プロローグ
ここはとある女子高の教室。
新入生のナギサは部活動の入部届を前にして苦悶していた。
元々勉強はできる方であったため、それほど受験勉強に力を入れる必要は無かった。
この高校が彼女にとって魅力的に感じたのは、家から近いということ。
そして、中学の友人が何人か進学を希望していたこと。
即ち、新たな人間関係を構築する手間が省けるということだ。
そう、ナギサにはやる気が無かったのだ。
この高校には、進学校のような厳しい試験や補習はない。
この高校の定期テストは基礎問題が大半を占めることを、学校の口コミサイトで知っていた。
適度に真面目な態度で授業を受けていれば何事もなく過ごせる。
高校に入学したら自堕落な学校生活を送ろう。
そう意気込んで入学したのだ。
しかし、今時珍しい校則により、その思いには急ブレーキがかかる。
第○条
生徒は何れかの部活動、同好会に所属すること。
ナギサは当然、部活動に所属する気など無かった。
何を好き好んで放課後も学校に残っていなければならないのだ。
こんな校則があると知っていれば少しは高校選びに影響していたかもしれないのに。
しかし、彼女は楽するために全力を尽くす性格でもあった。
入学早々ではあったものの、学校生活での目的ができた。
楽 な 部 活 を 探 そ う・・・
全 力 で・・・!
休み時間、ナギサはオリエンテーションで配布された部活動紹介のプリントを取り出し、脳内会議を始めた。
「とりあえず、どんな部活動があるのか再確認しよう。
まず、ザ・体育会系は消去だよね。
マネージャーもありえない。
だって休みの日も練習があったり、大会で休みが潰れるんでしょ?
いやいやいやいやないないないない」
陸上部バツ、野球部バツ、サッカー部バツ、テニス部バツ、バレー部バツ、
バドミントン部バツ、卓球部バツ、バスケ部バツ、バツバツバツバツ・・・
「・・・予想していたけど運動部は全部バツだったわ。
次は、文化部っと。
ここは一応吟味しておこう。
んー、文化部も大会があるような体育会系っぽいところはバツだな。
吹奏楽部バツ、合唱部バツ、演劇部バツ、っと。
あと、遅くまで学校にいそうなところもナシ。
美術部バツ、天文部バツ」
部活動一覧表の文字にサラサラとバツが付けられていく。
わずかな休み時間の間であったが、候補をいくつか残し、選別作業を終えることが出来た。
「後は実際に見学して雰囲気を確かめてからにしよう・・・
幽霊部員になっても大丈夫そうなところがあればいいな・・・」
一覧表の多くにはバツ印が付けられ、部活動の残りはわずかしかなかった。
一方、同好会はそれなりに候補が残っていた。
英語同好会、生物同好会、園芸同好会、ミステリー同好会、ボードゲーム同好会・・・
その中には音楽ゲーム同好会の名前もあった。