『第三話』
はいっ!
前回からの続きになります今回のお話はっ?
眼くんパートに戻りましてのお話になりますねっ!
てな訳でっ? 始まり始まりっ^ ^
命令。英語に訳せばメーレー。無論嘘である。
鞄の奥底に眠っていた電子辞書を無理矢理叩き起こしてみれば、「目上の者が目下の者に言いつけること」なんて、何年も前からとっくに知っていることが書かれていた。
何故こんなしょうもない現実逃避をしているかと言えば、何を隠そう、部長命令を受けたからである。そもそも入部届を受理されたのかすら怪しい部の部長の命令は有効なんだろうか。思わず勢いに呑まれて受け入れてしまったが、失敗した。
命令を無視しても面倒なことになりそうだ。入学して早々上級生に目を付けられるのは流石に少し怖い。真面目な人だったから暴力に訴えるとかはないだろうが、大人しそうな人に限って怒らせると大変なことになりやすいということを聞いたことがあるし、ここはある程度従っておいて、機を見て離れていくのが得策だろう。
大体、あの顧問も顧問だ。あの鳴久亜とかいう教師、入学届を出しに行ったとき、妙にバツの悪そうな顔をしていると思ったが、こういうことだったとは。職員室でコソコソとライトノベルを読む暇があるぐらいなら、こういうことになると教えてくれてもいいではないか。許せん。
結局、「詳細は明後日」の一点張りで何故今日部室に行かなければならないのかを一切教えてくれなかったが、一体全体何の話だろう。あの切羽詰まった表情からして明るい話ではないだろう。
そうこうしてるうちに終業のチャイムが鳴ってしまった。憂鬱だ。
*
校舎隅に位置する部室の扉を開けると、すでに部長が座っていた。その表情は想像通り暗い。
「ちゃんときてくれてよかった」
そう言って精一杯の笑顔を僕に向ける部長。
「一昨日は自己紹介すらできなかったね。私は阿久津。阿久津真夜。よっぽどじゃない限り何て呼んでくれてもいいから」
そう言えば名前すら聞いていなかったな。あまりに憂鬱で全然気付かなかった。
「……それで、僕は何で呼ばれたんですか」
「……とりあえず、これ、見て」
差し出されたのは綺麗に折り畳まれた一枚の紙。開いてみると、「廃部通告」と大きく書かれていた。曰く、活動実績が見当たらない云々。……やはり「幽霊部員の巣窟」という噂は間違ってなかったのか。今日も一昨日同様、部長以外の部員は見当たらないし、これは一昨日や今日に限ったことじゃないんだろう。実質一人しかいない部活で実績を出すっていうのが無理な話だ。
「見ての通り、廃部通告が出されたの。だから夏目君にはこの部活に残って、そして活動をしてもらわなきゃいけないの」
「それはわかるんですが、一体、活動って何をすればいいんでしょうか」
「決まってない」
嘘だろ。
「私が入った時からまともに部活出てたのは私しかいなかったから、部としての活動はしたことがないの。だから一緒に考えてくれないかな?」
丸投げかよ。
「まあ、入部した以上は僕も考えますが、それこそ新入部員なので勝手もわかってませんし……。あんまり期待しないでください」
「ありがとう。でも申し訳ないけど、使えそうな活動案を出してほしいかな」
いやいや、そもそもあんたの仕事だろ。
*
僕がこの部室に来てから二時間が経った。外はすっかり真っ暗である。
であるにも関わらず、僕たちは未だにまともな案を何一つ出せずにいる。
時間が経つにつれて、疲れのせいか二人しかいない部室の雰囲気が険悪になっていく。
半ばヤケでひねり出された僕の滅茶苦茶な案たちは、案の定次々却下されていく。
「もう今日のところは良い案が出そうにもないですけど……」
正直もう帰りたい。
「でも、今のうちに活動内容固めておかないと実績出して廃部を回避するなんて無理だよ?」
そんなことわかってるが、疲れたのでもういい加減帰りたい。
何とかして帰らせてもらえはしないかと思案していると、妙案が脳裏をよぎった。
「あの……、本当に何でもいいんですよね?」
「いいけど……。流石に文芸部のイメージから大きく外れたらダメだよ?」
一応「書く」ことだが、しかし、文芸部の活動内容案として出すには憚られる。少なくとも文芸部のイメージには沿っていない。
どうしても口に出すことを躊躇してしまう。
「いいから言ってみて? ダメだったらダメって言うしさ」
「そういうことなら……」
咳払いを一つして、居住まいを正す。
却下されたらまた考え直せばいいだけの話だ。
「……『新聞を発行する』っていうのはどうですか」
部長は予想外にも、納得したような表情を浮かべた。
「いいじゃん。そうしようよ」
いいのかよ。
はいっ、
次回は、再び自分パートでの話を?
ご期待くださいっ?