竜は神話となりて
『本日、政府がドラゴンの存在を正式に発表しました』
『今回の騒動はデマでも冗談でもありません。ドラゴンが現れました。原因は不明です。しかし、人に危害を加えることから我々としては討伐を行います。国民の皆様は決して近づかないで下さい』
『このことについてどう思いますか?』
『これは、国家レベルでの嘘でしょう。ただ大量に写真や動画が出回っているので、ロボットなんかを飛ばしたんだと思いますよ』
『違う。これは政府が極秘に進めていた研究の実験体が逃げたんだよ。実際に国の暗い深いところでは非人道的な実験はされている。自衛隊まで出したのはそう言うわけだよ』
『それじゃ、国は火を吹く器官なんかを製造したっていうのか?それこそ世紀の大発見じゃないか。あんな生き物がいるわけない』
『今回の騒動でドラゴンによって出た負傷者は320人、死者は36人となっています。被害は火事で全焼が2世帯、半焼が3世帯。風によって全壊が10世帯、半壊が20世帯となっています。因みに、討伐されたドラゴンは3体。全て絶命しているようです。まだドラゴンは10体ほど生存していると発表されています』
『このドラゴンの出現により、宗教によっては世界の週末などを唱える人々も出ているそうです。反対に地球外生命体から送り込まれたという専門家もいるようです』
「ドラゴンの存在はこれで白日の下に曝されましたね。どうするのですか?」
テレビのリモコンを片手に天地桜は傷だらけの少年に尋ねる。
「どうもこうもない。本当にどうしようもない。もう軍隊にでも討伐して貰うしかないだろ」
赤月は本当に頭を抱えてしまっている。討伐に失敗した後、駆けつけた自衛隊員から問い正され、銃は隊員のを拾ったことにしめ何とか逃げ出したのだ。
そんな彼にパソコンの画面を差し出し。
「これを見て下さい。これによると既に何体から海を渡ってしまっているようです。今回の件で自衛隊は全滅したなんて話もあるくらいです。海外の軍隊でも太刀打ちできますかね?」
「本当にその通りだ。空飛んで、暴風起こして、火炎を出して、おまけに自己再生能力まである。実はもっとありました、なんてこともあるだろうし。もう殺戮兵器と変わんねぇよ」
天地桜も困ってしまったように溜め息を吐く。
「で、どうされるのですか?」
彼女はドラゴンの脅威に呆れたのではなく、赤月の態度に呆れていたようだ。
「手を引くつもりはないよ。でも、一時撤退。情報も集める必要もあるし、運良く軍隊なら倒せたなんてこともあるかもしれない。だから様子を見ることにするよ」
「そうですか。では日常に戻るのですね」
その言葉に否定する声が被される。
「いや、この力を探るべきだと思う。あの周囲の人々にも覚醒する可能性が俺の周りなら、どうしなきゃならない」
「それでは、ドラゴンに対抗するために思考の現実化についての研究をするということですか?」
「ああ、もしもドラゴンや俺が媒体なら世界中に広がっていくかもしれないから」
天地桜は赤月に微笑み。
「安心しました。赤月様が研究を諦めてなくて。これからもよろしくお願いします」
「なんか、表情がでるようになったな」
確かに天地桜は今は穏やかに微笑み、先程は呆れた残念そうな顔をしていた。過去の無表情からは大きな変化と言えよう。
「天地博士が、笑うな。と申しつけておられましたので、どうしても妹の記憶が蘇るからと」
理不尽な話ではあるが、その人物にかわからない辛さというものがあるのは確かである。
「俺は笑ってる方がいいな。いつも思ってたからさ。笑った方が可愛いのにって」
「それは口説いてるのでしょうか?私は軽い女ではありませんよ」
「お前がジョーク言うのは初めて聞いた。俺としては超能力くらい大きな変化なんだが」
天地桜の発言はジョークだったのか、本気だったのかは赤月は追求しなかった。
「これからよろしく頼むぞ。これからだ、ドラゴンは少なくとも世界を壊しやがった。それがどうなるのかを見届け、止めるのが俺達の役割だからな」
「では、マスター(・・・・)。何なりと」
その代名詞で呼ぶことは忠誠の証だ。前の人物の遺した命を果たした瞬間であり、新たな人物に指示を仰ぐ。
「まずは博士の遺したデータの解析だ。今夜中にケリをつけるぞ」
「畏まりました」
このとき誰も気付いてはいなかった。
もう既に歯車が狂い、外れてしまっていたことを。