第七話 再来
次の日になり、太陽が上り、世界を照らす。魔眼を得て、死闘を繰り広げようとも否応なしに明日というものはやってくるのである。俺もその流れから逃れることは出来ず、いつもと同じように学校へと向かう。
中学と高校では教室のある建物が違うので校門を入ってすぐ去時音と別れ、自分の教室へと足を運ぶ。そして自分の席につき、自分の内側へと話しかける。
『起きてるか?』
《はい。私に睡眠は不要ですので、いつでも対応可能です》
自分の内側だけで会話が成り立つというのはとても不思議な感覚だが、現に成り立ってしまっているので受け入れるしかないようだ。
『そうか。じゃあ早速だが、昨日『銃器の魔眼』の能力は一部が制限されてるって言ってたよな。俺が使えるのはどんな能力なんだ?』
《『銃器』のみで使用できる能力は、『銃器生成』のみとなります。そして生成できるのは拳銃からライフルまでの人間が一人で扱うことの出来る大きさのもののみとなります》
この返答を聞き、少し思案する。
そうなると、昨日のやつが出してたみたいに拳銃や小銃は出せるが、大砲を出したり、それらを改造することは出来ないようだな。それでも、一般人には入手不可能な銃というものが容易に獲得できるのはありがたい。あの時は思いつきで行動してしまったが、やはり魔眼を回収しておいて良かったな。
そこから一日、授業は受けながらも俺は自分の内側で問答を繰り返した。
『前から気になってたんだが、『過去の魔眼』があるってことは他にも『未来の魔眼』とかがあるってことか?』
《今まで確認された魔眼を確認したところ元々は『時間』という一つの魔眼だったようですが、その力があまりにも強力すぎるため『過去』『現在』『未来』の三つに分割されたようです》
じゃあ、もしかしたら………
そこまで考えたところでチャイムが鳴る。学校の授業が全て終わってしまったので、自分の内側に意識を傾けるのをやめて、廊下を見てみる。昨日は去時音が俺の教室まで来ていたので、今日ももしかしたらと思ったが、今日はいないようだ。
そこから三十分待っていたが、去時音が教室を訪れることはなかった。もし向かってきているなら、入れ違いにならないようにと待っていたが、さすがに違和感を覚える。
席を立ち、中学の教室がある建物へと入り、去時音が所属しているクラスを訪ねる。教室の中にはいないようなので、近くにいる中学生に去時音のことを訊いてみる。
「伊崎さんなら、もう帰ったと思いますよ」
その言葉を聞き、嫌な感覚が体中を走る。その場を飛び出し、建物を出る。今日の朝、通ってきた道を全速力で走り抜ける。
いつもの半分の時間で着いた家の扉を開け、中を探ってみる。すると、ダイニングのテーブルに一枚のメモが置いてあるのを見つけた。
"この女を返してほしかったら、町外れの廃工場まで来い"
その文を見て、入ってきたばかりの家を飛び出す。目的の廃工場までかなりの距離があるが、全速力で走る。すると頭の中から声が聞こえてくる。
《『回転』を使い、足の回転の加速を提案》
俺は即座に承諾し、足の回転を加速させる。肉体の限界を超えて、地面を蹴ってから逆の足が地面を蹴るまでの間隔が段々と短くなる。
想定していた時間の半分で廃工場に到着する。無理をして走ってきたので、息が上がっている。廃工場の中は照明がなく、窓や壊れた屋根と壁から入ってくる太陽光だけが数少ない光源である。
廃工場の中央に立っている男が一人と座り込んでいる人影があった。
「よう!あの日以来だなぁ。少しは魔眼を使いこなせるようになったか?」
聞き覚えのある声だった。怒りが沸々と沸き上がってくる。今前方に立っている男の服装は黒の雨合羽である。俺の両親が殺されたあの日、俺の両親を殺した男だ。
「てめぇ!何のつもりだ!!」
喉が潰れるかと思うほど叫ぶ。怒りで視界が狭くなっていく。もう既に俺の眼は奴のことしか捉えていなかった。
「昨日公園で一戦繰り広げたみたいじゃないか。残念ながら俺は見れなかったんだがな、そういう話を聞いたもんでよ。俺とも一戦やろうぜって話だ」
「それと家に上がり込んで去時音拐ってくのと何の関係があんだよ!?」
口調が荒れる。この男の軽い態度がさらに俺の怒りに燃料を投下する。
俺は奴に襲いかかる。戦略も何も考えていないので、一直線に直進する。この行動に反応して、頭の中に音声が流れる。
《戦闘の開始を確認。『回転』の能力より思考速度の加速を開始》
その瞬間から世界の流れが遅くなる。男の目の前まで辿り着いたところで右の拳を握り固め、奴の顔面向かって放つ。だが、こんな単純な攻撃は軽くあしらわれる。
間を空けずに、空いている左手を奴の顔の前まで持ち上げ、魔眼の能力を発動。一瞬にして、何も握っていなかった左手に拳銃を握らせる。
「………死ね」
俺は勝ちを確信して引き金に指をかけ、引いた。
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