第一話 音楽ゲーム同好会
「メイは何部に入るか決めた?」
昼休み、私は同じ中学出身のメイとお弁当を食べていた。
入学してから数日間、変わらない日常風景だ。
「演劇部、って今さら聞く必要ある?それ」
「いや、参考までに・・・」
メイは中学でも演劇部に所属してたから、予想はしてたけど。
「ナギサは決めたの?」
「候補はあるんだけど見学してから決めようと思って」
「おーいいねー、ついにナギサも青春部活動ライフに足を踏み入れる気になったか。これはおめでたいね」
当然、青春部活動ライフを謳歌する気などこれっぽっちも無い。
私が全力を尽くすのは、どの部活が楽であるかの調査だけであり、
部活動に所属してからは全力で手抜きをする気満々だ。
ってあれ?結局全力だな・・・まぁいいや。
「放課後になったら私は早速演劇部に顔出しに行くけど、ナギサも行ってみる?」
「いや、私は遠慮しとく」
「そう?意外と楽しいかもしれないよ?」
もしも、どうしても楽そうな部活が無ければ、気心知れた友人と一緒の部活に入部することもやぶさかではない。
それを伝えた後、話題は他愛もない話に移っていった。
そして放課後、私は文化部と同好会の部室が集まっている校舎へ歩みを進めた。
茶道部、英語同好会…部室の表示を見ながらまずはどの部室に入ろうか迷っていた。
すると、小さな女の子が道行く生徒に声かけしているのを見つけた。
彼女の後ろ姿は、まるで中学生のように小柄だ。
話しかけられている生徒と比べて頭一つ小さい。
話し声が聞こえてきたので耳を傾けてみると、どうやら勧誘をしているようだ。
「すみません、私、天文部に入っているので」
「そうですか・・・いえ、大丈夫です!部活と同好会の兼務はオッケーなんです!だから・・・」
「ごめんなさい、もうすぐ部活が始まるのでこれで・・・」
「あ・・・」
一般身長の生徒はその場を後にし、天文部の部室へ入って行った。
残されたのはうなだれた様子のちびっ子。それと私。
そして、ちびっ子が頭をあげて振り向いた瞬間、
私 は 恋 に 落 ち た
いや、それはさすがに比喩表現。
でもでも!だってこの子・・・
か わ い い ん だ も ん
わー、これは推せるわ。
うん、この子が顔出しYouTuberだったらお小遣いの大半を投げうってもいいわ。
華奢な体も、まだ着慣れてなさそうな制服も、さらさらショートヘア―も、
高校デビュー?なにそれ?的な化粧っ気の無い顔も全部推せるわ。
私が物思いにふけっていると、ちびっ子は私のところへ近づいてきた。
「あの・・・もしよろしければ・・・」
「OKです」
こうして私は入部した。
どの部活へかって?
音楽ゲーム同好会。