った方を一人知っております。とても悔しいですが…」
本当に残念そうに…悔しそうに唇を噛んで、一瞬だけ顔を歪める聖女ちゃん。ちょっと不謹慎だけど、その苦悶の表情さえ俺には美しく見えて、かなり愛らしく感じた。
「ですが【勇者】のスキルだけは別です…。別格です!! 【勇者】のスキルは唯一無二…。どの時代にも、この世界に必ず一人しか現れません! この意味……分かりますか?」
聖女ちゃんの問いに首を傾げる剣聖達。
申し訳ないが俺も要点を得ない。
聖女ちゃんは本日何度目かの「やれやれ…」と言った感じで首を振る。
「ですから、【勇者】のスキルを持つ者は神に選ばれた絶対的な存在…。つまり、“神に等しき者”と言っても過言ではないとゆう事ですっ!!」
聖女ちゃんのその説明を聞いて、異を唱える剣聖。流石に俺もそれは如何なものかと思い、聖女ちゃんを窘める。
「はぁあああ!? 馬鹿じゃないのっ?! ソイツが…勇者が神様と同じって…!! ──そりゃあ神様みたいに強くてカッコイイし、長身で細マッチョでイケボの上に、優しくて思い遣りもあって神懸かってはいるけど…。だからと言っていくら何でも……」
「聖女ちゃん。それは流石に言い過ぎじゃあないかな?」
最後の辺り剣聖がボソボソ何かを言っていたけれど聞き取れず、気にせず聖女ちゃんに意見を述べる。
「確かに【魔王】は【勇者】にしか倒せない…トドメを刺す事が出来ないらしいけど、それでも今の発言は大げさで、買い被り過ぎだ。何より俺なんかと一緒にしたら、本物の神様に途轍もなく失礼だよ!」
「えっ、そうなの…?」
俺の言葉に、きょとん顔で聞き返してくる幼馴染。
他の四人も「いま知りました!」ってな表情で俺を凝視していた。(なぜだろう。戦士の顔が一番腹立つ…)
いやいやいやいや。この旅が始まる前に、ちゃんと説明されたでしょう! また聞いてなかったのかな…?
この際、百歩譲って剣聖と弓聖ちゃんは分かる。分かりたくないけど、分かる。この二人は村にいた時からこんな感じだったから…。(前まではそれすらも、愛おしく想えていたんだけどね…)
でも三人は違うよね?
聖騎士さん、聖魔道士ちゃん、戦士は皇国から派遣されてきたんだよね? 何で皇国に属している人間が、こんな大事なことを周知してないのさ!
俺の代わりに聖女ちゃんが五人を心底うんざりした表情で、茫然自失気味に語り掛ける。
「全く以て貴方達は…。本当に如何しようも無い…。──勇者さんも! あなたも、御自身を過小評価し過ぎですよ! 私が言った事は決して大げさではありません!! 私は謙虚な貴方は大大大好きですけど、卑屈な勇者さんは好ましくありません!!」
「聖女ちゃん……」
真横で臆面もなく「大好き!」と言われて、照れて噴火した火山の如く全身が赤くなり、間欠泉みたいに湯気を出す俺。堪らずテーブルに伏せて、意味不明な呻き声を漏らし、悶え苦しむ。
言った当の本人は慈愛に満ちた表情で、未だに優しく頭を撫でてくれていた。(俺を神様扱いしてくれるのなら、この頭撫で撫でを止めてほしい。何故か幸福感に満たされるし、とっても心地良いけども。それ以上に恥ずかしい…)
「いま勇者さんが仰ったように、魔王を完全に倒せるのは【聖剣】に選ばれ、勇者のスキルを持った【真の勇者】のみです。聖シリーズは所詮、主役の引き立て役なんです。代わりなんて幾らでもいるんです!」
聖女ちゃんがそんな悲しい事を言う。
俺は聖女ちゃんをまた窘める為に、顔を上げようとする。
しかし、愛撫してくれている手に力が入るのを感じる。
顔をずらして視線だけを聖女ちゃんに向けてみたら、
「ちょっとの間だけ、このまま私に任せてください♪」
とでも言いたげな様子で、口元に人差し指を立てていた。
それがまた俺にはドチャクソ可愛く見えた。
(末期だな……俺…)
「もし、唯一魔王を倒せる勇者さんに臍を曲げられて、外方を向かれたらどうなると思います? 聖剣を持ったまま、何処か遠くに逃亡されたら? それこそ世界の終わりですよっ! だって聖シリーズがいくら束になっても、絶対に魔王は倒せないんですからッ!!」
聖女ちゃんの話はまだまだ続く。
「現に先程勇者さんが放った一言は、私の肝を冷やしました…。勇者さんご本人は言葉の綾…興奮した勢いで口走っただけでしょうが、私からしたら一番恐れていた発言で事案でしたよ! 事の重大さが分かりますか? 例えるなら『世界大戦勃発』並の大事態ですからねッ!!」
この場にいた全員が「それは流石に言い過ぎだろう…」といった表情をしていたが、気にせず残りのパフェを口に流し込んで話を続ける聖女ちゃん。
(嗚呼…手が…。ちょっと名残惜しい…)
「ですから私たち女性陣が貢物…【人身御供】として【勇者】に仕えて共に戦い、時にはその身を捧げて御奉仕する。いくら勇者とはいえ人間ですから、世界の命運と己の生死を懸けた旅が続けば色々溜まるものです!」
頬を赤らめて熱い眼差しで俺を見詰める聖女ちゃん。
俺も思わずドキッ! として顔を紅潮させる。
「なので本来なら私達がそうやって“接待”をして、勇者の気持ちを繋ぎ止めておく楔と鎖の様な役目も担っていたんです! それなのに貴女達は……」
今日で一生分の溜息と首振りをしたんじゃないかと思うぐらい、その動作をまた繰り返す聖女ちゃん。
それに剣聖が憤慨して、顔面を己の髪色みたいに真っ赤にしながら怒鳴る。
「誰も何の了承もしていないのに、勝手に私達を勇者の貢物になんてしないでよッ!! 第一、アンタがさっき言ってた事と矛盾するじゃない!? 勇者とそのっ…致したら……純潔じゃなくなったら、スキルが消えちゃうんでしょうッ?! だったら──」
「いえ、貴女達全員から承諾の確認は取れている筈ですよ」
「えっ…?」
「それに私言いましたよね? 『一部の例外を除いて』と。──実は勇者との“交接”だけは幾ら回数を重ねようが、カウントされないんですよ!」
「「「「はっ……はぁああぁああああッッ!?!?」」」」
今日イチで女性陣の声が綺麗にハモリ、叫声が木霊する。
俺も驚きの余り顔を上げて、呆けながら聖女ちゃんを凝視する。(この間、完全に部外者扱いの戦士。知らんけど…)
「先ず、貢物の承諾の件ですが……この旅が始まる前に女性陣の皆さんは各々、誰かしらに何かを言われていると思うんです。特に剣聖さん弓聖さんは担当の者がいた筈ですよ。じゃないと、この旅に同行させたりしませんから! もしかして……また聞いてなかったんですか?」
俺の気持ちを代弁するかの様に、聖女ちゃんが剣聖に問い質す。それを聞いて、しどろもどろに返答する剣聖。その様子はちょっと滑稽だった。
「そんな前の事…。たっ、確かに皇国の関係者っぽい人が私と弓聖に『もし勇者に“求められたらそれに応える事は可能か?”』みたいなのは訊いてきた気がするけど…。他にも色々説明されたような…」
「それで? あなた達は何と答えたんです?」
「もちろん『はいっ! 任せて下さい!! 全力で…私達の“総てを使って、誠心誠意尽くしてあげます”ッ!!』って即答したはよ! それが何!? でもそれは戦力的にって意味で──」
「あー…成程…。 お互いに勘違いし合った訳ですね?」
「えっ…?」
剣聖の話を聞いて、聖女ちゃんは頭を抑えながら溜息を漏らす。それから、慈悲に満ちた可哀想な子を見る目で言葉を続ける。
「元々一般人だった御二人に、含みを持たせた言い回しを使った担当者も悪いですが、これは中々どうして…。何でそこでそんな“返答”をしちゃうんですかね…。それじゃあ了承じゃなく、承諾したと誤解されても仕方ないですよ!」
「なっ、何でよっ! 私はただ…本当に本気で──」
「良いですか? 確かに『求める』は『力を貸す』の意味も含まれています。しかしこの場合、何方かとゆうと私が言った『ご奉仕』の意味合いの方が強いです。まあ御二人……特に剣聖さんと勇者さんは、会ったばかりの第三者から見ても相思相愛に見えましたので、それで『言質を取った』と思ったのでしょう…。──今は全然違いますけどねッ!!」
聖女ちゃんの皮肉たっぷりの最後の言葉に、顔を青褪めさせる剣聖と弓聖ちゃん。
聖女ちゃんは少し憐れんだ目で二人を一瞥した後、今度は聖騎士さんと聖魔道士ちゃんの方を睨み、矛先を変える。
「そちらの御二人は千歩譲って理解出来ました。しかし、皇国から派遣されて来たあなた方お二人は言い訳が出来ませんよ? 一応、釈明があるなら聞きましょう」
「ぐっ…。わっ、私は皇国から勇者殿のパーティーに加わる話を頂き、父上…騎士団長に『“上手くやれ”』としか…」
「ぼっ、ボクも一緒でお師匠さま…師団長様から『“お主には期待しておる”』とだけで…」
「それで? まさか貴女達は、本当にそのままの言葉の意味で捉えたのですか?」
苦虫を噛み潰したような表情の聖女ちゃんの問いに、怖ず怖ずと答える二人。
聖女ちゃんの方が歳下の筈なのに、その聖女ちゃんにビクつく情けない姿は、残念な程にまったく威厳がない。
「ちっ、違うのか!? 私はてっきり…」
「ボクもっ! ただ期待されているんだとばかり──」
「んな訳ないじゃないですかッ!! ちゃんと“含み”が込められているに決まっているでしょうっ!! ──どうして『組織』に属しているのに、言葉の意味合いを…隠された真意を深く考えたり、汲み取ったりしようとしないんですっ!? …ううっ…もうやだぁ…。頭痛い…」
心底ウンザリした様子で、カワイイおでこに手を当てながら首を振る聖女ちゃん。
聖女ちゃんに申し訳ないけど、その悶える仕草と声に不謹慎にも変な興奮を覚えた。(俺も大概ゲスだな…)
「あのですね。恐らくですが、騎士団長・師団長は『上手くやれ』・『期待しておる』……これは即ち『上手く勇者に取り入って籠絡しろ。可能なら騎士団に引き込め。最悪でも子種ぐらいは貰ってこい…』や、『貴重な勇者の体液を持ち帰るのを期待しておるよ。一番は勇者と懇意の仲になって、魔導師団に連れ添って来てくれると僥倖なんじゃがの!』といった意味が込められていると思います。それぐらい【勇者】のスキルは希少で貴重ですから!」
出来の悪い我が子に言い聞かす母親の様に、丁寧に説明してあげる聖女ちゃん。(将来良い母親になりそうだなぁ…)
それでも理解していない…腑に落ちない感じで、聖騎士さんと聖魔道士ちゃんが反論する。
「それならそうと、ちゃんと言ってくれれば…」
「そっ、そうだよ! それにボク…承諾してない……」
「実の娘や愛弟子に面と向かって『勇者に抱かれてこい』って言えるわけないじゃないですか! 表立って言い辛い事を濁したり、暈したり、曖昧にして伝えるのは世の常ですよ」
聖女ちゃんは目を伏せて、記憶を遡る感じで言葉を紡ぐ。
「それに私だってこの旅が始まる前に、教皇様とお母様…先代の聖女さまに呼ばれて『勇者が顕現した…。良いな?』『分かっていますね?』とだけでしたよ。私は二つ返事で『はい、心得ております』って即答しましたけどね!」
一区切りし、諭すように聖女ちゃんは話を続ける。
「それから承諾してないって…。私達は『“組織”』に属する人間ですよ? 更にお二人は【国家】関連です。基本、上からの命令は?」
「うぐっ…! 絶対だ…ッ!!」
「うん…。ほぼ拒否権はない…」
「宜しいです。流石にそこまでバ……おつむが弱くはないみたいですね。──まあもし【魔王討伐】がちゃんと成されたら、皆さんには皇国から報酬…。特にお二人には『輝かしい未来』が約束されていたんですけど…。残念です…」
「「「「えっ…?」」」」
聖女ちゃんが話の最後にボソッと呟いた言葉に、反応する四人。聖女ちゃんは軽く咳払いした後、
「その話は後々ご説明します。今は二つ目…『勇者との交接』云々についてです。これは先程も言いましたが、勇者は『神と等しい存在』…。ですから、いくら交接を…身体を重ねようとそれは『神に御奉仕する』と受け取られて、スキルの消失やランクダウンを起こしません。寧ろ逆です!」
ここまでずっと喋りっぱなしだった聖女ちゃん。
お水を飲み息を整えて、勉強を教える学校の先生みたいに人差し指を立てて、話を続ける。
しかし次の聖女ちゃんから発せられた一言は、とても衝撃的なものだった。
「実は私たち聖シリーズは、勇者さんと身体を重ねる度に…『愛し愛される』程に相乗効果で、その能力や技の威力が上がるんです!!」
一瞬その場の全員が固まる。
構わず言葉を紡ぐ聖女ちゃん。
「勇者は謂わば、濃縮された純度の高い『聖なる加護』のとっても大きな塊みたいな存在…。──少々品のない言い方をしますと『ヤればヤるほど強くなる』んですッ!!」
「「「「はっ、はぁぁああああああぁぁあああああああぁぁああああぁぁああああッッッッ!??!!??!!?」」」」
女性陣から本日最大の「はぁああ!?」が発せられる。
俺も驚き過ぎて「あウべバぼビッ!?」と自分でも意味が分からん奇声を出してしまう。
聖女ちゃんはそんな俺に相も変わらず、優しい微笑みを浮かべてくれていた。
四人がそれぞれ悲鳴にも似た、反駁を漏らす。
「うっ、嘘よそんなのっ! そんな都合が良い話…。あっ、あるわけないっ!!」
「そっ、そうだッ! その様な卑猥極まりない行いが、修練や鍛錬になってたまるかッ!!」
「どうせ私たちがちょっとおバカだからって、デタラメ言ってるんでしょう!!」
「もしそれが本当なら……ボクはなんて事を…。いっ、今更認められないよッ!!」
「認める認められない云々じゃなく、事実です。…貴女方には論より証拠でしたね。っと言ってもこの場にはもう、私しか聖シリーズはいませんから…。──勇者さん、失礼します!」
そう言って聖女ちゃんは俺の手を取り、顔を赤らめて暫く躊躇った後に、俺の手を自分のとても美味しそうなおっぱ…豊満な乳に押し当てた。
「ぴぃやぁあああッ!? せっ、せっ、せっ、聖女ちゃんっ!? 一体何を…ッ?!」
「んっ…。すいません! でもちょっとの間、このままでお願いします…///」
突然の聖女ちゃんの奇行(?)に、情けなく女の子みたいな悲鳴を上げる俺。
いきなりの出来事で条件反射的に、ついその『天使のマシュマロ』を揉み拉いてしまう。
その度に聖女ちゃんから「んっ…んっ…///」と、途轍もなく妖艶で甘美な声が漏れ出る。
(何だこれは…!? この世の中にこんなとんでもなく柔らかくて、尋常じゃない幸福感を味合わせてくれる、とっても素晴らしい物体があったなんて…。今まで生きてきた中で、確実に一番って言いきれるぐらいハンパない体験だ…。──最高に気持ち良い…ッ!! ずっと揉んでいたいっ!!)
俺が思春期真っ盛りの、しょーもないませた子供みたいな思考で頭いっぱいにしていると、俺と聖女ちゃんの身体が神秘的にほんのりと蒼白く光る。
それと同時に、得体の知れない何か壮大で強力な力が、身体の奥底から湧いてくる感覚を覚えた。
時間にしてものの数秒…。だけど確かにしっかりと、聖女ちゃんとの繋がり…『“絆“』みたいなものを感じた。
「ふぅ〜…。もっ、もう宜しいです勇者さん。ご迷惑をお掛けしました…/// ──これでご理解頂けましたか?」
顔を真っ赤にして、自分の胸から俺の手を離す聖女ちゃん。俺は名残り惜しそうに手をモミモミさせて、虚しく空を掴む。(嗚呼…。至福の一時が…)
「嘘よ…こんなの…」
「信じられん…」
「ひっく…やだぁ…。私も…勇者にぃと…」
「ボクは……ボクは…」
美しかったり、愛くるしかったりした顔を絶望のいろ一色で染めて、譫言の様にブツブツ呟く剣聖達。
ちょっとだけ可哀想になってきたが、聖女ちゃんは情け容赦なく追撃を加える。
「全くあなた達は…。良いですか! 私が一番許せない事とあなた方の最大の失敗は、媚びる相手を…“尽くす相手“を間違っていたって点ですっ! そうすれば今頃は……」
何かを言い淀む…渋るように話す聖女ちゃん。
そんな聖女ちゃんにここでもまた、空気を読まず無神経に話し掛ける輩が一人。
「あのよお! このパーティーが勇者の『ご機嫌取りパーティー』なのは分かったけどよお…。何で俺様はこのパーティーに参加させられたんだ? 俺様『男』なんだけど…」
「ア゙ア゙ア゙ン゙ン゙ッッ?! …チッ! んな事知らねぇーよおッ!! ちっとは自分で……ゴホン! ──少しはご自分でお考えになってはどうですか?」
「ぐびべぇ?」
その場にいる全員がビックリするぐらい顔を歪まして、これまで見た事ない表情を作りながら、これまた聞いた事のないドスを効かしたしゃがれ声で、戦士を睨む聖女ちゃん。
睨まれた戦士は理解不能な単語を発して、慄き怯む。
「──と言いたいところですが、私も『あれ? おかしいな? 荷物持ちや雑用係かな?』って疑問に思っていたので調べてみました。だって戦士さん、荷物持ちにしてはご自分の荷物しか持たないし、雑用係にしてはホント何もしない…。更に『聖シリーズ』でもない上、役に立たないクセに無駄に…それも積極的に戦闘に参加していたので、ぶっちゃけ迷惑…不思議でした!」
聖女ちゃんは辛辣な言葉(だけど全部当たってる)をスラスラと平然と言い放つ。
「なので先程ここに来るまでに、皇国側に確認を取ったところ真実が分かりました! ──戦士さん、どうやら貴方は皇国側の手違いで派遣された『元々この場には不必要な人物』だったみたいですね。本来は【聖戦士さん(美女)】が、このパーティーに加わる予定でした!」
「つまり……どう言う事だ?」
「本当に要領を得ない人ですねっ! つまり貴方“だけ”はこの件があろうがなかろうが、どっちみち追放だったって言う事ですッ!! ──そしてあなた達四人は本来ならこの場に要らない人間に、いとも容易く心を開き、身体を許したって言う事ですっ!! …理解出来ましたか?」
最後は若干小馬鹿にした感じで、人差し指を向けながら五人に言い放つ聖女ちゃん。
その目は剣聖達には、憐れみと慈悲に満ちた瞳で…。
戦士には侮蔑と憤りを孕んだ瞳で、鋭く睨み付けていた。
「なっ、なにぃいいいいッッ!?」
「嘘…。嘘よ…嘘よ…嘘よ……嘘よおッ!!」
「まさかそんな……そんな……そんな…」
「やだぁ…。やだやだヤダヤダ……やだぁああッ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
戦士は驚き、他の四人は絶望で精神がギリギリってな様子で、呪詛のように譫言を繰り返す。
さっきまでは微塵も同情心なんて湧かなかったのに、今ではその……四人になんて声を掛けて良いか分からない…。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、聖女ちゃんが申し訳なさそうに…。だけども『ちょっと可哀想だけど言わないと……教えてあげないといけないなぁ〜…』ってな感じで、五人に(正確には女性陣四人に)、恐らく本日最後の追加ダメージを与えに掛かる。
「──さて。絶望しているあなた方に追い討ちを掛ける様で少々忍びないのですが…。貴方達が追放な理由は三つあると言いましたが、つい今し方“四つ目”が発見されましたので、お伝えしますね! ──とっても心苦しいんですけども…」