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根無草。
ふらふらと
右へ左へ
ぶらぶらと
上へ下へ
赴くままに
水の流れに身を任せ
ふらふらと
ぶらぶらと
味方になり
敵になり
ある時は無関心
いつの間にか敵対心
川に落ちた枯葉のように
右へ左へ移動して
上へ下へと一喜一憂
加速して減速して
岩に当たれども
衝撃は少ない
いずれ海に出る
湖かもしれない
いずれ大きな所に出て
大きな流れもなく
自分で動くこともなく
ただ根無草
浮かんで沈んで
水に飲まれて
いつしか腐り消える
人の世の根無草
羽化んで死ずんで
自らに飲まれて
いつしか消えゆく




