登るぜ!最高のマウンテン!
地味に投稿していきます。さて、今回でとうとう登り始めます。僕も小学生の時なんかに父と一緒に山に登ったりしていました。案外気持ちがいいのでまた行きたいです。
とうとう夜の山に登ることになった私。山に上ると言われた時は冗談かと思ったがそんなわけがなかった。よく考えれば彼が発案したのだから。
「よぉ〜し。じゃあ、山に登る前に二人で荷物の中身の確認をするぞ。何が入ってるか分からないと何かと不安だろ」
そうやって元気に言うのは新生だ。新生は髪の毛の色は金で耳にはピアスをしているというすごく不良みたいな格好をしている。が、実はただの変人だ。不良ではない。
「それにしてもこの山って結構小さいんでしょ。なんでこんなに荷物が多いの」
見たところ私用の小さなリュックと新生用の大きなリュックがあった。大きい方は本当に大きい。子供が小さく縮まれば入りそうなくらいの大きさだ。
「いや、なんてったって夜の山だからな。用心はしておかないとな。一応言い出しっぺでもあるしそこらへんはちゃんとしてないと」
「そこは筋通すのね。あんたのことだからふざけて登るのかと思ったわ」
「フッ、俺をただわちゃわちゃしているだけの変人だと思ってもらっちゃ困るぜ」
なぜかそこで自慢げ。一応変人っていう自覚はあるらしい。
「さてと、まずはアンコが持つリュックだけどまず入ってるのは方位磁石だ」
ふむ、遭難した時に方角さえわかれば安心というわけか。
「あとはスムーズに進むためにこの山の地図を持ってきている」
なるほど早くしないと11時過ぎるからスムーズさは大切だ。
「あとはやっぱ暗いからな。これは必需品だろうっていう…」
やっぱり暗い時に使うものと言えば懐中電灯だろう。これで夜道も安心だ。
「はい、暗視ゴーグルです」
「ちょっと待った」
私はそこで制止の声を掛ける。
「暗視ゴーグルって私達サバゲーでもするの?なに光があると敵にバレるとかそういう…」
「なにがいいたいんだ?」
「別に暗視ゴーグルでもいいけどさ。そこは懐中電灯でよかったんじゃないかな。私暗視ゴーグルなんて見たことすらないわよ」
「いや、俺もできれば懐中電灯でいいかなって思ってたんだけどよ。家になくて…」
「うちには懐中電灯あるけど暗視ゴーグルなんてないわよ。一体どんな家よ」
まあ、別に夜道を歩くわけだから足元しか照らさない懐中電灯より暗視ゴーグルの方がいいのかもしれない。
「まあ、ざっとこんなもんかな。あとは適当にライターとかマッチとか18歳以上が見る雑誌とかチャッカマンとかが入ってるくらいだ」
「私の荷物ファイヤーしすぎでしょ。かちかち山の狸みたいになるじゃない」
「その後にお前の乗る船を沈めてやるぜ」
私にとっては幸運と言うべきか海はここからかなり遠いところにある。
「で、荷物なんて私の方だけで大抵なんとかなりそうだけどなんで私の荷物よりあんたの荷物の方が大きいの」
「いや、別に対したもの入ってないけど。気になるか?」
私はこくりと頷く。
「ほら俺たちまだ夕飯食べてないじゃん。だから山の頂上で飯を食うということでカップラーメンだ」
「へぇ、でもお弁当で良かったんじゃ…。お湯がないと作れないわよ」
「ふふふ、その点は全くぬかりはない。携帯式ガスバーナーに折りたたみ式鍋、お湯にするための水まで完璧に用意してあるのだぁー!」
「な、なんだってー」
柄にもなく大げさに驚いてしまった。まさか鍋まで用意してるなんて…。でも新生の挙げたものだけではやはりここまで荷物は大きくならないはずだ。なんてったって携帯式とか折りたたみ式とか言ってるんだし。
「ねえ、他にはなにが入ってるの?」
取り敢えず気になったので率直に聞いてみる。すると彼はうーんと悩んで大した物は入ってないけどという前置きをして荷物を漁った。やはり、非凡を求める彼は普通の物を見せるのは恥ずかしいとかそんな感じなのだろうか。
「まずは水分補給のための水筒だろ。そしてアンコがラクして山を登れるように伸縮式山登り用スティックだろ。後は夜に怖い猛獣に襲われた時ように猟銃くらいしか入ってないな」
「猟銃!それでしょ荷物が多い理由。大体こんな小さな山になにが出るって言うのよ」
「そりゃあ、ニホンオオカミとか?」
「それ殺しちゃダメなやつでしょ。保護しなさいよ」
「でも、殺らなきゃ殺られるんだぜ。お前にとって俺とニホンオオカミの命どっちが大切なんだよ」
「………決めきれないわ」
「俺だろ!速攻即決で俺だろ!悩む要素全くないよな」
「そもそもなんで猟銃なんて持ってるのよ。暗視ゴーグルといい山に登りに来たエンジョイ勢じゃなくて狩りに来たって言った方がよっぽどそれらしいわよ」
「いや、猟銃くらいみんな持ってるだろ」
「え、銃刀法…」
「お前の家相当稀有だぜ。今や一家に一丁って感じで置いてあるぞ」
「いや、私の知り合いの家とかにもないし…」
「そりゃ、わざわざ自慢して見せるような物でもないしな」
そりゃ、あっても見せないでしょうねぇ。だって物騒だもん。嬉々として猟銃持って来られたらわが身の危険感じるもん。
「まあ、そんな感じで普通の物しかあとは入ってないな。今夜は月明かり半端ないから暗視ゴーグルは無しでもいいかなぁ。もちろんつけた方がいいんだけどさ。日本人たる物こういうのはレンズ越しで見る物じゃないだろ」
「そんな変な風情感じてるぅみたいなこと言わなくてもこんなごついゴーグルなんてつけないわよ。絵面的にひどいし」
もしアニメ化したらの話である。されないだろうからつけてもいいんだけどね。
「じゃ、荷物の確認も終わったことですし登ろうか。ゆっくり登っても充分時間が余るからお前のペースに合わせるよ」
「ふふん。私こう見えて運動不得意じゃないのよ」
そうしてやっと私達は山に登るのであった。
〜登山中〜
私達はそれなりにスムーズに山を登っていた。私はもちろん金髪少年の新生も楽々登って行く。
「あんたって意外と体力あるのね。中学校の時に何か運動でもしてたの?」
私の前を行く新生に問いかけると彼は足を遅めて私の横に並び、涼しそうな顔でこっちを向く。
「俺は部活でサッカーやってたな。そのおかげで体力もあると。並の高校生には負けない運動能力はあるって自負してるぜ」
意外だ。まさか新生がサッカーをやっていたなんて。私は新生が何かしらのスポーツをしていても驚かないつもりでいたがサッカーとなると話は別だ。サッカーと言うのはチームで行うスポーツだ。そんなところにこんな偏屈がいたらチームはガタガタだろうに。
「今のうちにチームメイトに謝っておいた方がいいんじゃない?」
「なんでだよ。ひでえ言われようだな」
でも、サッカーをやっていたというならこの体力にも納得だ。
「てか、なんでサッカー部なんて入ったのよ。似合わないわよ」
「いやぁ、超次元サッカーRPGをしてた時期でさ。憧れたのさ」
「その言葉を聞いてなんか安心したわ」
「お前は中学の時なんかやってたのか?結構歩けてるじゃねえか」
「私はただのしがない帰宅部よ」
ちなみになぜ帰宅部を選んだのかと言うと、部活の大会やらでいちいち他の人の注目を浴びるのは嫌だからだ。体育祭なんて悲惨そのものだ。私が走ったりするだけで見ている生徒や観客席にいる保護者の人たちがどよめくのだから。この赤く染まっている髪の毛が憎い!
「へぇ、帰宅部か。なら高校では部活というものを経験しておいた方がいいな。ぜひ写真部へ!」
「写真を撮らない写真部がなに言ってるのよ」
「んー、じゃあ真!写真部へ!」
「それ結局写真部じゃない」
こんな感じで私達は駄弁りながら歩く程度の余裕を持ちつつ登って行った。
こんな夜に山に登る物好きはいないらしく前から下山者が来るわけもなく、順調に山頂まで到達した…。
「え、到達って…。嘘…」
「いや、嘘じゃない。ここが頂上だ」
ノリで頂上まで着いてしまった。
いけない!これじゃ、なにもせずに登山が終了してしまう。夜に山に登りましたー(終わり)だとなんのための小説か!
「ちなみにここに来るまで何分かかったの?」
「そうだな。34分だ。予定では50分過ぎてもいいかなと思っていたんだがなぁ。アンコが転んで怪我してみたいなシュチュエーションもあるかと思ったのにお前スイスイ行くんだもん。玄人すぎだろ」
「悪かったわね玄人で。じゃあ、ここでカップラーメンを食べて早く帰りましょ。モタモタしてると警察と鉢合わせしていきなり高校行きづらくなったりするかもよ」
「こんなに余裕があるんだし大丈夫だろ。てか、逆に余裕ありすぎ。というわけでアンコが思いのほか運動ができて余裕がある時のスペシャル企画を用意してんだ。この企画やるかい?」
「いや、遠慮しとく」
「やれよぉ〜!やってくれよぉ〜!いろいろなことが起こるかと思って企画をたくさん考えた俺がバカみてえじゃん」
「バーカ」
「可愛い…」
可愛いのは周知の事実として。新生は余裕がある時用の企画があるだけでなく他にも色々と考えて来たらしい。行動としては気持ち悪いの一言だがなんとなく新生のワクワクしながら企画を考える姿が目に浮かぶ。さっきは反射的に新生の提案を断ってしまったけどよくよく考えると荷物とかまで用意してもらって私もなんだかんだ言いながらも今は楽しんでいる。
そうやって考えると段々断ってしまった私が悪のような考えにとらわれてしまう。
「新生。さっきはごめん。すぐに断って。でも、やっぱここまできたからには乗るよその企画とやらに」
まあ、例えるとすれば私は遠足のおやつを没収した先生みたいな感じだ。そして、私がこのことを言った後の新生は、そうまさに遠足のおやつを返してもらった子供みたいな表情だ。
「おお、サンキュー!そうと決まればさっさと行くぞ」
「え、企画ってここでする物じゃないの?」
「違う。ここでする物じゃない。今まで歩いてきた場所を表として、今から行くのはその裏側の場所だ」
「裏側の…場所…」
「そうだ。裏側。ダークテリトリーと言ってもいい。未開拓の暗黒界だ」
「へー」
「…。うん…じゃ、すぐそこだから行こうか」
私は荷物を持って新生の言う山の裏側へと進む。山を下る時は登る時よりも足の筋肉が緊張しているように思える。なるほど、下りはしっかりと踏みしめていかないと重力のせいでそのまま転げ落ちてしまいそうだ。登りはタフネス下りはテクニック。個人的にはそんな感じがする。
早くも30分程度の登山で山と言う物を理解した気になる私。そもそも30分で登れる物を山と読んでいいのだろうか。丘と呼んだ方がそれらしい。山と丘の定義とは一体なんなのだろうか。
たかが30分程度の登山で山と言う存在そのものを理解しようとする私。玄人だ…。
「おい、着いたぞ」
そうやって考え事をしているうちに目的の場所へ着いてしまった。意外と近場だったようだ。
「えと、これって…」
私達がやってきた場所は山の裏側のちょっと進んだところ。山か丘か分からないとはいえ登りはタフネス下りはテクニックと私に言わしめたような厳しい環境の場所だ。
「なんでこんなところに家が…」
そう、そこには二階建ての大きな建物がでん!と置いてあったのだ。外観は月明かりのため幽霊屋敷のような雰囲気がでている。だが、基本的には少し古臭いがそれなりにお洒落な建物と言った感じだ。
「ふふふ、これは家じゃない。館だ。通称『虹の丘館』。なぜこの名前で呼ばれているのかと言うとこの山が虹の丘山と言う名前だからだ」
本当にこれって山と丘どっちだよ。
「で、こんなところに来てどうするの?放火でもするの?やたら私の荷物に火が付く物入ってたし」
「発想がこええよ!いや、この館はもう使われてないからさ。どうせならここの中で飯を食うっていう企画だ」
「へぇ、勝手に入って大丈夫かな」
「メイビー。大丈夫だって。誰もいないしさ」
メイビーって英語じゃないよね。英語じゃなくて彼の造語だということを願う。
「じゃあ、入ろうぜ」
そう言って簡単そうに柵を越えていく。私も同じように柵を越えた。その時だ。
フッと一階の端の部屋に明かりがついた。そして、何事もなかったかのように消える。
「………」
「………やばいな」
「うん、すごくやばいと思う。今のうちに引き返しましょ…」
すると新生は呆れた顔をする。
「なんで引き返すんだよ。俺の信条は非凡!今の光景を見て俺が帰るわけねーだろ」
「いや、ここは引き返すべきよ。やだ怖い行きたくない」
「おい、最後らへん冗談に聞こえないぞ」
「最初から冗談じゃないわよ!」
私は柄にもなく大きな声で叫ぶ。別にお化け屋敷のような場所は怖くない。相手は人間だと知っているからだ。だが今回は違う。人間じゃないかもしれない。そんな思考が私の頭の中をぐるぐる駆け巡る。
「全くビビリだなぁ。じゃあ、俺が先に行ってくるからお前はここで待ってろ」
新生は鼻歌交じりで館の方へと向かっていく。ってちょとぉ!あんたが行ったら私ひとりぼっちじゃない!
私はパタパタと新生を追いかける。もう新生は玄関の前付近にいる。
と、そこでドアが一人でに開いた。
いや、一人でに開いたのではない。中から人が開けたのだ。
空気は一瞬にして凍りついた。ピクリとも体が動かない。これってもしかして金縛りじゃ…。
「誰だ…?」
その一言で時は動き始めた。前から新生が全速力で走ってくる。
「おい!逃げるぞ!あいつは幽霊なんかじゃねえ!この世で最も卑しく醜い生物…人間だ!」
そう叫びながら私の横をすり抜けていく。軽くドップラー効果だ。
「ちょっとあんたも人間でしょうが!ってかはや!ちょっとは待ってよ!」
私も新生に続いて館の敷地を出る。
そこからはもう必死だった。新生は流石元サッカー部といった感じでさらに恐怖もあってか山道であるにもかかわらずめちゃくちゃ速い。私はと言うとそんな新生を見失うとまずいので必死に新生食らいつく。
かなり遠くまで来たと思ったところでやっと新生が止まってくれた。数秒遅れで私もそこに到着する。多分今のが生まれてから一番速く走ったと思う。もう二人とも喋ることができないほど息を切らして、私はその場に座り込んでしまった。
「ハァ…ハァ…フゥ…ねぇ…」
やっと息が整ってきたところで私は新生に話しかける。
「なんだ?新手のリズムゲームか?」
新生は私よりも先に活きが整っていたのか実にスムーズに応答した。
「 税抜きで5千円。じゃなくて人いたじゃん」
「…すまん。俺もあそこに人がいるとは思わなかった。前に来た時はいなかったんだがな。それよりもお前見たかあいつの顔」
そこで私は走る前の記憶を呼び戻す。
「いや、私の方からだとちょうどドアが影になって見えなかった」
「そうか、俺もよく見えなかったんだよなぁ。まあ、今回は俺のミスってことでごめんな」
「まあ、そんなに謝られたらこっちだって悪いしいいよ。じゃあ、なんかご飯食べてる場合でもないでしょうし。さっさと下山しましょ」
「そうだな」
そして、二人は歩き出そうとして同時に固まる。
「ねぇ…ここってどこよ」
私達は闇雲に走った。確かに闇雲に走るしか選択肢がなかったから仕方が無いとして、これはもしかしていわゆる…
「遭難ってやつじゃない」
「そうなん?」
「ぶっほ!ちょっとふざける場合じゃないわよ。あぁ〜もうどうしてこんなことに」
「まあまあ、くよくよしてないで次にすることを考えるんだ」
「くっそこいつ…。謝ってくれたのはいいけどほとんどはあんたのせいなんだからね」
「まあ、確かにそうだが、大切なのは今。そうだろ?」
「くぅ…。それなりに正論っぽいのが腹立つ…」
「まあ、なんとかなるだろ。色々持って来たしな」
私の横にはかなり楽観的な金髪少年。もはやこれは己の力だけで行くしかないのか…。
ああ、そうだ少し気になってたことを今聞いておこう。
「ねえ、新生。この虹の丘山って丘なの?山なの?」
「いや、山に決まってんだろ」
私はそれを聞いて絶望した。丘ならばピクニックの迷子気分にもなれただろうに。
「よし!この山から絶対に出るぞ!」
出来れば11時以内には下山したいものだ。
おおっと、遭難してしまった新生達。ここからどうやって抜け出すのか!はい、今から考えます。次の投稿もまあいつの間にかって感じでしていきますのでよろしくお願いします。