表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Repeated Vampire  作者: 比那名居 詩乃
4/26

004【吸血鬼としての本能】

小さな身体に小さな服。ハート型の自慢のアホ毛を揺らして。


「凰華!行くわよ!」


目を輝かせて「ゲームセンターに早く行くわよ」と訴えているような顔でこちらをお嬢様は見ている。

ゲームセンターには早く行かせてあげたい。

でも、一つ問題が発生…。


「あと30分程お待ちくださいお嬢様。今日の午前中までに、終わらせなければならない仕事が終わっていません。」


私がそう言うと、お嬢様は、頬を膨らませてこちらを睨む。

気が少し強い上に、そういうかわいい事するんだなぁと少し感心してしまう。


「30分…、越えるかも知れませんが、私の仕事が全て終われば、いくらでもゲームセンターで遊んでていいので、今は少々お待ちください。」


少し深めなお辞儀。

これで許してもらえるとは思えないけど、まぁ後で、おやつでも多めに出しておきますか。


「そ、そんな深いお辞儀しないでよ!!私が悪いみたいじゃない…。わかったわよ。待っててあげるから。その代わり、閉店時間になるまで止めないでよね!!」


お。いつもはこれでは許してくれないのに、許してくれるんですか。明日か今日、“槍でも降るんでしょうか”。

まぁ、言い過ぎですね。槍なんか降ってきたら私としては属性的に若干不利な技なんかもあるので、魔法少女として生きている間は当たりたくないですね。

当たるとしたら、人生最後の日。私の力が尽きて死んじゃって、変わりにお嬢様の力で倒してしまう。

…みたいな感じになって欲しいですけど、本来吸血鬼は魔法少女になれないように、身体の内部から結界が貼られていますから無理なんですよね。


「それでは、仕事終わらせて来ます」


私はそう言って、お嬢様を部屋に送った後、私は急いで自室に向かった。


“今日は嫌な予感がする”


さっきからずっとこの気持ちが強くなって、その嫌な事がもう時期来そうな感覚。

まだ私はお嬢様と一緒にいたい…。

そう思っても“無理な時”は無理なんだから。


凰華は今はペンダントにしてある緑の宝石をぎゅっと握る。そして目を閉じる。

今日も何事も事件が起きませんように。

そう思いながら目を開ける。


―凰華の瞳は茶色から緑色に変わる。


今日一日が少し不安な時、魔法の力を借りて数時間先の未来を見ることが出来る。

いつも出かける時はこうやってお嬢様にバレないように未来を見て、どんなに些細な不吉なことでもある場所には極力近ずかないようにしている。

でも今日はいつもと違う。

今日は“何も”見えなかった。

どうしてかは正直わからなかったけど、何も無いなら何も起きないか。と、思い仕事に戻った。

でもそれが間違いだったなんて今の私ではわからなかった。



☆本


凰華と離れて退屈になった吸血鬼の少女。

吸血鬼だからたまに思う、この症状。


「うぅ、血が飲みたいわね…。」


今までは凰華に隠れて自分の血でなんとかしてきたけど、そろそろ飽きそう。その前に血が不足して死んじゃいそう。

でもだからといって、凰華のを飲むわけにはいかないし…。どうやったら凰華に隠れて人の血が飲めるかしらね…。

吸血鬼の少女はうーんと数分間、枕に(うずくま)りながら、考えた。


すると目を向けた先に一冊の本があった。それはただの絵本だった。

絵本…。ということは、私の家の地下図書館にあるのではと考えた。

でも、吸血鬼の少女は一回もその図書館に足を踏み入れたことがない。少し怖いけど行ってみよう。そんな好奇心で自室を出て地下図書館に向かった。


吸血鬼の少女は地下図書館にたどり着いた。自分の背丈にはとても大きすぎて重すぎる地下図書館のドア。少女はゆっくりとドアを押してゆく。

ギイィ…。そんな音を立てながら、ドアが開く。初めて入った図書館だから結構汚いものかと思ったけど、想像以上に綺麗だった。

凰華が毎日掃除しているのかなと思った。


それにしても広すぎる図書館。たまに、本当にここは自分の家なのかと錯覚する。

すると後ろからサッと物音がした。吸血鬼の少女は瞬間的に後ろを振り向く。

でもそこには本しかない。虫でも入っちゃったのかなと吸血鬼の少女は思った。

すると後ろから、図書館のドアを開く音と聞き覚えのある声が聞こえた。


「お嬢様?どうかなされましたか?」


安心する凰華の声。吸血鬼の少女は凰華に駆けていった。


「い、いえ、何も無いのよ?ちょ、ちょっと血が欲しくなって、ど、どうやったら凰華に隠れて出来るかなって、本を探してて……ぁ…。」


しまった、と顔の表情でわかるように手で顔を(おさ)えた。

すると、凰華は頭を撫でてくれた。ゆっくりと笑顔で。


「隠れて自分自身の血を吸っているのは私も知っています。ですから、こそこそしないで、私に頼っていいんですよ?」


「でも…」


いつも優しかった凰華。吸血鬼の少女が血を吸ったとして血が不足してしまったらどうしよう、と思った。


「お嬢様がいつも以上に元気になるのであれば、私は血でも寿命でもなんでも分け与えます。私はお嬢様がとても大好きなんです。ですからほら…。」


それでもなお、笑顔で腕を差し出してくれる凰華。私はそんな凰華が好きだ。でもそういう私のために何でも尽くしてくれる所も少し嫌いだ。

私は嬉しくって、凰華に甘えて、凰華の血を少しだけ吸った。


後から凰華から「漫画のように肩の方が良かったですか?」と聞かれたけど、私はどこでもいいのだ。大好きな凰華の血なんだ。食べ物みたいに好き嫌いなんかしないぞ。


「凰華!ありがとう!」


私は凰華に深く抱き着いた。凰華も頭をまた撫でてくれた。


私自身、これが最後になるなんて私も凰華もわからなくて。


もっとあとから、気付いた事なんだけど、魔法少女って吸血鬼に血を吸われたら、50年以上も寿命を吸うことになるんだって。


凰華が魔法少女じゃないといいな。


だって、まだ、貴女と一緒にこれからも暮らしていきたいから。


あとがきです。


高校受験三日前です。

これ書くのにハマりそう(真顔)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ