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深淵の王  作者: 伊里谷あすか
四、平穏な非日常
54/90

4―1 友人




日時◇ 3/22土 21:07

FROM◇ ユイネ

TO◇ みさちぃ

TITLE◇ 明日ヒマ?

内容◇ やほー。ユイネです。タイトル通りなんだけと、明日ヒマ? ちょっと中学の時のメンバーで集まってカラオケでも行こうかってなったんだけど、来れそう? 後で連絡ちょーだいな。




日時◇ 3/22土 21:38

FROM◇ 美咲

TO◇ 唯音

TITLE◇ Re:明日ヒマ?

内容◇ ごめん、私はパス。明日はちょっと用事が。もし時間ができたら行くから、またその時に。




日時◇ 3/22土 21:42

FROM◇ ユイネ

TO◇ みさちぃ

TITLE◇ 了解

内容◇ りょーかい。みんなにも伝えとくね。




日時◇ 3/22土 22:00

FROM◇ 美咲

TO◇ 唯音

TITLE◇ Re:了解

内容◇ ごめん。じゃあ、また今度ね。






 カチ、とメール送信のボタンを押した後、美咲はベッドに仰向けに寝転がった。

 用事というのは勿論今回の事件についての調査のことだ。明日から調査開始で、人の命に関わることなのだから遊んでいる訳にはいかない。

 だが、特殊な力を持っているものの美咲も高校生。仕方がないとは言え昔なじみの友人たちと遊べないのは少し寂しい。春休みに入ってから仕事の連続で、まともに友人と会ってさえいないのだからなおさらだ。

 ぼんやりと自室の天井を見上げながら取り留めのないことを考えていると、入口の戸が控え目にノックされた。

「美咲ちゃん、起きてる?」

「……揚羽さん?」

「あ、良かった。起きてたのね」

「……どうしたんですか、こんな時間に?」

 既に時刻は夜中の十時を過ぎていて、人によれば眠っていてもおかしくない時間帯だ。美咲自身、明日に備えてそろそろ寝ようかと思っていたくらいである。

「んー、ちょっとね。……今、少し時間取っても大丈夫?」

「? ええ。まあ、問題ないですけど」

「あのね、ついさっき綾くんが来てね。……美咲ちゃんと話したいらしいんだけど、いいかしら?」

「え」

 一瞬、美咲の動きが止まった。

 つい数時間前、空嶺の家で告げられたことが頭の中で再生され、思わずうろたえてしまう。……できれば心の整理がつくまで、なるべく綾には会いたくなかった。だが、今ここで断ったとしても明日には必ず会わなければならない相手だし、揚羽に起きていると知られているのに断るのは不自然だ。何故会いたくないのか疑われては困る。それに、


 ……問いただすのが、怖いのだ。


「……美咲ちゃん?」

「! あ、はい! 大丈夫です!」

「なら、呼んでくるから少し待っててねー」

「はーい」

 足音が遠ざかり、ふう、と美咲はため息をついた。

 戸越しだったから揚羽には勘付かれてないだろうが、多分綾とは直接会うはず。おかしな言動をしないように注意しなければ――……って。

「……呼んでくるってことは……綾がこの部屋に……?!」

 確かに昔はお互いの部屋を頻繁に行き来していたが、それとこれとは事情が違う。散らかっているわけではないが、だからといって見られても大丈夫ということにはならないし、何より――

(絶っ対、からかわれる……!)

 慌てて色々なものを押し入れや本棚にしまい、同時に一応ゴミが落ちていないか確認する。できるだけ見た目がすっきりするように物を動かし……。と、そこで美咲の動きが止まった。

「……なんか私、彼氏を部屋に呼んだ女の子みたい」

 次の瞬間、一気に美咲の顔が赤くなった。どうやら、自分が言った言葉に恥ずかしくなったらしい。

(な、何考えてんのよ私?! 綾は……絢文は自分の兄じゃない! 誰が彼氏よ! そうよ、絢は兄……なのかな、本当に――)

「美咲、いるのか?」

「ひゃいっ?!」

 いきなり戸の外から聞こえた声に、驚いてかなり変な声を上げてしまった。すると、やや間があってから呆れた声がした。

「……なんだ、今の奇声は」

「あ――じゃない。……綾?」

 恐る恐る尋ねると、返ってきたのは厳しい声。

「僕以外に誰がいる。……入るぞ」

「え、あ、ちょっとまっ?!」

 そんな美咲の制止よりも早く、音もなく戸が開かれる。

 その先に立っていたのは……やはり、綾だった。


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