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足音。
ひたひたと
暗闇から
何かの音がする
手探りで歩く後ろ
誰かの気配が常にある
しかしその人は
僕の肩に手を置かない
近づこうとしないし
声をかけようともしない
けれど確実に
後ろに誰かいる
僕が振り向くと
暗闇に紛れる
そして誰もいないように
自然と見えてしまう
それがいつしか油断になって
後ろには誰もいないと思って
目の先に光が見えた瞬間
一番だと信じてやまないその瞬間
抜かされる
手柄を持って行かれる
後ろの足音
暗闇に紛れる
粘着質な足音