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39話


(魔法陣を消すなど、常人じゃありえない。そんな魔力を持つ者がいたのか?いや、いたら気がつくはずだ)


「ジークか? どちらにしても、それが目印になってる感じだ」


 近づいてくる正体の分からない相手への不安から、途中から考えが口に出ていた。


「何の?」


 震える七海の声に、自然と鼓動が早くなる。


「こっちの居場所がバレてるみたいだ。まっすく向かってくる」


 そう言った瞬間、黒い塊が勢いよく飛んできた。


「下がってっ」


 すぐさま魔法陣を展開し、防御壁を張り巡らせた。


 ダンッッ!


 間一髪。

 防御壁との衝突で、突風が起こった。


 ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、


 ジークの激しい連打に防御壁が震える。


「大丈夫?七海」

「これは、」

「防御壁だよ」

「すごい」


 七海との短い会話の間も、人形魔法にかけられたであろうジークがずっと殴打し続けてくる。


(人形魔法、思いのほか厄介だな)


 加減も何もない力任せの殴打は、踏ん張っていないと負けてしまいそうほど強い。

 七海が不安げにジークを見上げていると、霧が広がり無効魔法を仕掛けてきた。

だが、当然効くはずもなく、逆に執拗な殴打から解放されてホッとした。

 七海から驚きの目が向けられ、魔法の効かない体質だと伝えたが、納得はしていない様子だ。


「流石は王子の側近だ。こいつの魔法が効かないってスゲーな」


 目の前に立つアルドを、表情はそのままに苦虫を嚙み潰したような思いで見た。

 男達を分散させることも、逃げ回って時間を稼ぐことも出来ないまま、また対峙するとは思っていなかった。

それに今はジークが相手側に転じた分、さっきよりも状況は悪い。


(七海の足が遅かったこと、マーキングトリップが消されたこと、どちらも偶然か?) 


 そんな偶然が都合よく重なるはずがない。

 ここに来るまでの過程を思い返した。

 彼らの計画に俺は存在していなかった、となると俺はイレギュラーな存在という事だ。

 ならば、別々に考えるべきだ。

 七海は魔力を持っていない。

以前、魔石使用に苦労していたから、そこが原因かもしれない。

 マーキングトリップは、相手側に何らかの対抗策がある、と見るべきか。

 どちらもハッキリしないが、後者は気にしておく必要がある。


「七海、アルドの目を見ちゃダメだよ。人形魔法にかけられてしまうから」


 少しでも考えつくリスクを減らそうと、人形魔法についての対処法を七海に伝えた。

 アルドの人形魔法は、これまでの経緯を見ても1人にしかかけられないようだ。

 今はジークにかけられているが、今後の状況によってどうなるか分からない。


〈 マティリス、状況は? 〉


 ライアット殿下の声が頭に響いた。


〈 あまり良くありません 〉


〈 膠着しているのか? 〉


 こちらの居場所をトレースして、緊迫した状況を把握されたようだ。


〈 はい 〉


〈 父上がマレージアの宮殿へ来られた。前触れもなく急だった為に説明等々で時間がかかっている状況だ。防御壁で暫く持ちそうか? 〉


〈 ジークが人形魔法で相手側に転じました。数も多く、解除魔法を使える者がいるかもしれませんので、正直わかりません 〉


 状況をそのままに、率直に答えた。

 少しの間の後。


〈 マティリス、森の先に木場がある。そこへ行け。無理なら、ナツだけでもそこへ誘導しろ。ルイス他数名を私の魔風でそこへ飛ばす 〉


 殿下の声がプツリと切れた。

 急ぎ、対処して下さるのが分かり、苦慮していた己の考えに光明が差し込んだ思いがした。

 ジークがふらふらと近づいてきて、また激しく殴り始めた。

 防御壁に滲む血の跡。

 ジークは、もう限界かもしれない。


「このままじゃ、ジークが本当にダメになっちゃうよっ」


 防御壁に亀裂が入り、七海が今にも泣きそうな声を上げた。

 ジークは懸命に意識を保ちつつ、超人のごとく打ち続けているが今にも崩れ落ちそうだ。

 もしジークが気を失ったとしても、アルドのことだから人形のように操って使うかもしれない。

 だが、そうなるとジーク本来の力は発揮されないだろう。

無理に使われた体のダメージで、本当にジークは死んでしまうかもしれない。


(でも、ま、俺にとっては好機かな)


 ジークには悪いが、不利な状況に兆しが見え、しかも応援がすぐに来る、これを好機と呼ばずして何というんだ。


(消されたマーキングの謎も気になるが、やられたことはきっちりお返しさせてもらう)


 その前に七海の安全が重要だ。


「七海っ。この森の先に木場があるんだ、そこに助けが来る」

「え?」

「助けが来るまでここでと思ったけど、それまで持ちこたえられそうにない。だから、合図したら全力で走って」

「マティリスは?」

「俺は、ここで足止めする」

「ダメよ、そんなの」

「大丈夫さ、これでも俺は魔法騎士だ。野盗崩れなんかに負けないよ」


 すぐにでも力尽きるかと思っていたジークだが、話している間も殴打は止まらない。

 力強く踏ん張っていないと打ち負かされそうだ。

 それなのに、いきなり七海が、


「わ、私も、もしかしたら、特異体質かもしれない、だから、」


 と言い出したから、つい力が抜けてしまいそうになった。


(あっ、ぶねーっ!!)


 振り向くと、真剣な顔をして俺を見るから怒る気も失せてしまった。


「王子の魔力抑制の話?」

「う、ん」

「あれ、・・・ウソだから、間違いだったんだよ」

「えーっ」


 こっちが、えーっだよ、と言いたい気分だった。

 若干、気持ちが削がれてしまったけれど、応援が来るまでの間、全力で行こうと決めた。


「俺なら大丈夫だ、七海。すぐに、ルイス副隊長達が助けに来てくれる。だから、もう少し頑張って走ってくれ」


 副隊長の名前を出したら、七海の顔つきが変わった。

 七海が走り出したら、すぐに応戦に入ろうと魔法で剣を作り出し構えたが、ジークを見て人形魔法についての補足を七海に伝えた。


「さっき、アルドの目を見ちゃダメだって言ったけど、あれは一定の近い距離なら魔法陣なしで人形魔法にかかるって意味だから」

「え、どういう意味?」

「離れてる相手には、魔法陣を使って魔法にかけてくるってこと」

「はぁ?!」


 何故が、もの凄くキレられた。


「イケる? 七海」

「イケますっ」


 確認したら、怒りの声で帰ってきた。


(なんでだよっ)


 思ったけれど、聞き返している場合でもない。

 気持ちを切り替えて、フッと息を吐いた。


「何があっても振り向かずに全力で走って」

「うんっ」


 七海の大きな頷きを合図に、声を上げた。


「行って!」


 駆け出す七海を背後に感じながら、防御壁を前に、左右、上へと展開させた。

 当然のように周りにいた男達が武器を手に襲い掛かってきた。


かなり久しぶりの投稿です (>人<;)

また、読んで頂ければ、と思っております

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