自信たっぷり入学式
第1話目です。プロローグは0話ということで
自己紹介をしよう。
何事も最初の印象で10割その人の人格が判断される。ごめん10割は言い過ぎた。7割は決まる。だから自己紹介が得意という人は人生を7割成功しているということだ。
私の名前は津田 アンコ。性別は女で高校一年生だ。まあ、高校一年生といっても今日が入学式だからなりたてだけどね。
うん、自己紹介はこんなものだろう。短く自分の個性を打ち出すことが大切だ。これで大丈夫…。これで友達できるはず。
私はそんなことを考えながら家から学校までの電車に揺られていた。
改めて私の名前は津田アンコ。今日から流行りの女子高生になる予定の女の子だ。ちなみにその新しく入学する高校というのが家から電車に揺られて3時間という通学の時点でかなりハードな学校だ。これでうちの中学から入学する奴はいないだろう。それにその学校の偏差値はそれなりに高いし万が一うちの学校の奴がいてもそれは地味なガリ勉君またはガリ子ちゃんだ。なんで私がこんな変な場所にある学校を選択したのかというと…。
なんとこの学校なんと髪を染めてもいいという校則があるのだ。なんと素晴らしいことだろうか。え、なんで素晴らしいかって?
それは…私の髪の毛の色が赤だから。別に私は不良というわけではない。そもそもこれは染めているというわけではない。地毛だ。そう地毛というのが厄介なんだ。ほら中学校の時誰もが黒の髪の毛しているのに一人だけ赤!赤!真っ赤!だったら確実に浮く。しかも校則で髪を染めちゃいけないから黒染めもダメときた。くそぅ、この髪の毛の色のせいで某国民的アニメになぞられて赤毛のアンコ何て呼ばれて、名前もアンコだからつぶあんのアンコとか言われて。それ以来私はつぶあんが食べられなくなってしまった。そこから始まる人間不信への道。そこで知ったのが今回入学する高校である。髪を染めてもいいということはみんなが染めててこの赤毛でも目立たないのではないだろうか。もしくは周りが染めてなくても私が染めればいいのではという少しばかり不純な動機で入学したが偏差値高かいから周りの人は何も言えない。
まあ、そんな感じが私津田アンコの生き様の一端だ。さてとりあえずここで一つ言っておきたいことがあるんだけどさ。中学校の奴らがいない高校だし髪染めてもいいからいいんだけど設定としては通学に三時間は盛りすぎだろ。
そんなこんなで朝の8時に学校に着くように5時から電車に乗っている私は思うのだった。
〜校門〜
電車に揺られ三千里。別に母は求めてないけど逆に何かを求めていたらこの三時間を有意義に過ごせたのかもしれない。とにかくやっと学校までついた。
私は別にこの高校に特別興味があったわけでもなかったので高校見学などしていない。そもそも遠いし。だから校舎を見るのはこれが初めてだ。一応私立ということをあって外観は綺麗な感じだった。なんか校舎と校舎をつなぐ透明なチューブみたいなのあるし。
そんな感じで私は多少上機嫌な様子で仮クラスの教室まで歩いていく。ちゃんと看板などで案内してくれるから迷うこともなく安心だ。
さて、やっと仮クラスにたどり着いた。まあ、高校デビューということで茶髪なんかに染めている人はクラスに数人いるだろう。大丈夫目立たない。今度は目立たない。
そうやって自分に謎の暗示をかけながらそれなりの勇気を込めて教室のドアをそっと開けた。
そこに飛び込んできたものは茶髪に染めた数人の男子ではなく、初めて会ったということもあり小さな声で会話する女子でもなく。そんなものどうでもよくなるような異質なオーラを放つ人間が教室の真ん中に一人。
そいつの髪の毛は金に染められており耳には金のピアス。極め付けには制服もダボダボで学ランの前を止めず中の真っ赤なTシャツが周りを威圧していた。
あえて言おう。超こえー。
なにあいつ不良なの?ヤンキーなの?しかもこの偏差値の高い学校に受かってるとか親の賄賂戦闘力の高い不良なのかな。
やばい、あんな奴に絡まれたらこんなに可愛い私はあんなことやこんなことをされてしまうに違いない。そうだ仮クラスといえど席がすでに決まっているんだった。ここであいつのそばにならなければいいんだ。えーと私の席は24番の席か。真ん中の後ろらへんの席だなぁ。
私は機械的にその指定された席についた。ふと顔を上げてみる。めっちゃ金だった。
あいつの真後ろじゃねーか!
駄目じゃん!席が遠ければいい?むしろ駄目じゃん!だが、まあいい真後ろということはあいつの死角今のやつには私のことは全く見えてないはず。ファントムミー。それにいくら不良といっても入学式早々から人にちょっかいかけてくるわけがない。
「おい…」
おっと誰かが話しかけてきた。早速友達ができて辛い。
その声のした方を向くと金があった。その声は真ん前からしていた。
なるほど。私はこの男と戦わなければならない運命にあるらしい。
「なに?」
なるべくクールに言い放った。これで奴もひるむはず…。
「あのさその髪の色って染めたの?」
ひるめよ。しかも早速髪の毛の話かよ。コンプレックスなんだよほっとけよ。
おっとクールダウンクールダウン。落ち着いていこう。
「違うわよ。これは地毛」
こうやって高圧的にものを言っていれば気の強い女だと思って手を出さないかもしれない。てか、もともとこういう言い方しかできないんだけどね。
「まじかよ!すげーな。いや、お前日本人だよな。ちょっと名前聞かせてよ」
さらっと名前を聞いてきた。こいつナンパ戦闘力たけぇ。よく見たら顔立ちもいいんじゃない?
「津田アンコ…」
とりあえず簡単に答えた。ここで答えてしまう自分が悔しい。
「アンコ!すげー名前だな」
彼はすごくキラキラした目でそう言った。さっきから薄々感じてたことなんだけど…もしかしてこいつそんなに悪い奴じゃない?いやいや、でもそんなことまだわからない。
「あんたも私の名前を馬鹿にするの?」
だから私はちょっと挑戦的な口調になっていた。
「いやいや、別に馬鹿にするような名前じゃないだろ。ああ、そうか俺が自己紹介してないから腹を立てたんだな。そうだなお前は名前を名乗る時はまず自分から言えというのを態度で現してくれたのか」
彼は手を大きく動かしながら適当なことを言う。
「俺は新生ワタル。しんせいじゃないぜ。しんじょうだ」
いや、それわかりづらいの文章読んでる人だけだから。
「よろしくな」
そう言って彼もとい新生は右手を差し出してきた。こうされては無下に断るのも後味が悪いと思いその差し出された右手を受け取る。
「ところであんたのその髪の毛は染めたの?」
不良かと思っていたが案外そんなことなく私と同じ地毛による重い過去があるのかもしれない。名前を聞いたところハーフでもなさそうだし。てか、私もハーフじゃないのになんでこんな髪の色になってしまったんだろう。
「この髪の毛の色のことか?ああ、これは普通に染めたよ」
「あんたとは一生分かり合えないようね」
違う人種の人だった。
「じゃあ、そのピアスとかダボダボの制服とか不良みたいじゃない。見た所悪い人みたいに見えないしみんなと同じようにしてればいいのに」
つい自らの髪の毛の運命から稀有な髪の色に染めてしまった新生の未来を考えて勢いで言ってしまった。まあ、だけどきっと笑って流してくれるだろう。
そんな軽い気持ちで新生のことを眺めていたのだが、彼は急に私のことを睨みつけてきた。
「みんなと同じ?お前みんなと同じって言ったのか?」
「え、ええ。まあ、言ったけど…」
急に新生の雰囲気が変わる。
「いいか。俺はそのみんなとは違う」
「まあ、今金髪だしみんなとは少し違うけど…」
「違う!根本的にだよ」
「こ、根本的?」
「そうだ。俺はみんなとは違う。ただ学校に来て勉強して帰るだけの機会的な動きしか出来ない奴とは違う。いいかアンコ。この世界は見た所自由に見えるだろう。だが、それは誤りだ。俺たちの人生は過去の人物が作り上げた人の形をした鋳型にはめ込まれそれに近い動きをさせられているだけだ。そしてその鋳型とほんの少しだけ違うところを個性と言って個人を与えているように見せかける。だが、違うだろ。俺たちは自由なんだ。進んでその鋳型にはめ込まれなくてもいい。わかるかアンコ。みんなと同じとか普通に生きるとかはな、過去の人が残したセオリーに従って動くだけの人形となったやつのすることだ。俺をあんな考えることを放棄した奴らと同じにしないでくれ」
「え、あ、うん」
え、あ、え?ちょっと新生君どうしたの?なんか急に『俺はマイナーな方が好きなんだ』って言ってる人みたいになったよ。
「アンコなら分かってくれるよな」
なんか、めっちゃいい顔で同意を求めてくるし。
「あーわかるわかるー」
突然の新生の熱弁にあのいい顔されたらノーとは言えないでしょ。
「やっぱアンコはその髪の色といい名前といい生まれながらにその型にはまらない生き方をしてきたんだ。なんか俺と通じるところがあるのかもな」
「んーそうかもねー」
不良じゃなかったけどこいつと関わるとろくなことにならない気がする…。
「じゃあ私…」
「でさ!」
被せられたー!トイレ行こうと思ったのに。まあ、いいか話を聞くくらいなら。
「こういう風に同じような仲間と出会ったらアンコはどうする?」
「どうするって言われたら…メアド交換?」
そう言ったら新生は信じられないというような顔をしてきた。
「ちっげーよ。おま、メアド交換より先にすることがあるだろ」
「え、なによ」
「部活を作る」
おっと、メアド交換より部活作る方が先ですか。
「いいか。とにかくこういう時に部活を作るのは非凡界隈ではむしろ普通なことだ。それとももしかしてアンコは自分の持っているメールアドレスを増やして自慢するタイプの女か?」
「そんなみみっちい女じゃないわよ。でもそんな急に作るって言ってもねぇ。普通そこは一緒に同じ部活に入るとかじゃないの?」
またその言葉に新生は眉を動かす。
「普通?あのさぁ、普通とかそういうの面白くないだろ。誰もが考えそうなことをやっても楽しくない。だから言ったじゃん俺は決まった生き方なんてしたくないの」
「なにこいつ超わがまま」
なんかこいつの前で気を使うのが面倒になってきた。くそ言いたいこと言ってやる。
「あのさ、あえて言うけど新生。あんたそんな考えしてたらクラスの輪から外されるよ」
「外されたって別に構わない。そもそも俺のような人間に構ってくれるお人好しなんていないだろ」
「なんでそんなに人と違う生き方をしようとするの?みんなと同じような格好して学校生活をすればきっと楽しいのに」
「このクラスにいる奴らと俺は全く違う人だろ。生き方も異なってくるものさ。第一学校に通う時点ての否応なく同じように学校生活をさせらてるさ」
「あんたに何が分かるっていうのよ。人とは違うってことを…」
「お前こそ何言ってんだ。俺は常に他の奴らとは逆向きに歩くぜ」
そう言うと新生はニッと笑った。
「それにしてもアンコの平凡に対する執着もまた非凡なレベルだな。やっぱりお前は面白いよ」
「何が面白いよ。某アニメになぞられて赤毛のアンコとか名前がアンコだからつぶあんのアンコとか。私あれからつぶあんを食べると呼吸困難になるようになったんだから」
「ナイス設定」
「ナイス設定じゃないわよ。相当きついんだからね」
そこで新生は笑った。くそっバカにしやがってー!と私は思い、さらになにか言おうとしたが言葉が出なかった。私もまた彼と同じように笑っていたのだ。
「じゃ、取り敢えず俺は部活作ってみるわ。アンコ。一緒に作ろうぜ」
そうやって新生右手を伸ばしてくる。だが、面倒なのでその手は受け取らない。
「気が向いたらその作ったっていう部活に入ってやるわよ」
こいつの前じゃ偽っても無駄だと思った。無駄というより馬鹿らしくなってくるのだ。
「じゃあ、取り敢えずアンコ気を向かせるところからだな」
うんと頷きながら納得したように前を向いてしまった。
そのちょうどその時に先生が入ってきて入学式の説明がされる。
そっか入学式か。入学式とはこと学校生活に始まりを告げる式のことだ。私は今までそう思っていたし今でもそう思っている。でも、もういらないなぁ。
だって私の波乱の学校生活はすでに始まりを告げているんだから。
まあ、こんな感じでよくある部活モノみたいな感じです。中高生にある自分は特別な存在になりたいという願望をソーバーにしたような話とおもいます。あとこの小説のタイトル超適当ェ。