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第1話 灰色の世界と化け物

 ――――なにが、起きたんだっけ。




 賢司は起き上がり、カプセル型の機械から身を出した。

 コールドスリープ明けの頭はボーっとして、意識がハッキリしない。

 当然だ。年単位で寝続けていたのだから……


 ……段々と視界と思考がハッキリとして来ると、自分が寝ていたカプセルの周囲、じーちゃんの研究室の光景が目に入った。

 しかし、それは記憶の中のものとは全く別の様相を示していた。


「どうなってやがる……?」


 賢司は困惑した。

 それもそうだろう、自分の周囲が整理整頓され、綺麗に磨かれた機械で埋め尽くされている研究室が、機械は破損、棚の中はバラバラだし、サビや汚れで凄く汚らしい空間となっていたら。


 そして、賢司が螺旋階段の上を見上げると更に驚愕の事実が発覚した。


 ―――螺旋階段の下から灰色の空が見えている。

 これはつまり自らの家が無くなってしまったということに他ならない。

 ……もしかしたら自分の家族諸共。



「何があったっていうんだよぉぉぉ!!」


 彼の絶望がかつて研究室だったところに木霊した。

 変わり果てたこの場所には、彼を慰める者も、彼を導くモノも、全てが無くなっていたのであった……






 しばらく時間が経っても賢司の頭の中は疑問で埋め尽くされていた。

 なぜかなりの深層部に作られた地下室からなぜ、灰色の空が見えているようなことになったんだ?

 なんでここまでこの部屋は荒らされている? 俺の病気を治したからじーちゃんが復活させたんじゃないのか?

 ……そもそも皆はどこだ?



 一通り逡巡していると、3200年の4月8日17時6分を指す時計が目に入った。

 正直普段なら壊れたと思うに決まってる。 だが、今この部屋の状況を考えるに、自分には最悪の想像が頭に浮かぶばかりだった。


「とりあえず、そとにでなくちゃ。」


 思わず震えた独り言を発したのは自分への鼓舞だろうか。

 賢人はさっき自分の言った事を実行するためだけに足を動かし続け、螺旋階段を登り続けた。

 

 カンッ、カンッ


 鉄の螺旋階段を1段ずつ登り、地下室の上にあるべき自らの我が家にたどり着いた。

 それは青空教室になっている所ではなく、むしろ床以外の全てが吹き飛んでいた。

 残っている床も黒く変色していたり、石やホコリだらけで、自分がコールドスリープする前とは何もかもが似つかない。



「ゲホッゲホッ! クソッホコリっぽいしくせェ! じーちゃーーーーん! 加蓮ーーーー! どこ行ったんだーーーー!!」


 自分に出せる限りの声で叫ぶ。

 今はそうすることでしか家族を探す手段がないからだ。

 それに、正直なにかしないと不安でしょうがなかった。

 もしかしたら死んでしまったんじゃないか? そしてその後俺の病気は治療されずに1000年間コールドスリープし続けてしまったのではないか?

 どれもありそうで、どれもあって欲しくない事だ。

 そのまま叫び続けていると、家(床)の外にある茂みがガサッと動いた。

 ……もしかしたら、じーちゃん達かもしれない。


「じ、じーちゃんと加蓮か? 」


 震えた声で自分の家族の名前を呼んだ。

 思考から湧き出た様々な不安を打ち消すために。

 じーちゃん達が生きていたら今頭の中にある不安の大体は解決出来るからだ。

 ガサガサッという音が段々近づいてくる。そして今茂みから出てきたそれは──


 

「バウッ! バウッ!」



 犬の鳴き声が聞こえた。

 しかしその体はもはや犬とも、狼とも似ても似つかないものになっていた。

 体は黒く血管が浮き出ていて、筋肉でゴツゴツしている。

 そしえ爪はもはやナイフと形容できる程発達し、目は赤く輝いている。

 なにより、大きさが自分の胸の高さ程はある。これはもはや犬とは別のモンスターだ、自分の本能が危険を告げている。



「うわぁぁぁぁ!? モンスターだ!」



 賢人は一目散に逃げ出した。

 当然だ。今は自分は何も持っていない……

 いや、そう言えばコールドスリープする前に渡された黒の肩掛けバッグがあったが、今は関係ない。

 息の続く限り逃げようとして見たが、犬のモンスターの方が圧倒的に速く、すぐに追いつかれてしまった。


「おいおいおい! どうすりゃいいんだ喰われちまう! 」



 その問いに対する答えが出る前に自分の真後ろまで近づいた犬のモンスターが、賢人に飛びかかった。


「バウッバウバウ!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 咄嗟に右に飛ぶ。ゲームの中の自分だったら華麗に躱し、スコーピオンで反撃しただろうが、現実の自分には無様に転がることしか出来なかった。

 そしてそれでも躱し切れずじーちゃんから貰ったバッグの中心あたりが歯で切られ、中身が無造作に放り出された。

 そしてバックから飛び出してきたものは黒くてヒの字型、手のひらサイズの物体―――そう、トゥーハンドのサブマシンガン、vz61(スコーピオン)が顔を出した。

 咄嗟にfpsプレイヤーだった時の感覚が戻ったのだろうか、賢人はすぐさまそれを拾い、さっき自分に襲いかかったモンスターに向け、そして引き金を引いた。


 ドパパパパッと弾丸が銃身から1、2、3、4と連射され、十発目の銃声と共に、モンスターは動かないナマモノと化した。


「キャイン!」



 もう1匹は突如鳴り響いた銃声に驚いたのか、10メートル程後ろに飛び退き、そのまま自分の周りをグルグル周り出した。

 正直唯のマトでしかない。

 俺は銃身を犬もどきの頭に向けて、引き金を引こうとする、その瞬間、



「そうじゃないだろう? 」



 自分の中に自分の声が響く。

 その瞬間賢人は無意識の内に、銃身を標的の頭より少しだけずらして発砲した。



 パァーン……



 その銃弾は頭の上の方、則ち脳を撃ち抜いていて、犬モドキは絶命した。

 辺りに血の匂いが立ち上る。

 賢人は、ふぅ……と緊張が解けたのかため息をこぼした。




 なんだったんだ、さっきのモンスターも、俺に語りかけてきたやつも……

 それになんでじーちゃんから貰った鞄にあんなもの入ってたんだ?

 次はあのカバン調べて見るか……


 こうして宇都宮賢人の初戦闘、そして初めてのコロシは終わったのだ。


 血の悪臭が漂うこの空間で、しかも銃で自分がコロシをしたというのに、平然としているこの青年も少しおかしくなっているのだが、今はまだ、それに気づく事はなかった……




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