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貴族の血 ~拾われ貴族は平民です~  作者: 甘党極(あまとうきわみ)
第一章 町村に蔓延る謎の魔物編
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第四話 ブルーナイト

「カイト、お前本当に15歳なのか?」

「何度も言ってるだろ。登録書も見せたはずだが」


 ハルトのしつこい質問に、フェイは呆れながらも答える。


「見せ合いはしたが、実際ちゃんと中身を見るやつなんてそんなにいないだろ」


 ハルトの物言いに、部屋の3人はため息を吐く。すると、仕方ないといった表情を浮かべた女性が立ち上がり、フェイに自己紹介をし始める。


「まぁハルトがきめたことだからね。こんばんはカイト君! 私はソシア・フランジ―ノ! 片手剣士よ!」


 突然のソシアによる自己紹介に反応し、もう1人の男性が立ち上がる。


「俺はジグ・フート! 槍使いだ!よろしくカイト!」


 ジグの片手には小さな槍があり、よく見ると、伸縮機能がついている。扱いやすい長さに調整しているようだ。


「俺はカイト・ラグニディオ。雷属性の魔術師だ。ジグ、ソシア、よろしく頼む」


 自己紹介が終わり、これでやっと飯が食える、と笑顔になるジグとソシアは、大きな風呂敷を解き、食事の準備を始める。フェイも手伝おうとするが、客人の手を煩わせるわけにはいかない、とハルトに止められる。だが、初めから何も手伝ってないハルトは、2人に冷たい視線を向けられ、それに気付くと、急いで準備を手伝い始める。数十秒すると豪勢な食事が、目の前に広げられる。2人暮らしをしていて、パズ以外と食事をしたことが無いフェイにとっては、こうやって食卓を4人で囲むことはとても新鮮な気持ちにさせる。目を少しキラキラさせていると、隣に座っているソシアから、黄色の飲み物が渡される。


「おいソシア、カイトは未成年だぞ」

「サモンジュースよ、アルコールは入ってないわ」


 お酒を渡してしまったと勘違いをし安堵したハルトの様子に、ソシアは微笑む。渡されたジュースを飲もうとした時、ジグからコップを掴んだ手を掴まれる。


「おいおい、乾杯の仕方も知らないのか? それじゃいくぞ! せーっの!」

「カイトのブルーナイト入隊に!」

「「「かんぱーい!!」」」


 突然の大声にフェイは驚きジュースを零しかけるが、ソシアに腕を掴まれ支えられる。そして3人のコップがフェイのコップと触れ合った。そして、ハルトとジグは勢いよくコップに入った酒を飲み干す。ソシアもゆっくりと口を付けて、酒を一口飲む。それに習ってフェイもサモンジュースを一口。柑橘系のジュースで甘さが控えめの味で、フェイの好みに合っている。


「ぷはぁ!!やっぱり酒は最高だな!!」


 空になったコップを勢いよく床に置いたハルトは、目の前にある海の幸を手で頬張る。


「あー! ハルト! そんなに勢いよく食べないで! カイトの分が無くなっちゃうじゃない!」

「構わないよソシア。余ったもので十分だ」

「多分、何も余らないわよ」

「それは困ったな。では、少し頂くとするか」


 フェイがソシアにそう言うと、小分けの皿に料理を盛り付けていき、薄切りの肉を頬張る。パズといつも食べていた、焼いた肉にただ塩をかけるだけの料理とは全く違う食感、味、脂の乗りに目を見開く。そして、突然スイッチが入ったかのようにフェイは料理を平らげていく。そんな様子を、ハルトとジグが黙って見ているはずが無かった。


「おいカイト! それは俺の分だぞ」

「ハルトの物でもないぞ! これはみんなのものだ! だから、ここは公平に俺が頂く!!」


 頬を真っ赤に染めらせた2人は、フェイに負けじと料理に食いつく。そんな様子を、ソシアは横からやめなさいよと微笑みながら止めるが、彼女に止める気など一切ない。

料理が順調に食べ進められてから数十分後。フェイに自分たちのことについて話す3人。


「そしたらソシアがなんて言ったと思う? 私が――」

「あああああああああ!! その話はやめてえええええ!!」


 ハルトが何かを暴露しようとしたその時、ソシアが大声で制止する。さっきまでの落ち着きのある印象はもう今の彼女にはなく、頬は真っ赤に染まっている。


「あ、でもこの前にね! ハルトがギルドの受付嬢をナンパした時、なんて言われて振られたんだっけ? えーっと――」

「それだけはよせええええええええええ!!!」


 お返しと言わんばかりに、ソシアが暴露しようとし、ハルトが大声で制止する。少し落ち着いてきたジグはその様子に


「お前ら、みっともない真似はよせよ」


 だが、ハルトがジグの秘密を暴露しようとする。


「そういえば、この前部屋で1人でブツブツ言ってたよな? 確か、この聖剣ゴッドソードで悪を断ち切る! とか言ってなかったか?」


 結局ジグのみが黒歴史を暴露されてしまうことになるが、その後ハルトの服が脱がされ、窓から振り落とされるのは、また別の話。




 祝賀会(?)が終わった後。発光玉≪ライトボール≫で部屋を明るくし、本を読んでいるフェイ。ドアをノックする音が聞こえると、すぐに発光玉≪ライトボール≫をしまい扉に向かう。扉を開けると、そこには風呂上りのソシアが寝間着を着て立っていた。


「カイト君、お風呂上がったわよ。あなたもそろそろ入ってくれば?」

「ああ」


 荷物を全てリュックにしまい、部屋に備え付けられた風呂に向かうフェイ。祝賀会(?)が終わるころ外はすっかり暗くなってしまいフェイが帰ろうとしていた頃。今日はこの宿に泊まっていくように言われたのだ。だが、2人部屋を2つしか用意していないため、誰がソシアと同じ部屋で寝ることにするか話し合っていたが、ソシアの指名で、フェイが選ばれることになる。理由は酔っていないからだ。


 フェイは渋々承諾し、まずはお互いの汗をしっかり流そうと話し合ったのである。風呂場に入ったフェイは、大きく背伸びをした後、ゆっくりと湯船に浸かる。3日ぶりの風呂のため、溜まっていた疲れが一気に抜けていく。数分湯に浸かったフェイは、風呂場を出て部屋に向かう。部屋に着くと、ソシアはベッドの上で髪を整えていた。風呂から上がったフェイに気付くと、こちらに振り向き、話しかける。


「今日はお疲れ様。改めて礼を言うわ。ありがとう」

「こちらそこありがとう。じゃあ俺はそろそろ寝るね」

「え?」


 そんな疑問の声を遮るように、フェイはベッドに飛び込む。そのまま眠りにつくフェイに、ソシアは


「まったく、これだから若い男は...」


 そう微笑みながら明かりを消し、ソシアもベッドに横たわる。




 祝賀会(?)があった次の日、4人は目的の場所に向かうため、足を進めていた。


「そういえば、ハルトが受けた依頼ってなんだ?」

「村に出現した魔物の退治だってよ。昔から魔物の出現はよくあるらしいが、最近数が異常に多くなったり、強い魔物も出始めてるらしい。死人も出てるってよ」

「それって私たちの手に負える依頼なの?」


 フェイの質問にハルトが答えると、ソシアが心配そうな目をし始める。


「んー、でも実際Fランクとして出されてるし、問題は無いと思うけどな」


 ハルトの言葉に納得しつつも、どこか不安な気持ちを抱いてるジグとソシア。そんな2人にフェイは


「まぁきっと、なんとかなるだろう」


 そんな言葉をかけるが、2人はため息を吐く。そりゃそうだ、フェイは15歳で魔法適正全体評価はDと、お世辞でも高いとは言えない。そんな者にどんな言葉をかけられようが、不安は消えないのである。夜になる頃に、目的の村にたどり着くと、フェイは異様な魔力の気配を感じる。他の3人は気づいてなさそうだったので口には出さなかったのだが、もし後々問題になるようだったら調べた方がよさそうだとフェイは考えた。


「おお、お主たちか。わざわざ来てくれてありがとうなぁ」

「いえいえ、依頼を出したのはあなたですか?」

「そうじゃ、詳しい話はこちらで聞いてくれ」


 村長と思われる老人と一通り話したハルトは、そのまま村長の後ろについていく。他の3人も後を追うが、村長に止められる。


「お主たちは念のため村の警備をしてほしい。万が一魔物が出てきた時のためによろしく頼む。」


 村長の指示に従い、3人は村の外側で待機している。フェイが感じた、先ほどの異様な魔力の気配は一向に収まらない。おそらくこれが今回の依頼に関係していると思うが、根本的な原因にはならないため、まだ3人には話さないでおこうとフェイは考えた。


「おーい! とりあえず話は聞いたぞ集まってくれ!」


 ハルトの声に3人が集まる。ハルトは村の地図を出しながら説明を始める。


誤字脱字に関するコメント承ります。

明日から学校が始まりますので、投稿頻度がすこ~しだけ下がるかもしれません。

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