159/171
渦中。
右へ左へと渦を巻き
上下も分からない渦の中
喧騒とも呼べる狭い世界で
僕はただ足掻いている
観衆の笑う声が聞こえる
水の中なのにやけにはっきりと
野次を飛ばしゴミを飛ばし
馬鹿にするのだけは一丁前
抗おうとしているんだ
渦の中でろくに動けないけれど
観衆が邪魔をして外にでれらないけれど
抗うのだけはやめなかった
上下左右も分からない
呼吸もままならない状況でも
ただ足掻いて抗って
それを笑われても抗おうとした
観衆の足を掴もうとした
野次馬の腕を掴もうとした
彼らの首に手をかけようとした
渦中の流れを知らない奴を
引き摺り込もうとしていた