54/171
人泡。
人は泡のようだ
泡のように脆く
泡のように儚い
底から生まれて
ぶくぶくと浮上し
ぷかんと水面を揺らす
人間のようじゃないか
人生の掃き溜めの中で生まれ
生きるために世界を歩き
社会を揺らして
死んでいく
泡も人も
世界に大した影響もない
ただ生きていたい
それだけが生きる理由
それしか生きる理由がない
浮上してすぐ死ぬ
浮上してすぐ空気に混じる
人が死んでも
いずれは忘れられて
生きていなかったことになる
ここにある意味
それがあったとしても
いつか忘れられて
なかったことになる




