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プロローグ

ここは東京湾のど真ん中。いや、『綿津原島』と称した方が適切だろう。ここは国ととある企業が協力したことにより完成が実現した世界最大の人工島である。この島には、多くの研究機関や多国籍企業が集まる東京都の24区の『海京区』となっている。

特殊な環境には特殊なものが集まるのは自然なことであり、事実、私立才進高等学校は世界的にも珍しい単位が存在しない学校だ。そんな変わった学校の特に変わった部活動の教室。

「おい!なんかアメリカでチェパカブラが撮影されたって!」

赤月真人あかつき まさとは片手で携帯端末の画面を弄り、片手で癖のない黒髪の頭を掻きながらネット上の嘘らしい記事を読みあげる。

「はいはい、所詮誰かの作り話でしょ。そんなことより紅茶でも淹れて」

言葉を弾丸並にストレートに放った彼女は、如月美歌きさらぎ みか。なんでもフランスの血が半分流れている所為か、蜂蜜のように艶のある美しい金髪と青空のような碧眼、絹の様に白くきめ細やかな肌の持ち主である。スタイルも日本人離れしたもので男子生徒の人気は高い。

「まあまあ、信じるも信じないもその人次第だろ?」

「うるさい」

「俺も別に信じちゃいない」

場を和ませることに失敗した天然パーマの染めた茶髪の男子生徒は黒瓜光星くろうり こうせい。第一印象は8割からチャラいと思われる格好をしている。茶髪もそうだが、ベルトからギラギラした十字架や剣のアクセサリーをジャラジャラと下げたり、怪し気なネックレスをしているので不良にしか見えない。

「酷くないか。俺は一応先輩なんだけど」

「年功序列なんて古い決まりよ。しかも先生なら敬いもするけど、たった1年早く生まれたくらいじゃ尊敬に値しないわよ」

如月に言葉の弾丸でガラスのハートを撃ち砕かれそうになり黒瓜は机に突っ伏してしまった。

「2人とも紅茶どうぞ。俺は一応先輩を尊敬しているよ」

「ありがとう」

「俺の分までありがとな。なんか自分が情けねぇ」

3人は紅茶を一口飲んで、ふうと溜め息をつく。

「そういえば1年の2人は何で来ないんだ?」

「職場見学よ。昨日言ったのにもう忘れたの?だからそんけ」

「一言余計だよ。そもそもろくに活動してないから別に全員が集まることに意味はないからな」

「それもそうだけど。私は活動してるわよ」

「え、どんな?」

「あのね。ここは『オカルト研究部』よ。だから普通の活動なんてあまり意味はないわ。私は超能力を調べているのよ、テレパシーやサイコキネシスくらい試みているのよ」

「俺も魔術の儀式で存在を探っているよ」

この部は『オカルト研究部』。科学的に解明されていない現象や存在について研究するという部である。そして如月は『超能力科』、黒瓜は『魔術科』、赤月は『未確認生命体科』とまるで分野がバラバラの為研究は進まず、文化部と帰宅部の中間のような部活動となっている。

「で、赤月君は全く活動していないわよね」

「いや、俺の場合は新種を探すだけじゃない。去年は珍種を捕獲したし」

「ま、カエルのアルビノを偶然見つけただけだけどな。しかも盗まれたしな」

アルビノとは皮膚の色素がない個体のことで、ほぼ全ての動物で確認されるものだが、その出現はとても稀である。

「あいつは確か、内臓が透けてたからな。本当に半透明だったな」

「あれは気持ち悪かったわね。あまり思い出したくないわ」

こんな互いに傷を付け合う会話をしている間に3人共紅茶を飲み終えてしまった。

「今日はこれくらいで帰るか」

「そうね。紅茶も飲んだしここにいる意味はこれ以上ないしね」

「如月は俺の紅茶の為にここに来てんの?しかも結局、片付けは俺かよ。」

この部に存在の意味はあるのかすら疑問だが。この3人はまるでいつも通りと言わんばかりに部室を後にした。

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