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足音。
ひたひたと裸足の音
リノリウムの教室の床を
ひたひたと僕をつける
靴下も履いていない
ぺたぺたとつけまわす
裸足の足音
授業中でも隣にいて
放課中でも後ろにいて
放課後でもついてくる
最近よく聞くようになった
不安と苛つきの足音
ぺたぺたと
時にべたべたと
足音は音を変えて
僕の近くを歩く
足音の主の顔を
僕は知らない
これから知ることもないし
知ろうとも思わないけれど
何故かそいつの表情は
なんとなく想像がつく
馬鹿らしい不安だ
安っぽい苛つきだ
そんな顔じゃないだろうか
しかしそれを確認する気はないし
確認しようとも思わない
しかし少なくとも今は
この足音と生きなくちゃいけない