『第七話』
はい!
てな訳でっ! 前回に続きます今回は、再び久しぶりに”自分パート”ですねっ。
そんな訳で、始まり始まりっ!
自分専用の場所というのは、僕的には何かしらの引きつける特別な力が働いていると思う。
駅の待合室しかり。毎度サラリーマン御用達の居酒屋。
そして、行きつけのファミレスや茶店曰く、無意識の内に腰を下ろしてしまうのも、生物としての性なのだろうか。
と? そんな意味もない哲学論を脳裏に浮かべながら、今現在目の前に伸びる長机の一番窓際に位置する角。
少しクセのある専用にもなるパイプ椅子に腰を下ろす。
校庭からの運動部の掛け声がそよ風に吹かれながら校舎を取り囲む木々のざわめきに溶け込む。
それ等をバックに夕方の心地よい雰囲気を嗜みながら本を開く。
ソレが最近の僕の日課にもなるのだが。
◆◇
「鳴九亜先生部室で何時も本を読んでるんすけど…顧問というよりは、部員じゃないですか」
「しっ!…聞こえたら逃げちゃうでしょ? 普段から気配すら無い、超サボり顧問が珍しく前向きに出向いてるんだから…」
「ええと…ソレ以前に部長?…その野鳥か何かしらを物陰から観察する仕草」
「ほ、ほら! あまりジロジロ見たら
逃げちゃうから。それに手を止めない! そんな事より夏目クンは棚の整理、終わったの?」
あ、あのなァw阿久津クンに夏目クンは、この僕を野生動物か何かと勘違いしているんじゃw
ここ最近までは、職員会議終了と同時に17時45分には帰宅真っ逆さま。
多分、放課後に居残る生徒よりも早いのが日課であり。
職場の終了時刻と同時に職務から解放!
まるで水を得た魚の如く自由の世界へ脱走するクセはフリーター時代から変わらない。
ましてや、世間一般なリーマン企業とは違い。残業手当てが付くかどうか怪しい教師職。
まぁぶっちゃけ事務所関連の何かしらの特別な役職に就けば、多少は手当てが付くのだろうが…
「うん。この際駅前のモックか公江書店のゲーム売り場バイトとかでもかけ持つのもなぁ」
ふと、真面目に棚の整理整頓に励む夏目クン達を横目に開いた本を閉じる。
本のしおりに描かれた”モックチキン380円の宣伝から目線を逸らす。
確かに教師たるもの、教え子ばかり働かせ。本人はサボるのも流石に場が悪い。
かと言って、いきなりあの2名のど真ん中に迂闊にしゃしゃり出るのも逆に袋叩きに会い。
ソレこそ最悪の顧問というレッテルで、末代まで称えられたらたまったもんじゃ…
「あの、鳴九亜先生! コレ…分かります?」
「お?」
ふと、オクターブ高い声の呼びかけにてそれまでの思考は停止。
さっきまで棚の整理整頓をしていた阿久津くんは、本やその他の入れ替え途中に妙な代物を見つけたらしく?
今現在助手にもなるめんどくさそうな夏目くんを横目に不思議そうなそのアイテムを僕に差し出した。
まぁ、棚の整理とはいえ、さっきから壁掛けの時計をチラ見し、落ち着かない素振りの夏目くんを上司の意向で無理矢理残業をやらせている的な阿久津くん。
この二人にとっちゃ、まるでこの先社会人として、避けてはならない困難を若い頃からシュミレートしているような感じかな。
なんか、何時もサボり見なかったが、今現在この部活の顧問としてなかなか興味ある図式だなと。
「あのー、又自分の世界に戻らないで下さります? 出来れば早く済ましたいんですが」
「うおっ? す、すみませ」
って? な、夏目くんにまさか思考を読まれ⁈
と、冗談はコレ位にして、僕は何かしら違和感あるソレを手前に持ち替え眉を潜ませる。
「古いゲームソフト? 」
「あ!違う、昔実家で見たことある…確か」
そう。もう数十年前の時代…未だ液晶やマイクロLED端末とかが無い、ブラウン管が主流の古い時代での映像再生に用いられていた代物。
VHSのビデオテープが何故部室奥の棚にあったのか。
◆
「うわ….1993年の●●県、高等学校での全校文芸部発表会って、公江高だけでも40名は居ますよ?」
「あ、あそこに居るの」
「え? 発表会でのあの子」
「まさかあの”蘭先生”…わ、若いな」
古いデッキを部室奥から取り出し、何故か数十年前のかつての映像記録を現在の顧問筆頭に眺める。
こんなに廃れきり、今にも消えかけの蝋燭みたいなこの文芸部は、僕がこの学校に就職する以前での時代は、●●県文芸部発表会に出れる程繁栄していたんだなと。
そして、何故こんな古い代物が今現在の現役の僕達の前に現れたのか。
「偶然ってのも面白いかもな」
かつての発表会代表生徒があの蘭先生だった事実を知り。
複雑な因縁染みた思いを交差させながら、ふと窓から見える夕焼けの空を仰いでいた。
つづくっ!
そして、次回は再び順番的に周りましてっ。
”阿 夜潮”さんパート!
お楽しみにっ。