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貴族の血 ~拾われ貴族は平民です~  作者: 甘党極(あまとうきわみ)
第一章 町村に蔓延る謎の魔物編
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第六話 秘密

「ねぇカイト! 今の魔法なによ!」


 詰め寄るソシアに、少し後退りながら返答しようとするフェイ。さすがに自分の魔法を見られてしまったのは想定外で、焦りながらフェイは答える。


「いや、これもアーティファクトを使ったから――」

「嘘よ! カイトからちゃんと魔力の出力を感じたんだから!」


 どんな形であれ魔法陣を展開すると、展開した本人特有の魔力出力が他人から感知されるようになる。大きな魔法であればあるほど、その魔力は大きくなり、Sランクレベルの魔法が展開されると、魔法適性評価Fランクの者にも知覚される場合がある。なので一度、発光玉≪ライトボール≫を使用する際に電気を放ったフェイの近くにいたソシアは、その魔力を知覚しているため、今回の魔法も感知されてしまったのだ。ちなみにフェイはそのことを知らない。ソシアの発言からある程度原因が分かったフェイは、ソシアに説明しようとするが……


「おーい! 2人とも大丈夫か?」


 ハルトの声が少し離れたところから聞こえる。おそらくジグも一緒だろう。あの2人にもバレるのはまずいと思ったフェイは、ソシアの腕を掴み、電光石火≪ライトニングアクセル≫の発動準備をする。


「少し痺れるが、我慢してくれ」

「え? ちょっとま――」


 フェイはソシアの言葉に耳を傾けず、共にその場から離れる。村から離れた森までたどり着くと、フェイは電光石火≪ライトニングアクセル≫を止め、ソシアの腕を掴んでいた手を放す。雷魔法の適性が乏しいソシアの体には、まだ痺れが残っているようだ。


「今の魔法って、もしかして三大属性最上級魔法の電光石火……」

「三大属性……?」


 聞いたことが無い言葉を耳にしたフェイはオウム返しするが、今はそんなことを聞いてる場合じゃないと気付いた時、フェイはソシアの両肩を掴み説得を試みる。


「ソシア! 詳しいことは後で話すから! とりあえず俺の魔法のことについては秘密にしてくれ!」

「う、うん。わかったわ」


 突然距離を詰められ驚いたソシアだが、フェイの言葉を素直に聞き入れる。そしてフェイの顔が近くなってきて顔を赤くしたソシアはフェイを引き離す。


「ちょっ、近い近い!」

「あぁ、すまない」


 思ってた以上に取り乱していたフェイは、早く戻らなければいけないと思い出し、ソシアの腕を掴む。


「ソシア、もう一回我慢できるか?」

「え、えぇ。できるわ」


 ソシアの返答を聞いたフェイは、電光石火≪ライトニングアクセル≫の発動準備を始める。先ほどのことがないように、今回は自身から出力される魔力を最大限に抑える。


「うそ、カイトの魔力出力を感じない……」


 ソシアの言葉を置き去りに、二人は高速で村に向かった。

 



 村の手前までつくとフェイとソシアは止まり、ソシアの痺れを治すため、フェイは治癒魔法をかける。


「あ、ありがとう……」


 思ってた以上の治り具合に少し驚いたが、今までのこともあり、すぐに納得してしまうソシア。治癒が終わると、2人は歩き出し、村に向かう。


「どこ行ってたんだよ2人とも! 心配したんだぞ!」

「全くだ。村人の避難はなんとか完了していたようだが、まさか2人で変なことしてたわけじゃあるまいな?」


 ハルトは心配の声を上げるが、ジグは2人を訝しんで見ていた。だが、その顔は笑っていたため、やはり2人が無事だったことに安心していたようだ。


「他に逃げ遅れた人がいるか探し回ってたんだ。幸い、村人はみんな無事のようだ」


 フェイは冷静にその場を凌ぐが、隣を見るとソシアが顔を赤くしてうつむいているのに気付く。


「どうしたソシア?」

「え!? いや! 別になんでもないわよ!」

「そ、そうか」


 突然息巻いているソシアに少し驚きながら反応するフェイ。その様子を見て、ジグはニヤニヤと笑っていた。


「とりあえず、魔物は撃退されているようだが、これはカイトとソシアがやったのか?」

「いや、それは、えっと……」


 ハルトの質問に答えずにいたソシアだが、フェイがフォローする。


「俺が撃退した」

「え、そうなのか?」

「あぁ、実はそれなりに近接戦闘は得意な方でな。最近魔術に興味が湧いてきて、こうして冒険者を始めたんだ」

「それなら、最初から戦士として冒険者を始めても良かったんじゃないのか?」

「近接戦闘は対人戦用しか習ってないからな。だけど今回の戦闘は敵が敵なだけに、多少応用が利いたようだ」

「この数を相手にか、中々の手練れだな」

「まぁそれはソシアの援護もあったからな」


 フェイとジグでそんな会話をしていると、村長がこちらに走って来るのが見えてきた。


「ありがとう諸君! 死傷者が出ずに済んだのは初めてじゃ! これまで通りだと、数日は魔物が発生しないから当分はこちらでゆっくりお休みください」


 そう言われ、村長に案内されたのは1軒の木造住宅である。あまり大きくはなく、本当に一休みできる程度にしか使えないようだ。


「あまり大きくはなく、一人用の住宅なのですが、他にあてはなくて……」

「構いませんよ村長さん!」


 申し訳なさそうな顔で言う村長だが、ハルトは笑顔で受け入れる。


「んじゃ、交代とするけど、メンバーはどうする?」

「さっきと同じように、カイトとソシアでいいんじゃないか?」


 フェイの言葉にジグが返すと、ソシアが少し驚きながら言い返す。


「え!? 私はいいよ! その辺で一人で野宿するし!」

「何言ってるんだ? もしそうなら俺が外で寝る。一人がいいなら中でゆっくり休むといいさ。」


 フェイはそう言い返すが全力で否定し続けるソシアを見て、さすがに少しショックだったのか、フェイは少しうつむく。


「俺が嫌なら、ハルトかジグと代わってもいいんだぞ」

「え? あ、いやそういうわけじゃなくて……」


 2人の状況にジグがまたニヤニヤとしているが、ハルトは何をそんなに言い合っているんだ? といった表情を浮かべている。


「とくかく、ソシアが嫌なら俺は野宿するからな」

「いや! やっぱり大丈夫よ! ほら行きましょう!」





 フェイの言葉に、ソシアはこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないと考え、フェイの腕を掴み家に入っていく。中は1つのベッドと椅子と机のみであったが、長い間歩き、先ほどフェイと色々なことがあり、疲れてしまったソシアは倒れるようにベッドに横たわる。フェイは椅子に腰を掛け、そのまま眠りにつこうとするが


「そういえばカイト、あの魔法について教えなさいよ」

「そういえば、そうだったな」


 ソシアが起き上がり話を聞く姿勢をとると、フェイも椅子の向きを変え、ソシアと目を合わせる。どこから話し始めようか考えていると、ずっと目を合わせて顔を赤くしたソシアが顔を背けると、フェイは話を整え終わったのか、ソシアに説明し始める。


「まずは、俺の魔法から話そう」

「う、うん」


 ソシアは少し緊張している。


「俺の魔法適性全体評価はおそらくA、もしくはSのレベルだろう」

 

 フェイはソシアに嘘偽りなく、自分の魔法適性について話し出した。


「A!? それって、上流階級の人たちのレベルじゃないの!?」


 驚きのあまり大声を出してしまったソシアの口に人差し指を当てる。そのことに気付いたのか、ソシアはごめんと言いながらフェイの手を離す。


「俺が12歳のころ、冒険者ギルドで魔法適性について調べたんだが、こうして一から冒険者を始めるために魔力を抑えたんだ。要領はさっきの電光石火≪ライトニングアクセル≫の時と同じようだ」


 説明を進めるフェイだがとある疑問を思い出し、ソシアに質問する。


「そういえば、さっき言っていた三大属性っていうのはなんなんだ?」

「三大属性っていうのはね、光闇属性と雷属性、そして無属性という様々な属性がある魔法の中で最強と言われている属性よ」

「無属性っていうのはどんな魔法なんだ?」

「無属性っていうのはどの属性にも当てはまらない魔法のことよ。例えば重力魔法とかね。でも無属性魔法を使える人は、今の時代は1人しかいないわ」

「もしかして、Sランクの?」

「そうよ、ガトロ・クリア様よ」

「なるほどな」


 理解したフェイは少し考えていたが、次のソシアの言葉によって遮られてしまう。


「それで一番聞きたいのはさ、カイトって貴族なの?」

「まぁ、そう聞くよな」


 この質問は大体予想できたという顔をしながら、フェイは答える。


「正直、生まれは分からないんだ。幼い頃、森の中でおじいちゃんに拾われて、それからずっと2人で暮らしてきた」

「じゃあ一応身分上は平民なんだ」

「一応な」

「……このことを知ってるのは?」

「ソシアだけだ。だから万が一にも、人には話さないでくれ」

「わかったわ」

「他に聞きたいことは?」


 フェイがそうソシアに促すが、ソシアは笑顔で首を振る。


「何もないわ。もしかしてフェイって怪しい人なのかもと思ってたけど、そんなこと無くてよかったわ」


 ソシアが安心したという表情で話した。


「それに……」

「それに、なんだ?」


 言葉が詰まっているソシアに重ねて言うが、それ以降の言葉は聞くことができなかった。


「なんでもないわ! とりあえず教えてくれてありがとう! ほら、2人が帰ってくる前に早く体を休めましょ!」


 背中を向け眠りにつこうとするソシアを見て、フェイも座り直し眠りにつく。


 フェイに背中を向けて眠っているソシアは、顔を赤くして眠れずにいた。


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