魔石
「ヒヒヒヒヒ、お前が持っていることは分かっているのだ。」
「くっ…私が知るわけがないだろう…」
王子アレミオはすでに黒服たちに相当に殴りつけられた上、個室の床に転がされていた。
「永遠の命と無尽蔵な魔力をもたらすというゴールデン・ジュビリー、まさか知らないとは言いますまい。ヒヒヒ。」
ゴールデン・ジュビリーは先々代の国王イアンが即位50周年の際に献上されたという伝説の魔石であり、真紅の鉱石には古から賢者たちの力により、非常に強力な魔力が込められてきたものと伝えられていた。しかし現在はその行方は分かっておらず、人々からは忘れ去られていた。
「ヒヒヒ、さぁ、答えろ。10分おきにホールの人たちを1名ずつ殺してやろう。お前の大事な人もいるんだろう?」
「くそ、卑怯な…!」
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「よし、これで2割といったところか」
城の地下では、2人の黒服が何やら作業をしていた。地下水路の手前にあるこの大きな空間は、資材置き場となっていた。2人はそこにある、閉ざされた大きな金属製の扉へと爆弾を仕掛けていたのである。
その高く積まれた荷物の裏側で、暖かな寝床を求めたマダムとロバが気持ちよく眠っているとは、
まだその黒服たちには知る由もなかった。




