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_友達_


中学校編 


 そうこうしている内に、日が暮れ始めている。この公園は、何故かあまり、子供はこない。今は、それが救いだ。

 俺は、腹を括り立ち上がった。「帰ろう…」そう呟き、家へと足を向けた。

 家の前に着くと、いつもは点いていない電気が点いていて、母が、家に居ることが分かる。意を決して、扉を開ける、いつもより少し重く感じる玄関の扉、そして、「ただいま。」と小さな声で言ったはずなのに、キッチンに居た母がこちらへと顔を出し、「お帰り」と笑顔で言った。

 あぁ…久しぶりに母が返ってきた。あの優しい母がとてもうれ嬉しくて、幸せが冷たかった心に染み亘っていく。

 そして、ご飯ができたらしく、母が呼んでいるので、リビングに行くと、母が作った、肉じゃがと、白菜の味噌汁、白ご飯が並んでいた。急いで席に座り、いただきますと言い、母と共に食べ始めた。

 母の手料理は、何年ぶりだろうか、誰かと食べるご飯はこんなにも暖かくて、美味しいものなのかと、幸せを噛み締め乍ら、母の手料理を平らげた。

「おそまつ様でした。…あ、母さんは座っててよ!俺が片付けるから。」

そういって、二人分の食器を洗っていく。

そして、お風呂も入り、各自の部屋に戻って、俺は、母の居る、この生活がずっと続いてほしいと願った。でも何時かこの生活が終わってしまうという事が分かっているから、涙が止まらない。そして、知らぬ間に寝ていた。

 しばらく学校を休むことにしよう。母は許してくれるだろう。どうせ義務教育なので、進級はできるから。これからは、母との時間を大切にしたいと考えていたのだが、母は、朝俺の部屋に来て、真剣な顔で、こう言った。

「学校に行きなさい…。暴力を振るった女の子に謝ってきなさい!そして、ちゃんと、学校で学ぶべきことを、学んできなさい!」

 どうして母がその事を知っているのか、それは、学校から連絡があったそうだ。あぁ、そうか、まだあの転校生にちゃんと謝ってなかったな。俺は、母に言われたその言葉に。

「分かった、ごめんね母さん。」

 そう言うと、俺は、学校に行く用意を始めた。そして今回は、母さんも一緒に行くそうだ。俺が迷惑をかけた。母にもあの子にも。申し訳ない。

 俺と母さんは、支度し終わって、二人で、学校への通学路を一緒に歩き出した。

 そして、校門では、先生が数人待っていた。そこから、校長室へと連れていかれ、連れていかれた先の校長室には、あの転校生と、その子の母親と思われる美人な人もいた。そして、先生方が何かを、転校生とその母親に説明した後に、先生方が母の方を向き頷いた時に、隣に居た母が、頭を下げて謝っていた。


 あぁ、この光景は前にも見た…


そして俺も母に遅れながらも「ごめんなさい。」と頭を下げた。でも、転校生の母親は、納得していないような顔をして、俺に声を掛けた。

「貴方が、この子の首をしめたのは聞きました。それで済むと思っているんですか?まさか思っていませんよね。この子は、死にかけたんですよ!?罪を償う気持ちがあるのなら、死んで償いなさいよ!!」

 俺は何も言えなかった。その通りだと思ったからだ。もしあの時クラスの人が止めていなかったらと考えただけで恐ろしくなる。すると、それを聞いた母が、

「本当に申し訳ございません。この子は、ものすごく反省しています、どうか、許しては頂けないでしょうか。どうかこの子だけは…。」

 そこには、涙を流しながら、土下座をする母の姿があった。それを見て俺は、母の両肩を持って上体を持ち上げ、「ごめん。」と母さんに聞こえるくらいの声で呟いて微笑んだ、すると母は驚いた顔をしていた。


 すべて俺が悪いんだ。


 俺はその場で立ち上がって、周りの人の顔を見渡して、最後に転校生の顔を見て、その子に一歩近づくと、周りの人の身体が強張ったのが見て分かった。面白い光景だなと、クスリと笑みをこぼして、転校生に問いかけた。

「君は、さっきから何も言わないけど…君は、俺にどうしてほしいの?」

「わ、私は…」

すると、その母親が「死んでほしいにきまっているでしょう!!?ねぇ、そうでしょ?」というので、俺はその母親を睨みつけると、ヒィッと情けない声を出してしりもちをついていた。

「貴方には聞いていません、娘さんに聞いているんですよ。」

するとその子は、大きくも小さくもない声でこう言った。

「じゃぁ、私と友達になってよ。」

 俺にとっては、予想外で嫌な回答だったが、何でもするという事なので、渋々ながらもそれを表に出さないように承諾した。

 その後は、取り敢えず帰るように言われ、家に帰ったが、母は気を取り直して、ご飯にでも行こうかと提案した。が、俺は、俺が作るから部屋で待っててほしいというと、トボトボと自分の部屋へと入っていった。キッチンで、料理をしながら、なぜあの子は、俺に友達になってくれと言ったのだろうか、誰だって、自分を殺そうとした人間には近づきたくはないだろう。それでも、俺と友達になってメリットは一つもないはずだが…なんて考えていれば、飯が出来上がったので、母を呼んで、一緒に飯を食った。あまりにもずっと考え事をしていたので、昼からの記憶はあまりない。気が付けば布団の中で、寝る時間になっていた。まぁ、明日学校に行って聞いてみるか。そう思い瞳を閉じた。

 朝、目を覚まし、いつもの時間に家を出る、いつもと違うのは、母が居る事。少し学校に行く足取りが軽くなった気がした。

 学校に付き、自分の教室へ向かう。後ろの扉を開けると、俺の席に誰かが座っているのが見え、近づいていくとあの転校生だという事に気が付き、隣の席に座って、しばらく見ていたが、一向に起きる気配はない。ふと、彼女の首に目をやると、あの日に首を絞めた指の跡が、うっすらとだが、残っていた。それを見て、改めてあの日してしまったことの重大さを感じた。

 顔を見ると、ぷにぷにして居そうな頬があったので、思わず、ぷにぷにしてみるツンツンとつつくごとに跳ね返してくる弾力が堪らなくクセになるものがあった。


 楽しい…!


 しばらくそれを続けていると、彼女が目を覚ました。頬に違和感があったのか、こちらを見上げる、すると、バッチリと俺と目が合う、そして彼女は、俺と目が合った瞬間に、顔を真っ赤に染めた。何事。

「わ、わ、わ、!!!ごっごめんね!!冬貴君の席で寝ちゃって!!」

「全然平気なのだが…その、あの時は本当にすまなかったな。怖い思いさせて、そんな痣作っちまって。」

俯きがちに言ってしまったが、気持ちは伝わっているだろうかと、少し顔を上げてみると、彼女は、瞳から大粒の涙を流していた、俺は、ハッとした。

「ごめん!俺が悪かった!ほんとに!怖かったよな!!もう君に話しかけないし関わらないようにするから!だから!だから…泣かないでよ…」

 そう言ったが、彼女は、違うとでもいうように首を横に振った。もう俺には訳が分からなくなって、アタフタしていたのだが、彼女が泣き止んで、こう言った。

「友達になったら許してあげるって昨日言ったじゃん!」

と笑顔で言った。もう、女子は分からん。とここで、俺の中に昨日からある疑問を聞いてみる。

「どうして友達なんだ?確かに罰にはなるが、お前にメリットはないだろう?」

何気に酷いことを言った気がするが…彼女は、笑い出した。

「アハハハ!!君は、友達を作るのに理由なんて要るの?フフフ…」

「…。」

 俺は、心底不愉快な気分で、顔を歪ませた。まったくなんなんだこの不愉快な人間は!!と心の中で叫ぶが、彼女には伝わっていないらしい。「はぁ…」疲れた。こいつの相手をするのは疲れる。すると「君今失礼なこと考えただろー!」と声が聞こえたが、黙ってそいつを俺の席からどけて、自分の席へとついて、顔を突っ伏した、そしてそのまま眠りに落ちた。

起きたら、全授業が終わっていて、もう日が暮れかけている。周りを見渡すが、あいつは居ないみたいだ。「ふぅ…。帰るか。」と、立ち上がると、どこからか紙が落ちた。その紙には、あいつが、部活が終わったら行くから、教室で待っておいてほしいというものだった。まぁ、聞くどうりもないので、紙をクシャッと丸めゴミ箱へ放り投げた___。


 中学校編 友達 _続_


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