制作活動!
コメディーやべえネタが尽きる。
「どういうことだ」
事は新生のこの言葉から始まった。
「なんで写真部に修羅以降部員が集まらねんだ」
修羅が入部してから随分と時間が経っていた。時は過ぎ今は五月の半ばだ。もう新入生の皆は学校に慣れて来たと言ってもいい頃合いだろう。そして当然このくらいの時期になると部活の入部を決めている人は多いはず。なのに私たち写真部の部員は三人のままストップしていた。
まあ、その理由はだいたいわかるが…。
「普通に考えてこんな得体の知れない部活になんか入りたくないわよね」
「なんだと!」
新生はひどく大げさに驚いているが、そりゃそうだろう。はっきり言って部員の私ですらこの部活はなんのためにあるのかわからないのだから。
「それに対するなんかいい解決策はないのか。アンコ」
「こういうことしてるって伝わるように努力すればいいんじゃない?てか、私から聞くけどこの部活は一体なんなの?なにをするの?」
「そりゃもちろん非凡だ」
予想通りすぎる。あんたの頭の中は人とは違うことするでいっぱいだもんね。
「ほら、漠然としすぎてなにをする部活かわからないでしょう。なんかこの部活のPVでも作って見たらどうなの?」
「ほぉPVとな。その手があったか。よし、今日からPV制作に取り掛かるぞ!」
適当に案を出したつもりだがお気に召したらしい。私にもこの部活がなんなのかわからないため的確なアドバイスかどうか不安だったんだけど普通の案でよかったのね。
「だが、PVと言っても美々の魅力を伝える動画にしかならないと思うのだが」
「修羅。それ全然写真部と関係ないでしょ」
「え、なに言ってんだ。全然OKだ」
私のツッコミに新生は水をさす。
「俺は部活の日常を撮って、各個人の非凡なところも撮りたいと思ってる。だから修羅の美々への愛を叫んでもいいんだぜ」
「そうなのか!美々ぃ!美々ぃ!愛してる!初夜を過ごそう!美々ぃぃ!」
キモいよ!こんなの他の人に見せたら私の評価まで下がりそう。
「うんうん、その調子だ」
新生も納得してるし、また私がしっかりしないといけないのかなぁ。
「では、『真・写真部のPV作り』開始だ!」
こうして、やると決めたらすぐにやる新生はすぐに行動を始めるのだった。
〜数分後〜
幸いにも写真部ということもありビデオカメラが部室の中にあった。写真部はカメラとつけばなんでも買うのかもしれない。そういうわけでまさかの企画して数分でPVの制作にかかることとなった。
「よし、じゃあカメラをここらへんに置いてと…さあ!まずは俺たちの日常を撮影するぞ」
そう言って新生は棚の高い位置にカメラをセットしてパタパタとソファに戻る。
「え、もう撮ってるの?」
「ああ」
「なんか、喋りなさいよ」
「いや、なんかカメラ意識しちまうと緊張してな」
普通の悩みだ。そういうところ非凡に騒いでよ。出始め大切でしょ。修羅もこう目立ちたがるタイプじゃなさそうだしいきなり始まってテンパってるはずだし新生がなんか喋らないと始まらないでしょ。
なんて考えているとスッと立ち上がる影があった。
「え、修羅…?」
「ふふふ…一発芸やります!」
「修羅⁉︎」
変な空気に修羅が毒された!あいつ一発芸なんてする奴じゃないのに。でもちょっとどんなことするのか気になる。
「さて、まずは棚にある一眼レフカメラを手に取ります」
お、物を使ったネタとはもしかして一発ギャグ上級者かも。
「そして、これを俺の股間に!」
え、…。えー!なにやってんの!まさかの自虐ネタ!
そういう心の声は虚しくも声にならず一眼レフカメラの角は迷わず修羅の股間にぶつかる。
「ビクンビクン…ビクンビクン…これが…写真部の日常だ」
「やめてえ!これが写真部の日常じゃないから」
「心配してくれてありがとう。俺はお前が笑ってくれるだけで幸せだぜ。愛花…」
「お願いだから私に喋りかけてよ!」
愛花とは修羅が私のことをギャルゲモードで見た時の私のことである。
「まあ、修羅が体張るのは日常っちゃ日常だよな」
まあ、その通りである。
「じゃあ、いつものティータイムにしようぜ。放課後のお茶の時間だ」
「そんな事初めて聞いたわよ。なにがいつものよ」
「いや、今日から毎日お茶を飲むからいつもと言っても間違いじゃないんだぜ。むしろ未来永劫この時間に飲むから俺はティータイムの精霊と言ってもいいね」
未来永劫新生は精霊らしい。
「ちなみにアンコのツッコミは編集でカットするから」
「なんでよ」
「俺たちの部活がいつもお茶を飲んでるとかいう上流階級的な奴らに見せたいだろ。この世は見栄でできている」
「あんたが見栄でできてるのよ。この世を巻き込まないで」
こほんと新生は一息つく。説得力が違うと思い一泊置いて状況をリセットしたか。
「ま、見栄かどうかはさておいて多少の嘘も必要だ。取り敢えず入部させちまえばいいんだ。あとはどうにでもなる。いいかアンコ俺に合わせるだ。分かったか」
「なんか言い分がブラックくさい。まあ、いいけどさ」
ちなみに修羅はソファでビクンビクンしている。なんで私が投げた時よりもきつそうなのよ。体張りすぎでしょ。
「今日は雨だな」
晴れてるけど合わせろって言ってたし、適当に肯定しておいた方が良さそうだ。
「そうね」
「俺は雨が嫌いだ」
「そうね」
「なぜだかわかるか?」
「そうね」
「ちゃんと俺の話聞いてる」
「そうね」
「…お前を殺す」
「やめて」
「…………」
「そうね」
「黒炎よ!集いし精霊たちの力を解放せよ!奥義『邪帝真空炎』」
「真空で炎は燃えないわよ」
急に新生がすっと立ち上がり、棚のビデオの録画スイッチを消した。
「急にどうしたの?」
「いや、己の限界に気づいてしまってな」
急にセンチメンタルな感じになって一体どうしたのだろうか。まあ、新生の行動の意味を理解するのは世界で七番目くらいに困難なことなので考えても意味ないけど。
「やめだやめ!だいたい写真部の日常なんてろくなことがない。よし、自己紹介をしよう。一人一人の魅力を伝えるんだ」
部員が少ないからこそできることだろう。一人一人メッセージを伝えるなんてとても魅力的だ。この部活でなければ。きっときつい自己紹介を…いや、考えるのはよそう。
「よしじゃあ俺から行くぞ。アンコ撮ってくれ」
「はいはい、お願いだから変なこと言わないでよー」
「おう!任せとけ!」
任せた結果があの部活動紹介だったことを私は忘れない。
「じゃあ撮るよ」
それと同時に私は録画ボタンを押す。
「俺はこの部活の部長の新生だ。この部活を作ったのは俺だ!俺が創設者だ!」
「そんなことどうでもいいから先に行ってくれないかな」
「あ、えー。俺がこの部活を作ったのは部活を作るという行為は稀だからだ。誰もやらないことをする。それがこの部活だ。俺と一緒に非凡なことしようぜ」
「おおー」
普通に紹介してくれた。部活動紹介の時も来んくらいまともにしてくれればよかったのに。
「はい、じゃあ、次アンコな」
新生は私からビデオカメラを取り上げる。
「はい、はじめー」
「え、えーと。津田アンコです。この部活に入った理由は私はこの髪の毛がコンプレックスだけどここならこの髪が好きになれそうな気がしたからです」
「と言いつつ?」
「実はー縛られるのが嫌いでーって変に乗らせないでよ」
「ははは」
変な茶々があっとはいえかなりいい感じのことを言えたと思う。あとは修羅だけだ。
「おーい修羅次あんたの番よ」
「あ、ああ。ちょっと待ってくれ。まだ体がビクンビクンしてるんだ。…ビクン」
どうして自分でやってずーっと痛がっているのやら思い切りがよすぎるでしょ。
「ビクン…。ゴバァ!へァ!ハァ…ハァ…。よしもう大丈夫だ。撮ってもいいぞ」
そして修羅はソファに横になっていたのを一瞬で体を持ち上げてピシッと座る。大げさに足を組むモーション付きで。
「私が撮るけど…なんであんた偉そうなのよ」
「当たり前だろう。俺はかっこいいからこの世全ての人権は俺のものなんだ」
「平等とはなんのためにあるのか…」
「気にするな。俺は寛容だ」
修羅のギャルゲモード以外の時は基本うざいのである。ギャルゲモードになったらうざいがキモいに変わるだけだしいいところがないね。
「じゃあ、撮るよ」
「うむ」
ポチッと録画ボタンを押してGOサインを出す。
「俺の名は修羅シンジだ。突然だが、俺はカッコイイ。いや、このことは言うまでもなかったな。まあ、そのおかげで俺はモテるだが、俺には心に決めた人がいるのだ。この写真部その娘と愛を育むそんな場だと俺は思ってる」
いや、全然違うからね。
「だから、女どもよ俺に関わるな。俺はもうすでに美々と接吻を交わしている」
えー!美々ってゲームのキャラクターじゃなかったの。
「その感触は平面的で結構硬かったがな」
画面に唇つけただけじゃねえか!全くびっくりさせる。
「そう言うわけで俺は美々が大好きだ!」
最後写真部関係ないよね。
「よし、これでPVはだいたい撮れたな。後は俺がデータを家に持って帰って編集するから楽しみにしておいてくれ」
新生って動画の編集なんてできるんだ。そういえば家に行った時大きなぱほこんが置いてあった気がするなぁ。
こうして私達のPV制作は終了したのだ。一日で終了するとは誰が予想しただろうか。
〜数日後〜
はぁ、今日も新生と以外あんまり話せなかったなぁ。そして帰りは三時間か。新生みたいに一人暮らししたい。
いつものように暗いことを考えながらぼーっとする帰りのHR。いつもこんなことを考えているのかと見下した君ぃ。見下すくらいなら私と友達になってよ。
あ、そういえばあのうるさい新生がいない。でも、先生もあんまり気にしてないみたいだし、まあいいか。
そうな感じでまたぼーっとしてると急に教室のスピーカーからピンポンパンと音がなった。その音にみんながざわつく。私もざわつきたい。
『どーも写真部です。皆さん帰りのHRの途中かと思いますが僕たち部活のPV作ったので見てください』
急にきたな。これが新生が教室にいない理由か。
ちなみにこの学校は教室に一つスクリーンがついていてそのスクリーンを先生が下ろす。かなりスムーズな動きから見るにきちんと先生を通したのだろう。新生はこういう時地味に優秀なのだ。
それにしてもこのタイミングでPVって心の準備なにもできてないよ。
私の準備はできてなくても先生はスクリーンの準備を完了させる。
『それではどうぞ』
てって〜てっててててー
こうしてPVが流れた。だが、私の耳にはあまり内容が入らない。
聞こえて来るのといえば、『私の名前は津田アンコ』とかなんとやら。顔から火がでそうだ。
どうやらPVが流れ終わってからのみんなの様子を見ると結構好評だったと思う。まあ、これで部員が増えるなら多少火がでてもいいかな。
ちなみに新生の編集技術は地味にすごかった。ぶっちゃけあんなスルメPVを好評に押し上げたのは新生の技術のおかげではないか。
〜放課後〜
今日は急に部活の日なった。どうやらPVを見て新入部員が見学に来るかもしれないからということらしい。
「いいPVだった。さすがの編集技術だな」
修羅が満足そうに新生を褒める。修羅が美々以外を褒めるのは珍しい。
「まあな」
少しも謙遜しない。さすが新生だ。
「でも私にはやっぱり部員が集まるとは思わないんだけど。確かに面白い動画だったけど集まるかどうかは別の話じゃない」
ガラッ!
「入部したいのですが…」
修羅の時と同じく私が否定した瞬間に都合良くドアが開く。
「おい、アンコ。嘘は良くないぜ」
嘘じゃないし。本心をいっただけだし。だいたいこんな部活に入る輩は誰なのよ。そう思ってドアの方を見る。そこには綺麗な黒髪の女の子がいた。
「私桐島 愛花ともうします。よろしくお願いします」
リアル愛花がそこにいた。
はい、新キャラ登場です。でも性格とかなんも考えてないです。正直やばいです。




