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結界

「α地点、作業完了。β地点見張りあり2名。排除しますか。」


 真っ黒な服に身を包んだ伝令役が、大柄な男へと確認を求める。


「やれ。」

「承知。」


 前夜祭が開催されている城門の入り口では、招待状をチェックする受付係の兵士が二人並んで立っていた。


 日中は来場するゲストの安全を守るため見張り含め多くの兵士が待機していたが、そもそもアレミオ王子の城には王国屈指の魔術師たちがいるので、城内の守りを気にする必要はほとんどない。


 新たなゲストが来る気配もないことから、多くの兵士が明日の誕生日パーティ本番に備え、帰宅していた。


「それにしてもさっき来た最後のゲスト、やべー奴だったよなぁ。あんなボロボロの服で、王子に会おうなんて恥さらしもいいところだ。」

「ははは、だよなぁ。しかし朝から晩までパーティの受付なんて舐められたもんだぜ。俺は兵士だっつの。」

「ふぁ~。眠い。早く帰って熱いシャワーが浴びてぇなぁ。…ん、今なんか物音しなかったか?」


 ゴッ!!


 鈍い音がし、今話したばかりの兵士が地面に突っ伏した。


「え…えっ?うわぁっ!何だお前ら!ぐああ」


 もう一人の兵士の胸には、背中から伸びる剣先が見えていた。反撃する間もなく倒れ込む。


「排除、完了。」

「全ての出入り口封鎖完了。」

「β地点、作業完了。結界、準備OKです。」

「承知した。作戦開始。…ルカ様。」


 大柄な男からルカと呼ばれた者は、黒の全身を包むローブから、皺の深く刻まれた細い指に長い爪が針のように伸びる左手を出し、空へ高々と掲げた。


「サンガ!!」


 黒いローブの男ルカが叫ぶと、城を半球状に包み込むように地面から薄緑色の結界が現れ、やがて城の真上にあたる上空で交わった。


「これで城内全ての魔術師はお陀仏さ。ネズミ一匹逃げられやしまい…ヒヒヒ」


 多くの黒い人影が、城の表口裏口から同時になだれ込んでいった。

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