第2話 知り得なかった過去
これから毎週日曜8時投稿になる予定です。
犬モドキとの戦闘を終えた賢司は死臭漂う戦場からバックを持って、自身が目覚めた場所まで戻って来ていた。
外の世界はだいぶ穏やかでないとわかった今、外にいるなど言語道断。
そしてこのコールドスリープした場所は、千年の間自分を守ってくれたのだ。
他よりは多分安全だろう。
安全な場所に移動したところで、自分が寝ていたコールドスリープカプセルに腰をかけ、バックの中に入っていたものをすべて取り出してみた。
自分がさっき使っていたサブマシンガンが2丁。
ゲームの中でたまに使っていた9mm拳銃と44口径が2丁ずつと、鋼鉄製のコンバットナイフが2本。
そして、トゥーハンドとして活動していた時に着ていた黒いロングコートと、黒いサングラス、そして黒いカウボーイハット。つまりはトゥーハンドとして活動していた時と全く同じ格好と装備が入っていた。
「おおぅ……なんでこの格好のこと知ってるんだよ、普通に恥ずいぜ……」
賢人が一人悶々としていると、コートの中になにか、紙のようなものが入っていることに気づいた。
『親愛なる我が息子へ』
手紙の表紙にはこう書かれていた。
表紙を見ただけで既に自分の顔が紅潮していくのが分かる……
『まず最初に謝っておく、すまなかった……
薄々感づいているかもしれないが、お前がコールドスリープをしたのは、病気だからではないんだ。
わしはお前にコールドスリープさせた日に、全面核戦争が起こることが分かった。
……核爆発の被害自体はわしが作った核シェルターで大丈夫じゃが、核汚染は避けようがない。
つまり暫くは核シェルターから出ることのない人生を送ることになるところじゃった。
そこで、お前か加蓮にコールドスリープの機械を使わせて、核汚染がなくなる日まで老いることなく過ごしてもらうつもりじゃったんがな……
それが加蓮にバレてしもうて、
「どうしてもおにぃにコールドスリープしてもらう!」
って聞かなくてのぉ……
お主に反対されないように、嘘をついてコールドスリープさせることにしてしまったんじゃ。
恨み言ならわしにいくらでも言ってくれ……
お主はわしの機械が壊れてなければ、千年後の世界にいるのじゃ。
おそらく文明はまだそこまで発展しておらんじゃろう、それに治安だって良いとは到底思えん。
だから、バックに入っていた銃と服はわしからの餞別じゃ。
わざわざゲームのなかのやつと似せ、お前が扱えるように反動を弱め、服も防弾チョッキも兼ねている優れものじゃぞ。
お前が好いてたエリンと牙狼にも警護させてある、恐らく破損していると思うが、最悪でも再起不能ではないだろう。
できるなら直してやってくれ……あいつらもわしの息子じゃ。
これから頑張って生きていけよ……賢司。
P.S.
あと、コートの中には他にも追加で入れといたもんがある。
使えるかは怪しいが、現金とスマートフォン、そしてお前のかわいい妹からも手紙がある。
あとで読んでやってくれ……
達者でな。 源五郎より。』
賢司は呆然としていた。
本当に千年経っていたということ、俺はじーちゃんと妹の代わりに生かされたということ、そして、俺は1人でこのモンスターがいる世界を生きていかなければ行けないということ。
そして当然、もう皆いない、ということだ。
「なんでだよ!! 別に3人で篭って生活しててもいいじゃないか……! それになんで加蓮じゃなくて俺なんだよ……なんで……」
衝撃の事実に思考がやられながらも、賢司はじーちゃんの言葉の通りにコートの逆のポケットに手を伸ばしていた。
今や家族との繋がりはその紙切れだけ、そして妹がどう考えて俺を生かしたのか、それだけが知りたかった。
『おにぃへ
おにぃに本当の事情を黙ってコールドスリープさせたこと、怒っているの思います。
本当にごめんなさい。
でも、わかって欲しいんです。
皆おにぃの事が大好きで、だから長生きして欲しいって思ってたんです。
きっと自分に自信がないおにぃもそう思っていて、自分より家族の方を生かしたいと思っていたと思います。
だから千年後の世界で後悔していると思います。
でも、気にしないでください。
押し付けだって思うかもだけど皆心からおにぃを生かしたかったから……
バイバイ。
おにぃの妹より。』
妹からの手紙を見て、賢司は涙が再びポロポロとこぼれ出した。
そして、心に誓った。
じーちゃんに託されたエリンと牙狼を守ると。
どうして俺なんかが助かったんだ、だなんて後悔せず、皆の分まで必死に生きてやるんだ!
――コード『ウィッシュオブライフ』
脳裏にその言葉が勝手に浮かんできたが、そんなこと賢司は気にもとめず、さらにポケットをまさぐった。
じーちゃんの手紙通りに、出てきたのは現金50万と、スマホ。
そしてスマホには1枚のふせんが貼られていた。
『エリンと牙狼は壊れかけた時にコールドスリープの機械の左脇の床を開けて、その先の保存ポットに入るように言ってある。自分の周りにいなかったらそこに行くのじゃ。あと、このスマホのメモリーチップも作れたら置いとくから探して置いてくれ……』
このメモ通りに床を開けると、地下へと続く階段があった。
エリンと牙狼に再び会えるという事に胸を踊らせながらひとつ、またひとつと階段を降りていくと、じーちゃんのメモ書き通りに何かの液で満たされたポッドが2つあった。
……その中にはエリンと牙狼が入っていて、分かりやすく『解放』と書かれたボタン2つと黒い小物入れのような物が隣にあった。
賢司は迷わず左のボタンを押すが、なにも変化が起こることはなかった。
ポットには『警告。ポットの中の識別名エリンは経年劣化により徐々に崩壊する状態です。完全な機能停止までの猶予は10分ほどだと思われます。それでもポットから出しますか?』と表示された。
……もう片方のボタンを押しても結果は同じだった。
「くそぉ………こんな事になるなら俺もじーちゃんから機械の勉強を教わっとくんだった……」
当然賢司に彼女らの修理をする事は出来ない。
……これから俺のやるべき事が決まった。
まず、人が住んでる場所を探す。
強くなって金を稼ぐ
その金で修理してもらう。
まさか人類が全滅している、だなんて事はないだろう。
そこまで悪い環境だとは思えない。
「待っててくれよな……エリン、牙狼。」
銀の髪の乙女と機械の体の犬にそう投げかけると、賢司は黒い小物入れを手に取ってその場を小走りで後にした。
「とは言ったもののどこに行けばいいもんかね。」
早速手詰まりとなった。
いくらこの辺に土地勘があったとはいってもそれは千年前の年代物だ。
ざっと見渡す限りは一面の瓦礫と少々の緑しか見えない……
「そういや、さっきの小物入れまだ見てなかったな。」
とりあえず見てみることにした。
その中はまたもやメモ書きと方位磁針、そして1つのSDカードのようなチップが入っていた。
ARUPERIAと書かれている。
「じーちゃんメモリーチップにまで名前付けてたのかよ。」
少し苦笑いしながら、メモ書きに目を落とした。
『これが完成したスマホのメモリーチップじゃ。音量ボタンの脇に入れる部分があるからいれてくれ。あと、ここから北西にそれなりに人が集まっている集落がある。千年後にもあるかどうかはわからんが……とりあえず行ってみるといい。』
千年前のじーちゃんは狙いすましたかのように俺の問題を解決してくれた。
(ありがとな。)
心の中で感謝のセリフを述べると、賢司はバックの中にしまっていた黒のコート、サングラス、黒のカウボーイハットを身につけて、メモリーチップをスマホに入れた後、早速北西に向かった。
エリン達を直し、この世界で生き延びる。
そのことだけを考えながら。
「ARUPERIA起動開始……」
スマホから出る音声に気づかずに。
次回ついに他の作品などで言う冒険者のようなものの試験を受けます。乞うご期待!




