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いつも通りの作戦

ダーチースに帰り、天丸が寮のベッドでゴロゴロしながら聴取の結果を待っていた。

そこへ新次郎が訪ねてきた。

天丸は寝っ転がったまま首だけ新次郎の方を向いた。


「おー新人の新次郎くん〜。どうした〜?」


「さっきの男の聴取が終わりました。」


天丸は壁にある時計を見る。時間はもう21時を過ぎている。


「あ〜随分と時間かかったな。さぞかしご丁寧な尋問だったんだなぁ〜。」


新次郎は天丸の言い方にイラッとしながら答えた。


「八郎先輩が寝ていたから思うように進まなかったんです!相手も薬でわけわからないことばかり言うし…。」


「あ〜あ、八郎のせいにしてぇ〜。」


「そういうわけじゃないですけど…。」


「へぇ〜。何でもかんでも仕事を押し付けるお前が言うんだぁ〜。」


その声にハッとして振り返ると八郎が立っていた。


「げっ…。は、八郎さんじゃないですか!お元気ですか…?」


ビクビクしながら天丸が聞くと八郎はニッコリ笑った。


「あぁ、迷惑かけるバカが珍しく言うこと聞いてくれたおかげでな。」


「それはようござんした…。」


天丸は顔を引きつらせながら言った。




八郎は天丸のいるベッドに座り新次郎を見た。


「それで?なんかわかったのか?」


「え?あ、はい。あの男は普通のサラリーマンだったらしいんですが、リストラをされたらしく、その逆恨みでサラリーマンを襲ったらしいです。被害者との面識はなく会社も違います。」


「へぇ〜。相手も飛んだとばっちりだな。」


天丸は伸びをしながら言った。


「他は?」


八郎が促す。


「あ、えっと薬の影響もあり、言ってることは支離滅裂で信憑性はないんですが…狐にできるもんならやってみろと言われたと…。銃も薬も狐からもらったと言っています。ただどこでその狐と会ったかなどは覚えていないのか答えません。ただ全部狐のせいだ、あの黒い狐は絶対許さない、と。」


新次郎の話を聞いて天丸は首を傾げる。



「まぁ、俺の追っている組織と繋がっているとは思っていたけど…黒い狐か…。この前殺した下っ端が言ってたのは狐だけで黒いなんて言ってなかったな…。狐だからてっきり白かと。」


「なるほどなぁ〜。じゃあ考えられるのは2つ。この前の奴が黒いと言わなかっただけか、狐の面の奴が2人…もしくは複数いるか…だな。」


八郎が言うと天丸は腕を組んで考えた後、閃いたように言った。


「って、全然わからないってことじゃねぇか!」


「そうだなぁ〜。だから情報聞き出してから殺せば良かったのに、どうせ俺が全部殺すからぁ〜って殺した挙句、俺を呼び出して後始末と狐の面の忍者と組織のボスの弥七ってやつの情報を集めろってさっさといなくなったやつは誰だったかなぁ〜。」


八郎がジロリと天丸を見ると、天丸は汗だくで目をそらした。


そんな様子を見ていた新次郎がしみじみと呟いた。



「仲良いんですねぇ…。」



八郎と天丸は顔を見合わせた。しばらくの沈黙の後、天丸が声をあげた。 


「いや、どこがだよ!?」


新次郎はキョトンとした。


「いや、もう長い付き合いなんだろうなぁって…。」


「まぁ長いっちゃ長いけどなぁ〜。ただの腐れ縁だ。」


八郎がきっぱりと言う。



「俺はあんまり他部署の人間と関わらないからな。そういう意味では新次郎くん!君とも長い付き合いになりそうだな!」



天丸はニカッと笑って言った。


新次郎が不思議そうにしていると八郎が説明してくれた。 



「侍ってのは汚れ仕事だからな。味方とは言え警備隊でも侍を嫌ってるやつは多い。俺はまぁ天丸とは同期だから関わったりもするけど…まぁ普通は侍には近寄らないもんだよ。」



そう言いながら八郎はテーブルに置いてあった煙草と取り、火を付けた。


「あ、お前!それ俺の!」


「え?返そうか?」


すでに一口吸った煙草を天丸に差し出す。


「いらねぇよ!汚ねぇ!」


天丸も煙草を取り火をつける。


「新次郎くんはこんなに図々しくなるなよ?」



八郎は無言で天丸の頭を叩く。



「あの…それで、これからどうするんですか?」


八郎は考えた後、煙を吐きながら天丸の背中を叩いた。


「んじゃあ、働いてもらいますか!」  

        

「はい?」


「え?」


首を傾げる二人に八郎は説明した。


「やっぱりまず狙うは狐の忍者。俺が調べても狐に関する情報は大してなかった。が、狐に接触したっていう人間は何人か特定した。天丸にそいつらを片っ端から狩ってもらう。殺さずにな。そして情報を得る。運が良ければ向こうから目障りな侍を消そうと近づいてきてくれる。」


「なるほど!」


新次郎が納得したように頷く。



「いや!それ今までとそんなに変わらなくない!?」



天丸が抗議すると八郎は冷静に答えた。


「俺が特定したやつだから必ず狐に繋がってる。前より効率は断然いいだろ?それにプロポーズはお前の得意技だろう?頑張れ天丸。」


「え。天丸さんってそんな得意技があったんですか?しかも凶悪犯相手に…。いくらモテないからって…。」


「勝手に勘違いして憐れむな!」


「図星突かれて喚くなよ、みっともない。」


「誰のせいだ!つか、モテなくない!出会いがないだけだ!」


「じゃ、あとで特定した奴らのリスト送っとくから。明日から早速頼むわ〜。お疲れ〜。」


ヒラヒラ手を振って八郎は出て行った。


「お疲れ様です!失礼します!」


新次郎も八郎のあとを追う。



「また言い逃げかよ!」



天丸はベッドに大の字で寝転がった。


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