私だけの景色
前の話から随分と間が空いてますね。書きたいとは思うんですけどそれ以上の衝動がぼくを襲うんです。
遭難。なんか災難にあうこと。登山などで命を失うような命を失うような危険に会うことを言うらしい。
まあ、別に命を失うような危険はないだろうけど私は今ちょうど災難にあっていた。
「にしてもこっちは山の裏側っぽいな。まあ、右側面とか左側面とかいう可能性もあるけどな」
ちなみに横でバカなこと言っているのは災難の元凶である新生。髪の毛を金に染めていてピアスをつけている不良のような変人だ。
「というかなんのためにこんな大きな荷物を持って来たのよ。こういう場合を想定してのことじゃないの」
変人のとなりにいるのは私、アンコだ。髪の色が赤なのが目立つ女の子だ。
「ああ、そういえば取り敢えず面白そうだから適当にぶっこんどいた遭難脱出グッズがあったな。まさか使うとは思わなかったぜ」
そう言って私のリュックを手にとって中をゴソゴソ漁る。
「ふふふ、まず遭難脱出グッズその1!方位磁石ー」
おお!これにより方位が完璧にわかる。
「さあ!示せ!俺たちの行く道を!」
バッ!っと新生は手のひらに方位磁石を持って見せびらかすように前に出す。その方位磁石を見てみるとものすごい勢いでぐるぐる回ってた。
「フッ見たか!これは電池で動く『まさかの地場発生!グルグル方位電磁磁石』だ!普段は普通の方位磁石として使えるがスイッチを入れると針がグルグル回るのだぁ!」
「いや、驚く前に全てを解説されたんですけど。てか、そんなふざけてないで普通に使ってよね。11時に間に合わないわよ。補導されるわよ」
「なんだよ。ちょっとからかっただけじゃん。ったくノリ悪りぃなぁ」
そう言って渋々スイッチを切って私に方位磁石を投げてくる。面白く無くなったら人に渡すって自分勝手なやつだ。まあいいや、これで邪魔されずに方位がわかるというものだ。
私は方位磁石を手のひらに乗せて上から覗いてみる。
「あれ?針が動いてない…?」
疑問に思い方位磁石をぐねんぐねん動かしてみるが全く反応がない。動いた反動で針がゆらゆら揺れるだけだ。
「ちょっと新生これ使えないんだけどどうなってるの」
「あん?そんなわけないだろどれ見せてみろ」
私は新生に方位磁石をを渡す。すると新生をしばらく針を見た後ぐねんぐねんさせてピタッと動きを止めると私を見た。
「いやぁ、電磁石ギミック面白すぎて方位磁石として使えねーわこれ」
「えー!」
「だってそれ以外にあんまり理由が思い当たらないしなぁ。まあ、方位を知る方法なんてこれ以外にも2、3個くらいあるって、ほら先人の知恵を借りて北極星を見つけるってのはどうだ。それなりに星見えるしさ」
方位磁石が使えなくなったのは適当な機能をつけた新生のせいなのに全く気にしてないようだ。
「いろいろいいたいことあるけど…まあ、星ってのはいい線かもじゃあ適当に見回して明るい星を見つけたら教えあうってことでいいの?」
「そうだ、よし探せぇ!」
その掛け声とともに私はそれを見上げて一際明るい星を探し始める。
私はそれなりの田舎に住んでいるという設定だがこうして空を見上げて星を見るということはほとんどない。小学生の時の夏休みの宿題で星を見て以来のことだろう。その数多ある光のかけらの中から一際輝く夜の宝『北極星』を見つけるというのもなかなか体験できないことだ。こういう新鮮な出来事を経験できたというところだけは山に引っ張ってくれた新生に感謝しなければならないところなのかもしれない。新生の場合感謝されることよりも文句を言われるようなことが多いため今は言わないけど。
にしても…見つからない。ロマンチックに夜の宝とか言ってテンションを上げてみたはいいものの一際輝く星なんてそこらへんにありすぎてどれが北極星か分からない。
「ねえ、新生見つけた?」
「ん?ああ、自作の星座のことか?中学の時に作ったイナズマ座なら見つけたぞ」
「私が必死になって探している間あんたはなにやってんの!」
「まあまあ、落ち着けって。全くこういう時こそ落ち着いてクールに行くべきだ。俺のようになぁ!」
誰のせいでこうなったのかを自覚してないらしい。
「大体闇雲に北極星を探しても見つからないのは当たり前だ。まず現代人が北極星を見ることなんてないだろ。そもそも星すら見ねえし」
まあ、それは確かに私は田舎でもわざわざ星を見るわけでもないし、ましてや北極星なんて探すのは今日が初めてだ。
「あのな、先人たちは北極星の見つけ方をちゃんと記しているのだ。つまり俺たちみたいなビギナーでも見つけられるマニュアルがあるということなんだ」
「あ、それ聞いたことある。北斗七星を使って北極星を見つけるとかそういうやつよね」
「そうだ。ただ眩しい一等星の星を見つけようとしても俺たちには見分けがつかない。だが、星と星の連なりなら俺たちでも見つけられるはずだ」
「なるほど、じゃあ北斗七星を探せばいいのね」
「取り敢えずそうかなぁ」
私は改めて空を見上げる。北斗七星は有名な星座だし形もわかる。確か洗剤を取るコップを逆さにしたような形だ。案外余裕で見つかったりして。
〜それなりの時間が経って〜
やはりというべきか見つからない…。余裕で見つかる?あれはただのまじないみたいなものさ。
「新生見つけたー?」
「いや、見つからないな」
「えーどうするの。大体方位磁石がきちんと動けばこんなことにはならなかったんだから…」
「まあ、ぐちぐち言うなって。ぶっちゃけ見つからないことも俺は想定してた。俺とアンコ二人でこんなに探したのに北極星どころか北斗七星まで見つけられないとなるともうこの空にはこれらの星がないってことじゃないのか」
「勝手に天変地異起こしていいの?」
「いや、ちげえよ!だからな、俺達が見てる空は北じゃないってことだ。本当の北はこの山の向こう側ってことだな」
「それもそうね。じゃあ、私達が立っている場所は南ってことね」
「まあ、それに近いものと思われるな。フフフ、そして俺は遭難対策に方位磁石だけを持って来たわけじゃない。遭難対策グッズNO.002をお見せしよう!」
そう言って新生はまたバックをゴソゴソし始めた。てか、さっきその1ってナンバリングだったのに2からグダグダだ。いいのか。
「てれてー地図!」
「おおー!」
確かに地図さえあればこの状況は打開出来るはずだ。てか、最初からなんで出さなかったのか。非凡を求める彼は随分とおっちょこちょいのドジっ子らしい。
「ただ問題があってな。地図ってのは現在地が分からないとただの紙なんだ」
「へぇ、じゃあ地図なんて使えないじゃない。なんで出したの」
「てか、ぶっちゃけて言うと俺たちこの山を三十分とかそこらで登ったんだぜ。こんなところでオロオロしてても結局はしょっぺえ山なんだ。適当に下って行けば俺たちの街に帰れるはず。そしてその過程で何か大きな滝とかを見かけたりとかしたら地図を見て滝のマークを探せば現在地がわかって安心して下れるわけだ」
「じゃあ、今から適当に下って行くってことでいいのね」
「ああ」
こうして私達は山を下ることになった。夜遅く暗いため足元に気をつけながらゆっくり下って行く。暗視ゴーグルを使うという選択肢もあることにはあったのだがまだ月明かりもあるため使っていない。暗視ゴーグルつけたヒロインというのも新たなジャンルが開かれそうだが…。
まあ、そんなことはどうでも良くて私達は登り同様に順調に下って行った。ってあれ?
「ねえ新生なんか登ってない?」
「ん?あれじゃないか?ただ少しこのルートが登ってるだけじゃないのか。すぐに下るさ」
「そんなもの?」
「いや、そんな追い込むように言うなよぉ。不安になってくるじゃねえか。大丈夫だ俺に任せろって。責任の五割は俺がとってやる」
「私と合わせて半々じゃない。全然責任とってないじゃない」
新生が変な企画を盛り込んだせいでこんなことになっているんだけどその自覚はないようだ。
「ねえ、やっぱり登ってるってこれ。これじゃあ街に帰るどころか登頂するよ」
「いや、そんなことは…。いや、まてよ…。そうか!そういうことかぁ!流石天才的な頭脳はこの答えを導き出すか!ふふふふ」
天才的な頭脳から生まれた企画によってこんなことになっているんだけど自覚して欲しい。てか、さっきから自覚なさすぎだろこいつ。
「いいか、この地図を見ろ。この虹ヶ丘山南東から下って行くと隣の山続けて行ってしまうんだ。ここはただの山というのはフェイク!山々が連なる山脈だったのさ!」
「へーじゃあ、これからどうするの?」
「ちょっとくらい驚いたっていいじゃねえかよ…。まあ、この手がかりによって多少俺たちの現在地の目星がついた。後は地図に従って下って行くだけだな」
「あー、遭難した時はどうしようかと思ったけど案外あっさりと解決してよかった」
「まあ、俺の天才的な頭脳に山が屈したのさ」
こうして天才的頭脳を持つ男(笑)の先導の元私達は下って行った。
だが、流石天才的な頭脳(笑)だ。それは順調にはいかなかった。
「うーん、俺の予想ではここらに川があるはずなんだけどなぁ。おっかしいなぁ水のせせらぐ豊かな音が聞こえない」
「えー、どうすんのよー」
「くっ、てかさ。お前こそ俺に頼ってばっかで少しは考えろよ」
天才が逆ギレしてくる。天災的だ。
「じゃあ、携帯を使う」
「謎の圏外」
「ヘリコプターに手を振る」
「にこやかに振りかえしてくれる。ありがとう!」
「狼煙をあげたらどう?」
「まじかー」
「いや、まじかーってなによ」
「だって火って怖くね?やめようぜ狼煙なんて山火事なったらどうするんだよ」
「非凡じゃない。好きなんじゃないの?」
「俺は人の迷惑になることはしないと決めてるんだ。ここにある館には人が住んでるだろ。あの人に迷惑をかける訳にはいかない」
私は!私は!今絶賛強制的に山に登らされた挙句遭難してる私への迷惑は!
「せっかく地図が使え始めたっていうのにここで闇雲に動くのも怖いしなぁ」
「止まったままでどうやって帰るのよ。てか、今何時よ」
「そうだな今何時だ。ちゃんと11時には帰れるのかな?」
新生はポケットからスマホを取り出す。
「えーと1時だ」
「え?」
「てっぺん回って午前1時だ」
「へ、へー時間が経つの早いわね」
「んー、必死だったしなぁ。案外星探してる時間が長かったのかもな」
「んーそういわれるとしょうがないかもねぇ」
「だがなアンコ。呑気にしてる暇ないぜ。確かに11時を過ぎてしまってもう警察なんてどうでもいいやなんて思ってしまうかもしれない。だが、俺たちにはまだ早く帰らなければいけない理由があるはずだ」
「それは…一体…」
その新生の気迫に押され、私はゴクリと息を飲む。
「実は後、数時間で学校なんだ」
「う〜、大問題じゃない。睡眠とっておかないと倒れちゃうわよ」
「それだけじゃない初っ端から授業で寝たりしてみろ。不良のレッテルを貼られるぜ」
「どうしよう。不良のレッテルとか私ピンチ!私だけピンチ!」
「いや、俺も不良のレッテルとかは…」
「どの口がいうのです」
金髪ピアス着崩した制服。チャラい。チャラすぎる。チャラ男だ。こんな男をどうみれば不良じゃないと言えるのであろうか。かく言う私も最初は不良だと思った。
「はぁ、変なのに絡まれて初っ端から高校デビュー失敗なのに不良になってしまったら挽回も不可能に。私の平穏が切り崩されて行く…」
「あっはっはっ、その髪の色で平穏とか………笑わせてくれるわ!」
「いや、なにその反応こっちが笑いたいくらいなんだけど」
はぁ、とため息をついて私は近場にあった岩に座る。なんか待機っぽいしちょっと休憩だ。
そこで私はぐっと背伸びをした。朝起きて今この時間までずっと起きていて疲れが溜まっている。関節がボギャボキいって気持ちが良かった。
しかしその気持ちのいい刺激を堪能している時間はなかった。
自分の座っている岩がぐらりと傾いたのだ。
「え、ちょっと…」
私はなすすべもなく。そのまま岩と一緒に山の斜面を下って行った。
「あ〜れ〜」
「おい!」
新生の声が上から聞こえる。
「そんな間抜けな声で落ちやがっておもしれえじゃねえか!」
…お願いだから黙るか心配して。
大分転げ落ちた後頭の後ろに強い衝撃が来て私はそのまま意識を失った。
「う、う、ぬーん」
だが意識を失ったっといってもそれは一瞬だ。この屈強な紅の女は落ちたくらいじゃやられないのだ。
しかし新生と別れてしまった。この夜の山で別れるのはやばい。だって私いたいけな少女だもん←屈強どこ行った。
「おい、」
隣から野太い声が聞こえた。ほら私の可愛さに男が寄ってくる。ケダモノめ!
「いや、お前がなに考えてるか知らんけど取り敢えず警戒心とけよ」
ん?この声は聞き覚えがあるぞ。
そう思って振り返って見ると金髪の男がいた。
「ああ、あんたね。なにしに来たの?」
「いや、お前を探してここまで来たんだよ」
よく見ると焚き火とかしてるし。てか、私が落ちたこの場所ってどこよ。
そう思って周りを見渡すとさらさらと流れる川があった。これはさっき上で新生が探していた川ではないのか。事故ってこの川に導くとはラッキーだ。
「ここ川じゃない。やった帰れるよ」
「俺がお前を探してやったってのになんにもなしかよ」
「あぁ、ありがと。じゃあ帰ろうか」
「あとこんな時間まで待ってやったんだぞ。ったく」
「あーはいはいありがと。ってこんな時間って今何時よ」
新生はポケットにあるスマホの待ち受け画面を見せてくれた。そのディスプレイには4時を軽く回った程度の時間が表示されていた。
気を失った側は一瞬でもそうじゃない人には一瞬じゃないのだ。そりゃそうですよねぇ。焚き火なんかして超暇そうじゃないですか。
「新生さんすみませんでした。ありがとうございます!」
「ふふ、次からは気をつけたまえ!」
クッソこいつぶん殴りてえ。これを言うためだけに待っていたんじゃないか。
「本当にごめんね」
だが、強くは言えない。
「だが、この長い。山を移動する時間も長かったが誰かの寝顔を見るのも長かったこの登山も終わりを告げようとしている。後はこの川に沿って下れば絶対に確実に山とはおさらばできるぞ」
「可愛い寝顔を独り占めできてよかったじゃない」
「まあ、そうなんだけどさぁ。へへ…。って言わせてんじゃねえ。これを下ってせめて学校には遅刻しないように行こう」
「おお!」
そうして私達はようやく山を下り始めたのだった。
「ちなみにさアンコこの登山の目的って覚えてるか?」
下っている道中で新生が質問して来た。確か目的があったはずだが最後らへんは生きることしか頭になかったためそんなものもちろん忘れている。
「それは忘れたって顔だな。写真部の勧誘のためだよ。写真部に入ればこんなことができるといういわば体験入部というやつだ」
「写真部すごいわね。入って一日目で命のやり取りをしたわよ」
「ま、稀なパターンだし」
言い方が何と無く怪しい。これは命のやり取りしまくるな。バトル漫画より死にかけるな。
「本当に入部するかどうかはアンコ次第だ。俺は勧誘しかできない。だから鬱になる前に入っとけよ」
「それ勧誘がめちゃしつこいってことよね。訴えるわよ」
「じゃあ、鬱になるギリギリ手前の手前でとめるからさ」
「それあんたの軽いノリで越しちゃうラインでしょ。大体私写真部に入らないとは言ってないでしょ」
「おお、」
「入るとも言ってないけど」
「だからお前は友達がいねんだよ」
ひどいことを言われた気がする。
私達はそれ以上話さず。いや、新生が写真部の魅力を独り言で言っているのをBGM代りにしながら下って行った。
次第に森のようなところに入って行く。月明かりはすでになく空は白み始めてそこそこ明るかったのだが完全に覆われてしまった。というかこの下りの時間って登った時よりも時間がかかっていると思うのは私だけかな?
流石になんかベラベラ喋っている新生に話しかけるのは面倒に足を突っ込むことだと思ってやめておく。
こんなに暗いとちゃんと前に向かって進んでいるのだろうかと不安になった。ちゃんと川沿いに歩いているので水の音さえ聞こえれば前に進んでいるということだし暗いと言っても全然見えないわけではない。ただ不安になるのだ。もしかしてこれが暗所恐怖症という奴か。隠れた個性を発見。発見じゃねえよ!
胸の奥が本当に冷え切ってしまうと思ったところで前方に光が見えた。
ほっと安堵してその光をくぐる。
「わっ、眩し!」
突然飛び込んで来た朝日に思わず目を細める。新生はくしゃみをしている。太陽を見るとくしゃみする人って初めて見た。
「いやぁ、なんかいいよなこういうのって」
「こういうのって?」
今までわけの分からないことばかり言っていた新生がやっと日本語を話してくれた。
「森を抜けた後に朝日が見えるなんてスッゲーかっこいいじゃん。しかも川がめっちゃキラキラしてんぜ」
「キラキラとかあんたの髪の毛もキラキラというかギラギラしてるわよ」
私も嫌味を言うが新生の言う通り心細かった気持ちを一気に払拭してくれるくらい綺麗な朝日だった。
「いろいろあったけどよかったじゃないか。この朝日は俺たちで独り占めだ!2人だけど」
「独り占めってなんか表現としてはありきたりじゃない」
私は非凡を求める彼にそう言う。
「うん、ありきたりだな。でも、そう言うしかないじゃん。だって夜に山に登って遭難してさこんな思いもよらぬ場所で朝日を見るなんて世界中で俺たちだけだぜ。これはもう俺たちのものにしていいね」
「ふふ、そうかもね」
最低なことばかりだったけど今は開放感に溢れている。
「あーあなんか勧誘も飽きて来たな。全然振り向いてくれないし。俺今片思いだわ」
「切ないわよねー」
「くっそ他人事みたいに。やめやめ勧誘なんて。だけど俺の非凡の魔手がないからって、その髪を黒に染めたりするんじゃないぞ」
「なんで?染めるわよ。だって髪を染めてもいいこの学校でさえ目立つんだもん」
すると新生は呆れた顔してやれやれという。
「アンコのその髪が黒くなったらアンコじゃないだろ。自分の個性を潰しちゃダメだ。俺は好きだぜアンコの髪」
「…へぇ、親以外じゃ初めてかも…髪の毛で褒められたの」
「そうなのか。取り敢えず染めちゃダメだからな。いいところなんだから。俺はお前に平凡になって欲しくない。ただのそこらのやつになると今日みたいな景色は見れないぜ」
そして私は朝日を見る。やっぱり綺麗だ。
それにしても新生には笑える。だって…
「なんで勧誘しない時のセリフの方が勧誘っぽいかなぁ」
「え?」
「新生。やっぱり私は平凡になりたい。でも今はまだこのままでもいいみたい。あんたと一緒にいると私が特別だって思えないしね」
「え、え、」
「取り敢えず入部だけはしてあげる」
「え…。うお、まじか!なんか、分からんがラッキーだ!やったー!」
すごく喜び方が普通です。
川に飛び込もうとしてやめて手だけつけるとかいうチキンなこともしている。
「はぁ、ノリで変なこと言っちゃったなぁ」
だって嫌いなこの髪の毛のことを褒めるのは反則でしょう。
こうして私と新生の2人の物語が始まるのです。
「ねえ、新生。はしゃいでるところ悪いけど」
「なんだ」
「学校…」
「……………あ、」
やっとの事で2人の物語が始まります。実際アンコって二次元キャラにしたら絶対萌えると思うんですよ。三次元だと萌えない模様。