008【儚い】
「儚いですねぇ〜。凰華ちゃんのあの燃える姿。絶対もう死んでるよね〜」
火達磨になった凰華をずっと見続けるムーサ。邪魔な奴は居ないなと確認し、ムーサの口がにやける。
「最近の魔法少女は、魔力を使いこなせてないんですよね〜…。まぁいいか。隊長から街を消せって言われてるから、このまま全部消しちゃうよ〜。」
ムーサは街を飲み込むほど大きな火の玉を作り出す。
「このまま、無くなっちゃえ〜♪」
ムーサは空から地に向かって火の玉を落とした。
すると、地を近くして火の玉が消えた。
ムーサには何が起きたのかわからなかったが、消えた火の玉の中心から少女が現れた事に、理由がわかることになる。
その少女は赤色の目を光らせ、長い金髪で、地上からムーサを睨むように立っていた。
真っ黒く大きな羽を広げていた。
『凰華ちゃんが火達磨になって空から落ちていくぞ!』
そう聞いた吸血鬼の少女の体の中で何かの歯車が回る。
気にならないぐらい小さい吸血鬼の羽の大きさを、より大きくさせた。エクシルアの目が徐々に赤色になっていった。
「シルアちゃん…?」「どうしたの…?」
地域の人達は今のエクシルアの姿に驚きを見せたが、すぐ理解したかの様に騒ぎ始めた。
「魔法少女だ!」「この街にまた魔法少女が現れたぞ!」
エクシルアはその声に反応せず、ガードレールに向かって走り出した。そして、崖から飛び降り、大きな羽を使い凰華の元へ飛んでいった。
「凰華…」
凰華が目の前で燃えるのを横目で見ながら、真上から迫り来る火の玉に手を添えた。
「消えろ」
そう呟くと、一気に火の玉が消えた。
今のエクシルアには魔法なんか関係なく、たった一言の“命令”だけで街を救う。
「あの時の吸血鬼ちゃんではないですか〜。さすが、吸血鬼だなぁ〜」
ムーサにって今の出来事は、吸血鬼そのものの力だと思ったらしい。でも、そうだったとしたら、魔法少女になるとこの少女は、どれぐらい力を増すことになるのか。
「なぇ、そこの吸血鬼ちゃん。名前何ていうの?」
ムーサの声のトーンが変わる。凰華と戦った時以上に、ムーサは危機を感じていたからだ。
ムーサはその時、さっさと名前を聞き退散して、隊長に報告しようとしていた。
びゅうん…。
効果音で言うとそれに近い音で、エクシルアは炎を纏った剣を軽く振り回した。
「お前に名を名乗る必要はない」
そう言って、ムーサを睨み続けた。
「そんな怖い顔して…。死にたくなかったら、さっさと名前教えてくれない?」
ムーサは少し呆れつつ、手を合わせ「ポキポキ」と鳴らし合わせた。エクシルアはその姿に笑ったのか、軽く笑っていた。
「何が面白いの?」
「…そんなこと言って、貴女私を殺すつもり?」
今までのエクシルアとは思えない声のトーンで、言った。ムーサを馬鹿にしたかのように。
「…でも死ぬのは貴方じゃない?」
エクシルアはニコリと笑った。気味が悪いほどに。
それに対して、ムーサも笑いだした。エクシルア以上に声を上げて。
「あはははは!なにそれ!この私が負けるわけないでしょ!!!私は女神族炎属性副隊長のNo.063よ!あなたはただのか弱いから吸血鬼。私が負けるはずないわ!!!」
ムーサはエクシルアを見ながら大笑い。そんな姿に呆れるほどのエクシルアでは無かった。
エクシルアは腕をムーサに向けて、こう言った。
「行け。」
「へ?」
ムーサは何者かに後ろから叩き落とされた。かっこ悪い声を出して落ちて行く。ムーサは真下にあった建物へ落下。背中から落ちたので軽く背骨が折れている模様。
「いった…。誰よ…私を…叩き落としたのは…!」
「私だ」
隣にいたエクシルアからそう言われたムーサ。そんなはずはない、と思い叫ぶムーサのまた隣にエクシルアが現れた。
「は…?吸血鬼が、ふたり…?」
吸血鬼が分身か何か使ったのかと思った。でも、よく見れば目が赤く光っているではないか。これは魔法の力で分身がムーサを叩き落としたんだと理解した。
「そういえば、お前名を知りたいと言ったな。」
エクシルアの分身が消え、エクシルア本体がそう喋り出す。ムーサは「ええ。」と言った。
エクシルアは炎を纏った剣を、身動きができないムーサの心臓へ構えた。
「私は、エクシルア・ガールデウス・ヴァンパイア。名を教えたから、さっさと死ね」
エクシルアはそのままムーサに一直線に突き刺した。ムーサは心臓から粉々に空へと儚く散っていった。
女神族だからまた復活してくるんだろうな、と思いながら魔法を全て解いた。エクシルアは力が尽きたかのようにその場で倒れた。
あとがきです。
「儚い」と聞いて、「瀬〇薫」が
脳内に浮かび上がった人は、
私と気が合いますね
ぜひ今度、「瀬田〇」ついて、
語り尽くしましょうぞ
あとがき2です。
瀬田薫を知らない人へ向けて。
バンドリやる事をオススメします