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シオン対マルコ

 シオンは遠く見える兵舎の方を見つめていた。何やらざわついているようではあるが、こちらに向かって来るような気配は未だ見えなかった。


「くそ、何やってるんだ…」


 苛立ちが隠せない。


「ギィィ…」


 背後でドアが開く音が聞こえ、シオンは慌てて物陰に身を隠した。


「な、なんだこりゃあ?」


 階段を上がり屋上へと出てきた黒服は、花火の筒が不自然に並べられていることに気が付いた。


「これは…いるな」


 急に黒服の警戒レベルが上がり、剣を握りしめながらこちらへと向かってくる。こちらも息を潜めゆっくりと樫の杖を握りしめる。


(さぁ、どうするか…)


 足音の気配はここから5メートルか…

 3メートル

 1メートル…


「おりゃああああ」


 シオンは物陰から一気に飛び出すと、上段に構えた樫の杖を一気に振り下ろし、その一番太い部分を相手の肩にヒットさせる。ミシッという音と共に、黒服の右手に握られた剣が地面へと落ちる…!


「ぐわあああ、てめぇ、コノヤロー!」


 もみ合いになり、2人揃って屋上を転げまわる。樫の杖は先ほどの衝撃から半分のところで折れ、手元には細い部分だけが残っている。シオンは馬乗りになった黒服に対し、下から樫の杖の切断面を目元に向けて突き刺した。


「ぎゃあああああ、目が、目が…」


 黒服はシオンから飛びのくと、目に刺さった樫の杖を掴みながらゆっくりと後ずさりしていき、柵の無い屋上の縁に踵を引っかけると、背中から真っ逆さまに落ちていった。

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