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国一番の嫌われ者


ここはコカーラ国。

このコカーラは5つ街から成り立つ国。

街と言ってもそのひとつひとつは大きなもので、街同士を行き来するのには役人の許可がいる。


5つの街のひとつ、トリング。

ここは中階級の街、一般企業のビルが建ち並んでいて、ごく一般的な家庭が多く住むコカーラ国において最も人口は多いが比較的のどかな街だ。


この街を二人の男が走り回っていた。


「はぁっはぁっはぁっ……あ〜、煙草辞めようかな…。」


男は立ち止まって痛む脇腹を押さえながら呼吸を整えていた。

この男の名前は天丸てんまる。黒い着物を着て白い髪に朱色の瞳というかなり変わった出立ちをしている。


小さなビルの上から目をきょろきょろ動かすと


「あ!あんなところにいやがったな!」


天丸は一人の男目掛けて走り出す。


「ちょこまかしてんじゃねぇ!」


そして逃げる男を腰にある刀で背中から斬りつけた。


「ぐわぁ!」


背中を斬られた男はアスファルトの上に倒れ、そのまま動かなくなった。


「キャー!!」


近くを通りがかった女性が悲鳴をあげると


「なんだなんだ?侍か?」


悲鳴を合図に街の人々が周りに集まって来る。天丸は人目など気にもとめず通信装置で警備隊に連絡をした。


「あ、もしもし?こちら天丸。リストにあった雑魚を一人片付けた。掃除ヨロシク。」


「こちら八郎はちろう。了解。近いからすぐ着く。」


連絡が終わると辺りは野次馬でいっぱいになっていた。すると、その中の一人が声を上げた。


「ったく、昼間っからやなもん見せてんじゃねぇよ!さっさとどっか行け!!」


その声は波紋のように広がっていく。


「そうだそうだ!さっさと帰れ!!」

「悪魔め!」

「人を殺しておいて平気な顔して…!」


町の人々が次から次へと罵声を浴びせてくる中、天丸はうるさいと言わんばかりに両手で耳を塞ぎながら群衆を抜けて近くの路地に入っていった。


「正義の味方なのに、相変わらずの嫌われっぷりだねぇ〜。」


路地の奥から先ほど通信装置で話した警備隊の八郎がニヤニヤしながら歩いてきた。

八郎は綺麗な黒髪に鮮やかな緑の瞳をしている。警備隊の隊服を着崩してだらしない印象だが、女にモテる。天丸とは昔からの付き合いだ。


「うるせぇ。そちらさんこそ到着がお早いこって…相変わらず暇なんだな。この給料泥棒。」


「ははっ!侍が仕留めた罪人どもの掃除とパトロールくらいしか仕事ないからな。給料泥棒してほしくなかったら、あんたら侍がもっと働くしかないなぁ〜。火ぃある?」


八郎は制服の内ポケットから煙草を取り出して咥えたまま言った。


「侍だって国の平和を守ってるってのに…なんでこんなに嫌われなきゃならないんだか…。ん、ライター。俺も一服すっかな。」


天丸も全力疾走してすっかりはだけた着物の懐から煙草を取り出して、ライターを八郎に投げる。


 「刀振るしか能が無いからしょうがないだろう?罪人とはいえ、所構わずそんだけ斬りまくってたら嫌われるわ。サンキュ。」


澄ました顔言いながら煙草に火を付け、ライターを天丸に投げ返す。


「お前ぶった斬るぞ。火ぃ貸してやっといてそんな言い方ないんじゃないのかな〜?」


天丸は八郎を睨みつけた。が、八郎は話を変えて淡々と話し始める。


「まぁ冗談はさておき、今回のやつ火のリストに載ってたやつだよね?火の星3ってとこ?」


「冗談じゃないけどな!あいつは火の星2だ。」


「最近そんな雑魚ばっかりだよねぇ…。どうして?火はランクで言えば一番下だろ?火、雷、地、天…お前なら天だってなんとかいけるだろうに…。」


「悪かったな雑魚ばっかりで!それに俺にかかれば天だってなんとかじゃなく余裕でいける!…けど、最近このトリングで変な薬を売ってる雑魚どもがウジャウジャいてな…絶対に元締めがいる。しかも薬の量から見て相当な資金がある組織だ。俺は今そこを狙ってる。雑魚から狩ってれば向こうの幹部から挨拶に来てくれると思うんだけどなぁ〜。」


「へぇ〜。頑張れ天丸。」


「あれ?八郎くん話ちゃんと聞いてた?」


「じゃあ、お仕事行ってきまーす。お前もさっさと働けよ〜。」


煙草の火を消すと八郎はヒラヒラと手を振って行ってしまった。


「お前に言われたくねぇよ!」


天丸の叫びが虚しく響いた…。


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