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深淵の王  作者: 伊里谷あすか
四、平穏な非日常
67/90

4―14 合流




「「で」」

「誰、この人たち?」

「この方々、誰なんですか?」

 顔を突き合わせてすぐ、口を揃えて言う美咲と鳴海。その言葉は、面倒そうに遠くを見ている綾に向けられていた。

 現在黒服の人物は中性的な顔に困ったような表情を浮かべて綾と少年を見ており、少年は憤然とした様子で立っているため話しかけづらいのもあるが、三人の様子を見るにお互い知り合いのようだと判断した結果、綾に尋ねることに決めたらしい。ちなみに此方はまだ呆然としていて、陽方は先程から手を顎に当てて黙ったままである。

 腕を組んで美咲たちを見やると、綾はため息をついて言った。

「そう言われてもな……。知り合い以上友人未満、といった所だ」

「「それで納得できるか!」」

 美咲と鳴海の二人が声を荒げ同時に問い詰める。声の余韻が消えたころ、仕方なさそうに綾は黒服と少年へと向き直った。そして黒服の人物を示し、

「こっちが成宮」

「どうも。成宮ナルミと言います」

 ぺこり、と一礼する相手に対し、鳴海は驚いて目を見開く。

「なりみ――…」

「ナルミっていう名前なんですかっ?!」

 美咲はとっさにそう叫んでしまい、周りの視線が一気に集まったことに気付くと慌てて口に手を当てた。

「す、すみません突然……。えっと、この人もナルミって言う名前なんで、びっくりしちゃって……」

「え、ちょ、美咲さん」

「そうなんですか? 私は成長の成に干支の(へび)って書くんですけれど、あなたは?」

 ぐい、と腕を引っ張る美咲に、鳴海が抗議の声を上げる。それを見て黒服――成巳は優しく微笑んで言った。少し見上げる位置にあるその綺麗な笑顔に、美咲は思わずやや頬を赤く染める。

 その様子に鳴海は僅かに憮然とした表情になると、ぶっきらぼうに口を開いた。

「……鈴とかが鳴るの鳴に、海です」

「そうですか、いい字ですね」

「どうも……」

「ねえ」

 突如、とげとげしい声が横から響いた。

 反射的に美咲たちがそちらを見ると、ずっと黙っていた金髪の少年が大きな目で睨み付けるように鳴海を見ている。

「君ら――特にそっちのデカいの…………なんか勘違いしてない?」

「「え?」」

 声を上げ、二人はお互いの顔を見合わせた。しばらくして、美咲も鳴海もほぼ同時に少年へ振り向く。

 彼はため息をつくと、言った。

「この人さ……女なんだけど」

 一瞬の間。辺りの喧騒がやけに大きく聞こえ、この場だけが切り取られたように感じる。

「……え?」

 美咲が自然と漏らした声に、少年はもう一度繰り返した。

「だから、成巳は女なんだよ。理解した?」

 少しして、美咲と鳴海だけでなく外野で話を聞いていた此方と陽方を含めた声の四重奏が辺りに響いた。

 それを見て成巳が苦笑していたのは、言うまでもない。


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