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メインヒロイン面した謎の美少女ごっこ 2



「えっ……フッたんだ、みんなのこと」

「うん。これまでどっちつかずな態度だったことを謝って……想いを告げなきゃいけない相手がいるってみんなに言ってから、ここに来た」

「それは、なんというか……そうですか……」


 場所はどこかの公園のベンチ。

 クリスマス・イブだというのにイルミネーションの一つも無い小さな公園に並んで座り、暗い寒空の下で缶コーヒーを嗜んでいる。

 そしてここで互いに全てを話した。

 いま、俺たちを縛るものはもう何もない。


「でも、ごめんなさい。私は()()()()()()に告白してくれた後輩を大切にしたいから……レッカの気持ちには答えられない」

「……そっか。──ありがとう。ちゃんと答えを返してくれて」

「んんっ…………フッた相手に感謝するってどうなの?」

「せめて言わせてくれよ。辛いことも苦しいこともあったけど、君に恋をしていた時間は間違いなく充実してたんだ」

「……まぁ、そういうことを真正面から言えるのは本当にレッカの才能だと思う。そりゃモテる」

「いまさっき君にはフラれたけどね」

「うぐっ」


 二人の間に緊張はない。

 覚悟を決めた、というよりはお互いに観念した、と言ったほうが正しいと思う。

 


 ──これまでの長い長い道程に反して“清算”はあっさりしていた。


 学園を襲った悪いヤツらはみんなで協力してやっつけて。

 俺とレッカは、それぞれ自分と関わってくれた少女たちと話をつけて。

 ふたりで大切な話をすると告げ、彼女たちの前から姿を晦まして、今に至る。

 話し合いは簡潔であまりにも緊張感のない状態だが、ここに来るまでは本当に長かった。

 

 まず親友が一昔前のライトノベルの主人公かのごとく戦いに巻き込まれて。

 あれよあれよという間に彼を想い慕うヒロインたちが増えていき、気がつけばレッカ・ファイアはありきたりなハーレム主人公としか言えないような立ち位置に君臨していた。

 ズルい。

 羨ましい。

 何より俺だけ蚊帳の外なのが許せない。

 そういった考えから、俺はかつて父親が開発した『美少女に変身できるペンダント』を手にして介入を始めた。

 これが全ての始まり──謎の少女コクの幕開けだった。


 狙う立場は親友のメインヒロイン。

 具体的には物語の中盤辺りから謎の人物として参加して、他のヒロインとは一線を画すような特別な立場を利用して最終的に主人公の関心ごとメインヒロインの立場を掻っ攫っていくようなズルい美少女。

 そのヒロインになることができれば()()()()()()()()と考えて計画を実行に移した。

 ……いや、まぁ、計画と呼べるほど綿密な作戦は何も考えていなかったが。今にして思えば粗雑極まる行き当たりばったりな珍道中だった。


 しかしなんやかんやありつつ、当初の目的はたったいま達成された。

 レッカに告白をされた。

 何人もいたヒロインたちの中から(コク)が選ばれたのだ。

 これにてメインヒロイン面した謎の美少女ごっこは無事完遂した、というわけである。

 感想はいかほどかというと──やはり最高に気持ちよかった。

 いままでの旅の道中でヒーロー紛いなことをしてきた俺だったが、嬉しいことに吐瀉物にまみれた腐肉に等しいカスそのものな感性はそのままでいてくれたらしい。

 これが俺、アポロ・キィの本性というわけだ。最高にクズ! ありがとうございました。


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