表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴族の血 ~拾われ貴族は平民です~  作者: 甘党極(あまとうきわみ)
第一章 町村に蔓延る謎の魔物編
5/34

第五話 初陣

ハルトが机に地図を広げ説明を始める。


「まず、魔物の出現が変化し始めたのは一か月前からのようだ。特に夜が多いらしく、村で多くの人が眠りについた時に発生するらしい」

「発生源は?」

「それが日によって違うらしいんだよ。気づいたらもう村の中にいたりとか、一応過去にはここからと、ここからとあとは...」


 フェイの質問に答えるハルトは魔物の主な侵入経路を地図に書いていく。


「なあ、城下町側の出現率が高くないか?」

「確かに、普通は森から侵攻するよな」


 フェイの疑問にジグも気付くと、村長が思い出して言った。


「そういえば、他の村でも魔物が出現していてな、城下町の方から侵攻する数の方が多いらしいようじゃ」

「他の村も一か月前からなのか?」

「ん? そうなのじゃ。しかもこの辺だけでなく、城下町の外側にある町でも魔物が出現しているのじゃ」


 フェイの言葉に村長は少し驚きながら、説明を始める。知れば知るほど原因が分からなくなり、フェイ以外の3人は頭を抱える。その中の一人でもあるソシアに、フェイは小声で質問する。


「なあ、そもそも魔物ってどうやって出現するんだ?」

「え? あぁ、この世界の大地にはね、魔力が木の根のように張り巡らされているの。「魔地≪まち≫」って呼ばれているんだけど、それが動いたり、ある魔地で一定の魔力が溜まったりすると魔物が発生するのよ」


 フェイの年齢的に、冒険者学校を卒業していないことを理解したソシアは、フェイに説明し始める。


「でも、城下町の周りにある魔地は教会が管理しているから、魔物は発生しにくいんだよね」

「しにくいってことは、発生するときもあるんだよな?」

「まぁそうだけど滅多にないよ。数か月に一回あるか無いかだし...」


 魔物の出現について理解したフェイは、3人を置いて歩きだす。


「おい! どこに行くんだ?」

「少し考え事」


 ハルトにそう言いながら、フェイは村から少し離れたところでしゃがみ込み、地面に手をあて、地下に電撃を放つ。やがて、地下にある魔地の存在を知覚し、状態を確認する。それを村からもっと離れた場所でも数回し、フェイは村に戻る。


「特に異常はなさそうだな」


 村の周辺の魔地の状態が、他の魔地と比べても異常は見られなかったことが分かったフェイは、村に戻っていく。フェイの帰りが遅くなって心配していたソシアは、フェイに状況を聞く。


「遅いわよカイト。何してたの?」

「考え事と言ったはずだけど」

「それにしても遅いわよ。何かあったの?」

「実は、帰りに魔物と遭遇してな」


 咄嗟にフェイはそれっぽい嘘をつく。


「え? 大丈夫だったの?」

「あぁ、何とか撃退したからな」

「でも、あなたって確か適性評価Dだったはずよね?」


 実はフェイ自身、適性評価については何も知らないのだ。自分が高いのか低いのかも。なのでフェイは、ソシアに自分の評価について聞いてみる。


「実はさ、適性評価の基準は分かってないんだ。Dってどれくらいなんだ?」

「え、そうなの? んーっとね、評価にはSABCDEFの7段階評価なの。でね、それぞれ大体どれくらい使えるか基準があるんだけど」


 そう言われながらソシアがそれぞれの評価について説明し始める。



 F...魔法はほぼ使えず、魔力の感知すらできない。劣等血族のほとんどがFである。魔法の存在を否定する者が多い。


 E...魔法は使えないが、魔力の感知はできる。劣等血族の者もいれば、平民の者もいる。


 D...魔法は使えるが、属性が限られており、魔力もそれほど高くない。自分の適性を活かして仕事をする者もいれば、魔法とは離れた生活をする者もいる。


 C...ある程度魔法が使えて、複数の属性をものにでき、魔力もそこそこある。このあたりから少数ではあるが、冒険者を目指す者がでてくる。推定冒険者ランク冒険者G~E


 B...この辺りから冒険者になる者もいれば、魔法について研究する学者がでてくる。どちらもそれなりのレベルで活躍ができるそうだ。推定冒険者ランク冒険者E~B


 A...Bと同じように冒険者や魔法研究に携わるものも入れる。そしてここから、教師として魔法を教える立場になる許可が与えられる。上流階級の人々の9割以上は、Aランクに近い者がほとんどである。推定冒険者ランク冒険者B~S


 S...国の軍と同じ戦力として扱われ、貴族と同じように優雅な生活が保障されるようになる。タイアンガート王国では、2名のSランク魔法適性者がいたが、1名行方不明になっている。



「こんな感じで、自分の魔法適正の結果によってさまざまな人生を歩むことになるんだけど、中にはAランク適正者でも農民として生きる人がいるけどね。」

「なるほどな、ちなみにSランク魔法適性者の2名って誰なんだ?」

「んーっとね。1人はガトロ・クリア様っていうクリア一族の方で、もう一人は――」

「おい2人とも! なにしてるんだ?」


 見回りから帰ってきたハルトとジグが2人の会話を遮るように話しかける。


「いやちょっとね、次は何が食べたいか聞いてただけよ」

「そうか、そろそろ交代の時間だ。2人とも警備を頼む」

「わかった」




 ハルトの呼びかけにフェイが答えると、ソシアと一緒に村の警備に回る。村は数十本の松明のみの明るさなので視野が狭い。ソシアは目を擦りながら周りを見渡していると、フェイが下を向いていることに気付き指摘する。


「こら、しっかり警備しないと。それにこんな暗いならどこから襲われても危ないわよ」

「たしかにそうだが、やむを得んな」


 フェイは≪魔力探知≫というスキルが使えるため、そもそもこうやって見回る必要がないのだ。しかし、ソシアが困ってるようなので、リュックから発光玉≪ライトボール≫を取り出し、電気を流す。松明と比べてみてもその光は段違いで輝いているため、初めてみるアーティファクトにソシアは驚きながらフェイに聞く。


「え!? なにそれなにそれ!?」

「えーっと、昔おじいちゃんと町に出かけた時買ってもらった、発光玉≪ライトボール≫っていうアーティファクトなんだ」


 身を乗り出して聞いてくるソシアに、フェイは片足を引きながら答えた。だがこのアーティファクトはフェイのオリジナルなので、買ったというのは嘘だ。


「へぇ! そうなんだ!」


 その輝きに目を奪われたソシアは、じっと発光玉≪ライトボール≫を見つめる。


「きれい...」

「...なあ、ちゃんと警備をしないと」


 先ほどと同じ指摘を返されたソシアは、顔を赤くして後ずさりながら少し大きな声でフェイに言う。


「もう分かってるわよ! ほら、早くいくよ!」


 そうソシアが言って前を歩き出した瞬間、フェイが何らかの魔力の気配を感知して後ろを振り向く。


「カイト、どうしたの?」


 フェイが立ち止まってることに気付くと、ソシアも振り向いてフェイが見ている方向に目を向ける


「ソシア! 走るぞ!」

「え? ちょっと待ってよカイト!!」


 突然走りだすフェイを追いかけるソシア。フェイの瞳には魔法陣が浮かんでおり、ソシアから見えないようにしている右手の平には、電気の弾丸≪エレクトロバレット≫の発動準備が完了していた。




「ちょっと待って、ハァハァ、カイト足早い...」


 フェイが足を止めてると、遅れてソシアもやって来る。だが、急に長い距離を走り始めたためか、膝に手をついて荒くなった息を整えようとする。整ったところで顔を上げると、目の前の光景に驚愕する。


「そんな...さっきまで魔物なんて1体も...」

「ソシア! 村人の避難を!!」

「わ、分かったわ!」


 フェイの声に従い、ソシアは避難誘導を開始する。ソシアや村人が視界から離れたことを確認すると、フェイは魔物に向かって魔法を放つ。人型2mサイズの大きな牙と爪を持っている魔物は、突然の


「初陣...といくか」


 張り切っていたフェイだが、人型2mサイズで、大きな牙と爪を持っている魔物は、彼が放った十数発の弾丸≪エレクトロバレット≫によって、あっけなく全滅してしまう。


「あぁ、せっかくだし超放電≪S・ディスチャージ≫も試してみたかったけどなぁ。まぁでも、楽しかったからいっか」


 少しがっかりとした表情を浮かべた後、すぐに気持ちを切り替えたフェイだが


「ねぇ、今の魔法ってなに?」

「あ...」


 戦闘という名の虐殺に夢中のフェイは、思ったより早く戻ってきたソシアの存在には気付かなかった。

もし宜しければブックマークや評価、レビュー等お願いします!モチベーションに繋がります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ